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(モスクワ)-グルジアからの分離独立を求める南オセチア自治州を支配する事実上の政権は、市民活動家への悪質な襲撃事件を速やかに捜査するとともに、責任者を裁判にかけるべきである、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

独立系新聞「21セキュラー(XXI Seculare)」編集長で、「南オセチア鉄の共和党」の創設者でもあるチムール・ツスクホフレボフ(Timur Tskhovrebov)氏は、2010年7月24日、約10名の暴漢から襲撃された(うち3名は、南オセチア議会の議員とみられる)。スクホフレボフ氏は、国連によるジュネーブ協議(2008年の南オセチア戦争後に設立された交渉の場)の関係者に対し、南オセチア住民の安全や移動の自由などの人道上のニーズを最優先するよう強く求める共同声明に署名している。暴漢は、同声明にツスクホフレボフ氏が他のグルジア人活動家とともに署名をしたことを不満として、彼を「殺す」と脅していたと伝えられる。ツスクホフレボフ氏は傷を多数負って入院した。

「ツスクホフレボフ氏の襲撃に強く抗議する。加えて、南オセチアの活動家たちの身の安全に、重大な懸念を抱いている」 とヒューマン・ライツ・ウォッチの欧州・中央アジア局長ホリー・カートナーは述べる。「徹底的かつ公平な捜査を速やかに行い、襲撃の犯人たちを裁判にかけるべきだ。」

ツスクホフレボフ氏は、「7月24日午後1時頃、南オセチアの州都ツヒンバリ中央にあるイサク・カレボフ(Isak Kharebov)町で、男たちの一団に捕まえられた」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチに語った。ツスクホフレボフ氏は、一団に3名の国会議員、ならびに南オセチア大統領の熱烈な支持者がいたのを確認。ツスクホフレボフ氏によれば、うち1名は、事件前日に脅迫電話をかけてきた者であるという。

男たちは、「話をしよう」、とツスクホフレボフ氏を無理やり車に乗せようとした。車に乗るのを拒否すると、彼をグルジア人活動家と一緒に共同声明に署名をした 「裏切り者」と罵り、次に暴行を始めた、とツスクホフレボフ氏は語った。ツスクホフレボフ氏は道路に突き飛ばされ、そこへ走ってきた車にはねられた。幾人かの警官がこの暴行現場を見ていたが介入しなかった、と氏は語る。

重傷を負ったツスクホフレボフ氏は、出血しながら、なんとか逃げ出した。その時、議員の1人が銃を抜き、その場で殺すと脅した、という。ツスクホフレボフ氏は近くにあった赤十字国際委員会の塀を飛び越え、構内に入ることに成功。後にその事務所から病院に搬送され、脳震とうと腕の骨折と診断され、さらに、顔と首に縫合が必要な傷を負ったと診断された。また、医師たちは、内臓への傷をも疑った。7月25日、ツスクホフレボフ氏は北オセチアのウラジカフカス(Vladikavkaz)にある病院に移送され、そこで入院中である。

ツスクホフレボフ氏が署名した声明は、7月にオランダで開かれたグルジア人・オセチア人市民運動フォーラムで作成されたものである。フォーラムへの参加者22名によって7月16日に採択されたこの共同声明は、ジュネーブ協議の両当事者たちに対し、南オセチア地域の住民が直面している医療問題や恣意的な拘禁の問題などの緊急の人道問題や基本的人権の問題に焦点を当て、「人道上の課題に関する共同行動のための基本的なメカニズムについての速やかな合意形成に向けて」活動するよう、関係者に強く求めていた。 

南オセチアを事実上支配している政権は、当該声明を強く非難。7月20日、南オセチア大統領特使で、ジュネーブ協議の参加者でもあるボリス・チョチエフ(Boris Chochiev)は、この取り組みを批判する記者会見を開催。その後、チョチエ特使は公営テレビに登場し、声明に署名したオセチア人活動家、なかでも、特にツスクホフレボフ氏を「裏切り者」と激しく罵り、「署名をした人物たちは、ジュネーブでの会談における南オセチアの立場を悪くした。南オセチア共和国に対する国際的な承認を得ようとする我々の努力を台無しにしている」と強く非難した。

「南オセチア議会の議員が暴行に加わっていた疑惑や、警官が傍観に終始しツスクホフレボフ氏を助けなかった疑惑からすれば、ツスクホフレボフ襲撃事件に南オセチア政府が関与していたという疑惑には、強い信憑性がある」とカートナーは述べる。「活動家に対し、白昼堂々と大胆不敵な襲撃が行なわれた今回の事件。ツスクホフレボフ氏が以前より脅迫を受けていた事件と合わせて、迅速かつ徹底的な捜査が行われることが必要だ。」

政府当局が違法行為に関与、あるいは、黙認したと疑うに足る相当な根拠がある場合、政府当局は、その関与の範囲を明確にするとともに、責任者を裁判にかけるためにしっかりした捜査を行う法的な義務を負う、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べる。人権法は、違法行為に関与した公務員の免責を禁止している。

2008年8月にグルジアとロシアの間で戦争が勃発。ツスクホフレボフ氏は、南オセチアで活動する多数のジャーナリストに協力するとともに、ヒューマン・ライツ・ウォッチや、欧州人権裁判所で人権侵害の被害者の代理人を務めている著名な国際団体ロシア・ジャスティス・イニシャティブ(Russia Justice Initiative)など、多くの人権団体にも協力してきた。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、ロシア及び国際社会に対し、南オセチア政権に「今回の襲撃事件の犯人を裁判にかけるとともに、南オセチアの市民活動家や政治家が普通に活動できる環境をつくるために」働きかけるべきであると、強く求めた。

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