A member of the Union Solidarity and Development Party (USDP) looks out from behind a campaign placard on their vehicle, during their campaign for Burma's upcoming elections in Yangon on October 5, 2010.

© 2010 Reuters

(ニューヨーク) - 2010年11月7日にビルマで実施される総選挙。民政移管の外見を装い国軍支配の継続を目指すこの選挙の投票日が近づくにつれ、軍事政権側はますます脅迫的手法を強めている、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日発表する一問一答集 (Q & A)で述べた。

「2010年ビルマ総選挙 一問一答集」は選挙の仕組みなどを詳しく解説すると共に、選挙がビルマ国民に与える影響や、各国政府がビルマの人権状況の改善にいかに取り組むべきかも論じている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長代理エレイン・ピアソンは、「ビルマで行なわれる11月7日の総選挙は、恐怖と脅迫、諦めといった雰囲気の中で行われている」と述べる。「選挙は、軍政幹部の顔ぶれを変えるだけで、民主制への移管ではない。ビルマの劣悪な人権状況の改善にはほとんど寄与しない。」

投票日が近づくにつれビルマ全土で人権状況が悪化している。不正投票や、軍政系政党への投票誘導行為に関する報告も増加している。現軍事政権・国家平和発展評議会(SPDC)は、外国メディアへの規制を強化し、国際監視団に関する提案をすべて退けたほか、表現の自由、集会の自由、結社の自由を引き続き厳しく制限している。

今回の一問一答集では、入念に作られた選挙のプロセス、予想される国会議員の構成、選挙後の軍の役割、参加している政党の分析などについてまとめている。登録を申請した47政党のうち、37政党が軍政の連邦選挙委員会の承認を受けた。その多くは小規模な民族政党で、今回議席が争われる3種類の議会に少数の候補を擁立するに留まる。なお3議会とは、全国レベルの国民議会と民族議会のほか、14の州・管区に設置される議会を指す。

2008年憲法の下では、これら3つの議会すべてで現役軍人が相当数の議席を占めることになる。争われる議席のほぼすべてに候補を擁立できたのは2政党だけだ。一つは軍政が支援する連邦団結発展党(USDP)、もう一つは親軍政政党で、旧ビルマ社会主義計画党を引き継ぐ国民統一党(NUP)だ。

選挙での大勝が予想されるUSDPは、テインセイン首相ほか現役閣僚(全員が4月に国軍を退役した国軍幹部)によって結成された。同党はほぼ全国と地域のほぼすべての選挙区(1158議席程度)に候補者を送り込むことになる。

2010年始め、USDPは、連邦団結発展協会(USDA、1993年に軍政が結成。その指揮下にある全国組織)から、金融資産、広範な組織基盤、会員名簿の大半(約1,800万人分)を継承した。USDAとその民兵組織部門は野党勢力への襲撃に長年関与しており、ここ数年は、選挙に備えて地域開発事業を自分たちの業績だと主張している。地域社会と小政党からは、USDP党員(多くの場合、現地の治安部隊とつながっている)による脅迫や勧誘の増加が報告されている。

「USDPは、わずかに存在する軍から独立した小規模な野党政党を排除する巨獣であるだけでなく、軍隊支配の確実な継続を目的にあつらえられた権威主義的な政治機構といえる」と前出のピアソンは指摘する。「脅迫と小さな買収とを積み上げることで、USDPはビルマ全土に浸透し、民間人の皮を被った軍政支配の恒久化を目指している。」

反軍政勢力系の数少ない政党が、軍政系の2大政党に反対する連合を組んでいる。例えば自宅軟禁中の民主化指導者アウンサンスーチー氏が率いる国民民主連盟(NLD)の元党員の一部が結成した国民民主勢力(NDF)と、連邦民主党だ。しかしこれらの政党が連携しても、候補者が立つ選挙区はごく一部に限られる。

一問一答集では、今回の選挙に対する国際社会の反応について、またビルマに真の意味で変革が訪れることを後押しする上で各国政府が取るべき対応についても扱っている。不公平な選挙プロセスへの国際社会の批判は大きな広がりを見せているが、ビルマ軍政側からの譲歩を今のところ一切引き出せていない。潘基文国連事務総長は事態が動かないことへの「苛立ち」を表明し、ヒラリー・クリントン米国務長官は選挙に「重大な欠陥がある」と指摘した。他方でインドと中国は、ビルマの選挙プロセスに支持を表明している。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは一問一答集の中で、各国政府に対し、全政治囚の即時無条件釈放と新政権下での人権尊重の要求、そして、包括的な政治プロセスへのコミットメントの要求など、様々な手段を講じることを求めている。加えて、各国政府に対し、人道援助機関とメディアがビルマ国内にもっとアクセスできるようにすること、ビルマの市民社会と開発グループに対する過度の制限をやめるようにすることなどを求めるよう訴えている。

「国際社会が今回の選挙が不正だらけと理解するのには、わざわざ11月7日を待つ必要はない」とピアソンは述べる。「世界各国の政府と国連は協働して、ビルマに真の変革をもたらすために必要な基準を明らかにするとともに、新政権にこの基準を満たすように求めて行動すべきである。」