Deputies attend the opening ceremony of the National Assembly's autumn session in Hanoi, Vietnam October 23, 2017. 

© 2017 Reuters

(ニューヨーク)- ベトナムは、広範かつ曖昧なサイバーセキュリティ法案を議会で採決する前に、国際法基準に準拠するよう書き直すべきだ、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。ベトナム議会は2018年6月12日、非難の声が高い当該法案を採決する予定だ。

ベトナム政府と与党共産党には、国家安全保障を根拠にし、政治的・社会的な反対意見を長らく罰してきた歴史がある。当該法案はどの表現を「違法」として検閲するかの決定権を関係当局に広く付与するものだ。ベトナム国内法にはプライバシー権の保護がないに等しいことから、政府がサイバーセキュリティ法の条項を根拠に、平和的なオンライン活動をめぐって人びとを特定し、訴追するのが容易になってしまう可能性がある。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局局長ブラッド・アダムズは、「政府が提案しているサイバーセキュリティ法の目標は、ネットワークのセキュリティを保護するためというよりは、党の独占を守ることにつきるようだ」と指摘する。「当該法案は、あからさまに表現の自由および情報へのアクセス権を標的にしたものであり、政府への反対意見をつぶすもう一つの武器となるだろう。人権侵害で悪名高い公安省が法案を起草したのは決して偶然ではない。」

当該法案の下では、情報通信省または公安省からの要請を受けてから24時間以内に、サービズプロバイダーが不快なコンテンツを削除しなければならない。インターネット企業がデータをローカルに保存してユーザー情報を「検証」し、裁判所命令がなくともユーザーデータを当局に開示する義務は、プライバシー権を脅かすものであり、オンラインの反対運動や活動のさらなる弾圧を促進することにもなりかねない。

人権問題上の懸念が広がっているサイバーセキュリティ法案の特徴には次のようなものがある:

表現の自由、情報へのアクセス権、意見の自由、などの権利をベトナム共産党の政治的利益の下位に置く条項:

  • 「ネットワークスパイ」を、不正に情報を取得するために、意図的にファイヤーウォールを迂回する行為と定義すること(第2条)
  • 「サイバーセキュリティの保護原則」を「ベトナム共産党指導の下で」と明示すること(第4条)
  • 「ベトナム社会主義共和国に反対するプロパガンダ的コンテンツを有する」あるいは「国家、国旗、国家の徽章、国家、偉大なる人民、指導者、著名人、国家の英雄にそむく」ような「情報を準備、投稿、拡散する」ための「サイバースペースの使用」を禁ずること(第8条、第15条)
  • 「ベトナム社会主義共和国に反対するために人びとを組織、実行、結託、促進、買収、欺く、誘惑、訓練、指導するため」または「歴史を歪曲する、革命的な達成を否定する、または国家の連帯をそこなうため」のサイバースペースの使用を禁ずること(第8条)。
  • 「心理戦争」「人民行政に対する名誉毀損プロパガンダ」「人間の尊厳や名誉に重大な損害を与えることを目的とした虚偽の情報」(こうした情報を出す個人がそれを偽りだと知っていなければならないという必要条件は定められていない)、「プロパガンダ化し、促進し、キャンペーンし、扇動し、威嚇し、分裂させ、人びとを誘惑して混乱を引き起こす情報」といった、ベトナム社会主義共和国に対するプロパガンダを禁ずること(第8条、第15条)
  • 政府が「国家主権と安全保障」に違反しているとみなす「情報を提供、投稿、拡散するための事務所、団体、個人のソーシャルネットワーク上の電子情報ページ、Webポータル、または専門ページ」を禁ずること(第26条)

「ベトナムにおいてサイバースペースサービスまたは情報システムを所有する者」の国内外プロバイダーにこうした行動を義務付けた第26条を含む、発禁コンテンツを公開する人びとについて、企業にサービス拒否や検閲、政府への情報提供を強制する条項:

  • 「ユーザーがデジタルアカウントを登録する際に情報を検証するためのメカニズムを確立する」こと
  • 「書面による要請を受けて、公安省下のサイバーセキュリティ保護のため、特別タスクフォースにユーザー情報を提供する」こと
  • 情報通信省または公安省から「要請を受けて24時間以内」に、ベトナム政府が禁じた「コンテンツを含む情報を削除する、共有を阻止する」こと
  • 「サイバーセキュリティ保護のための特別タスクフォースに関連したトレース(lưu vết liên quan)を提供するために、それらを保管する」こと
  • ベトナム政府によって禁止されているコンテンツを「サイバースペース上に公開している団体および個人のための電子通信ネットワーク、インターネット、および付加価値サービスを提供しない、または停止する」こと(第26条)

企業への強制を含むデータローカライゼーションを義務化した条項:

  • 「ベトナムのサービス利用者からの個人情報および国家安全保障に関する重要データを保管する」こと
  • 「ベトナムに本社または代表事務所を設置する」こと
  • 「サイバーセキュリティの法的違反に関する捜査および取扱い期間中に、関連当局の要請を満たす」こと(第26条)

当該法案は、コンテンツフィルタリングと検閲を確立する条項や、徹底的に定義付けられた「禁止行為」を列挙した条項などを含む、インターネットサービスおよびオンライン情報の管理・提供・使用に関する政令第72の類似条項にならい、さらにそれを拡大したものだ。

ベトナム当局は、最近、オンラインにおける反体制派と権利活動家への弾圧を強化している。2017年7月にTruong Minh Tuan情報通信相が、「GoogleとFacebookは情報通信省からの要請に応えて、悪質かつ有毒なコンテンツを含んだ3,367本の動画を削除。Facebookはコンテンツ違反を犯したアカウントを600以上削除した」と報告している。

政府は公式プロパガンダを促進し、与党および政府に敵対した意見と闘うことを仕事にした「世論形成者」(du luan vien)としばしば呼ばれる有給の「社会的意見の協力者」(Cong tac vien du luan xa hoi)を大規模動員している。これとは別に、Nguyen Trong Nghia上級大将が2017年12月、政権に批判的なオンラインの意見に対抗するために2016年初めに設置されたフォース47は、1万人以上のメンバーがいて、「1日の毎時間、毎分、毎秒ごとに誤った意見と闘う準備ができている」と報告した。

当該法案は、ベトナムが人権活動の取締りを強化し出したのと時期を同じくして審議されている。2017年に当局は、抗議集会ほかに参加したり、政府に批判的な記事を公開した権利活動家やブロガーの少なくとも41人を逮捕。2018年の最初の5カ月間に、ベトナム共産党が支配する裁判所は、少なくとも26人の権利活動家を訴追し、うち数名は10年超の刑期を言い渡された。反体制派を黙らせようというベトナムの新たな試みの被害者には、Nguyen Van Dai氏、Nguyen Trung Ton氏、Truong Minh Duc氏、Pham Van Troi氏、Nguyen Bac Truyen氏、Hoang Duc Binh氏、Tran Hoang Phuc氏、Nguyen Ngoc Nhu Quynh氏(マザーマッシュルーム)、Tran Thi Nga氏、Bui Van Trung氏、Ho Van Hai氏ほか、著名な活動家たちも含まれている。

アダムズ局長は、「ベトナム議会は、公衆の側に立ってこのサイバーセキュリティ法案に反対することで、与党共産党のあやつり人形ではないことを証明しなければならない」と指摘する。「この法案が採択されれば、活気に満ちたオンラインコミュニティにし、ベトナムをより近代的かつ開かれた国にするための努力が大きく後退する一歩となるだろう。」