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ビルマ:国軍の政党が選挙で圧倒的有利に

軍政系団体と政党の合併で、総選挙の正統性にますます疑問符

(ニューヨーク) - ビルマ政府の統制下にある国内最大の社会福祉団体が、国軍によって最近結成された政党に統合された。この事実は、2010年に予定される総選挙が正統性を欠くものであることをはっきりと示している。ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日こう述べた。

ビルマ軍政は7月6日、会員2,400万人以上の全国的な大衆組織「連邦連帯発展党」(USDA、連邦団結開発協会)の解散と、その資産と事務所の連邦連帯発展党(USDP、連邦団結開発協会)への移譲とを承認した。同党は、テインセイン首相と26人の国軍幹部兼閣僚が4月29日に結成したものである。この同じ日、これら国軍幹部全員が、2010年中に実施予定の選挙への出馬に備えるために退役した。USDA会員名簿がUSDPに引き継がれるかどうかは不明なままとなっている。

「ビルマ最大の大衆組織を国軍の政党に統合することは、予想できたとはいえ、選挙実施のプロセスを厚かましく歪曲するものだ」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長代理エレイン・ピアソンは述べた。「軍政による統治の未来像の台本が、臆面もなく書き進められ、私たちの目の前で上演されている。」

ビルマ軍政は1993年9月にUSDAを創設し、社会福祉団体として登録した。これは公務員が政党員になることを禁じる規定を回避するための措置だった。協会の対外的な目標は現軍政(国家平和発展評議会、SPDC)と全く同じものだった。それから17年間で、USDAは2,400万~2,600万人を会員としたが、それには強制的な、または腐敗した手段が頻繁に用いられてきた。たとえば公務員や教師全員に加入を命じたり、高校生を勝手に登録したり、政府が率いる大衆集会で地域住民全員に一斉に加入するよう脅すといったことが行われてきた。協会支部は現在すべての郡区(管区・州の下部行政単位)に置かれているが、これらの支部も、現在USDP事務所に看板を掛け替えていると伝えられている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、軍事政権はUSDAを自らの党派的な政治目的のために長年用いてきたと指摘した。協会員による大規模デモは1990年代半ばから全国的に実施され、反軍政勢力や米国、国際労働機関(ILO)などを非難し、SPDCを絶賛する演説が行われている。USDAの最も有力な後援者はタンシュエ上級将軍で、書記長はテイウー農業潅漑相(前陸軍少将)だ。

USDAは、1996年と1997年に行われたアウンサンスーチー国民民主連盟(NLD)書記長への襲撃事件に関与している。2003年5月にはディペーインでスーチー一行のNLDの車列を襲っており、NLD側に数十人の犠牲者を出した。ヒューマン・ライツ・ウォッチの調査は、2007年8月と9月の平和的なデモンストレーションの期間中に、USDA幹部がデモ参加者への嫌がらせや脅迫に動員され、2007年9月26日~28日の仏教僧への暴力的な治安弾圧にも部分的に関与しことを明らかにしている。

USDAは地域の開発プロジェクトや小規模な投資事業、公務員や教師、ジャーナリスト向け研修、道路建設、地域インフラの補修などを手がけ、ビルマ国民の生活の様々な部分に関わることで、国軍(タッマドー)の理想と狙いを宣伝する役割を果たしてきた。USDAは名目上は大量の会員を擁しているものの、ビルマ社会ではほとんど評価されず、暴力性を控えた軍政の一部と見なされている。USDAのビルマ語のあだ名は「チャンプッ」。開発とオオトカゲを掛け、USDAを「動きのとろいけだもの」と見下すものだ。

「ビルマ国軍は約20年に渡り、1つの社会団体を通じ社会を慎重に操作し、2010年総選挙を前に、地域レベルで強制的な力が広範に、そして確実に発揮される枠組を整えてきた」と前出のピアソンは述べた。「USDPという新しい怪獣は反対勢力とおぼしきものをことごとく排除することができ、他党や反対勢力活動家の参加を更に難しくしている。」

2010年3月には、2010年に予定される総選挙に向けた選挙関連法が発表され、現在まで42を超す政党が登録を行った。この中には非ビルマ民族系の小政党のほか、軍政に極めて近く、ネウィン時代のビルマ社会主義計画党から衣替えした国民統一党(NUP)なども含まれている。政党登録法は、各政党に現在収監中か収容命令下にある個人を党員とすることを禁じている。この規定によりNLDは政党としての再登録を断念した。自宅軟禁下のアウンサンスーチー氏を始め、収監中の党員430人以上を除名することになるからである。総選挙を控えたビルマでは政治活動家、アーティスト、ジャーナリスト、人権活動家など2,100人以上が依然収監されている。ヒューマン・ライツ・ウォッチによるキャンペーン「2010年までに2100人」は更なる国際的な関心を惹起し、総選挙前に全政治囚を釈放するよう求める動きを強めることを目的としている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは国際社会に対し、総選挙を控えたビルマ政府に強く働きかけ、全政治囚の即時釈放、国軍と反対勢力との実質的な対話ならびに真の意味での国民和解プロセスの開始などを求めるよう改めて呼びかけた。関係各国は、軍政指導部、特定の国軍関連企業ならびに政商への対象限定型制裁の強化に向けて協働すべきであり、国連安全保障理事会には武器禁輸措置を取るよう強く働きかけるべきだ。ヒューマン・ライツ・ウォッチはまた、各国に対し、ビルマで続く内紛下で全当事者が犯した戦争犯罪と、人道に対する罪に関する調査委員会を国連総会が設置する提案を支持するよう求めた。

「ビルマの主要な支援国である中国、インド、ロシアでさえ、今回の選挙に関する厚顔無恥な小細工には、おそらくあきれていることだろう」とピアソンは述べた。「民主主義が嘲られているのを黙って放置することは、こうした国々の国際的な評価を損なう結果しか生まないだろう。」

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