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ベトナム:大衆的な抗議運動への警察の対応を調査すべき

一斉弾圧で数百人拘束

Police disperse a demonstration against a draft law on special economic zones in Hanoi, Vietnam, June 10, 2018. © 2018 Reuters

(ニューヨーク)ベトナム政府は、経済特区での長期賃借契約に反対した全国的な抗議行動の参加者について、逮捕状なしの拘束と実力行使を止めるべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。同国政府は非暴力的に意見を述べた人びとを釈放し、警察の過剰な取締りについて調査すべきだ。

先週末、外国人投資家に99年間の貸借契約を認めることになる法律案に対し、全国的な抗議行動が起きた。この条項は、中国企業に対しベトナム領内の占拠を認めるものだと批判されている。ホーチミン市、ハノイ、ニャチャン、ビントゥアン省などで数千人が抗議行動に参加した。2018年6月9日に抗議が始まってから、数百人が逮捕されたほか、警察による暴行の報道もある。


「人びとの抗議行動を行う権利は、注目を集める問題の際にはとくに保護されなければならない」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長ブラッド・アダムズは述べた。「しかし、ベトナム政府のこれまでのデモ対応のひどさを踏まえれば、警察が単なる秩序維持ではなく、政府を批判する人びとを罰していると考えるにたる十分な根拠がある。」


複数の都市で、警察は不必要かつ過剰な実力行使により、先週末に全土化した抗議行動参加者を強制解散させたと伝えられる。ビントゥアン省での衝突はかなり暴力的なもので、デモ参加者は省人民委員会本部前で石や火炎瓶を投擲した。警察は催涙ガス、発煙弾、放水車を使ってデモ隊を強制解散させた。警察によると、公安省による捜査の一環として、その後の2日間で107人が逮捕された。公安省副大臣はビントゥアン省当局に対し「首謀者たちに厳罰を下す」よう指示した。

多くの都市で、活動家は警察の暴行や私服職員による拘束、長距離音響発生装置(LRAD)の使用の様子をソーシャルメディアに投稿した。LRADは音響兵器の1つで、大きく鋭いノイズを生成し、射程内にいる全員を混乱させるものだ。ホーチミン市のあるデモ参加者はラジオ・フリー・アジア(RFA)に対しこう述べた。「暴力を使わずに抗議を行い、だれを扇動することもありませんでした。しかし警察は私を取り押さえ、レズアン通りに停まっていたバスに押し込みました。その間、警官5~6人に殴られっぱなしでした。」

There’s every reason to believe that police are punishing dissent, not simply keeping public order.
Brad Adams

Asia Director

ホーチミン市でも参加者数十人が拘束された。うち1人は警察との衝突をツイートしていたアメリカ国籍者で、まだ釈放されていない。ハノイ当局はデモ隊数十人を一斉検挙し、バスに押し込めた。国営メディアは「不法な」抗議行動を組織したとして数人が逮捕されたと報じた。ここには抗議ビラ数千枚を印刷したとしてビントゥアン省で逮捕された2人も含まれる。

被拘束者の多くは取調べ後に釈放されたが、まだ拘束中の人もいる警察での拘束中に殴打されたと訴える活動家もいる。

ベトナム政府は、過剰な実力行使、恣意的拘禁、あるいは抗議行動中の拘束での虐待に責任のある治安当局者を捜査し、適切なかたちで訴追すべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。不正に拘束されている抗議行動参加者は釈放されなければならない。

今回の抗議行動が起きたのは、中国に対して経済特区での排他的な管理を認める法案への懸念がきっかけで、南シナ海での領土紛争で煽られた長年の反中国感情へと結びついた。6月11日、ベトナム国会は、法案に修正を施したうえで、今年後半に採決を延期すると発表した。

参加者の一部は、表現の自由を規制し、インターネット上の反体制派に関する情報を収集する広範な裁量を当局に与えるサイバーセキュリティ法案にも反対していた。6月12日に国会で成立した法案は、2019年1月1日に施行される。

ベトナムでは集会の自由の権利が厳しく制限されており、今回のような大規模な抗議行動は珍しい。集会は当局の許可が必要で、政治的に許容できないと見なされれば会合やデモの申請は認められない。当局による監視や嫌がらせ、身柄拘束で、活動家が開かれたイベントに参加できないこともある。少なくとも135人の政治囚が、表現・集会・結社・信教に関する基本的自由を行使したことを理由に、現在も獄中にある。

ベトナム政府は、不法なデモの解散方法を含め、治安部隊が実力行使に関する基本的な人権基準を尊重するようにすべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘した。「法執行官による強制力(=実力行使)及び武器の使用に関する国連基本原則」は、法執行官は「強制力の行使に訴える前に、非暴力的な手段をできる限り適用する」と定めている。強制力の行使が避けられない場合、治安部隊は「そうした力を抑制的に用い、違反行為の重大さと達成すべき正当な目的に応じた行動」を取らなければならない。

抗議行動と警察による一斉取締りは、ヨーロッパ連合(EU)がベトナムと自由貿易協定(FTA)の締結を検討しているさなかの出来事だった。

「抗議行動への弾圧は、ベトナムの人権状況に汚点を追加するものだ」と、前出のアダムズ局長は述べた。「EUは、経済関係の進展の実現は、ベトナム政府が活動家や反体制派への抑圧的な処遇を見直すかどうかにかかっていることを伝えるべきだ。またベトナム側は、国際社会が状況の推移を見守っていることを知るべきだ。」

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