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米国/ASEAN:オバマ大統領はアジア諸国首脳に人権の強い働きかけを

ASEAN・米首脳会談で、ビルマ問題、言論の自由、アカウンタビリティ(不処罰の終焉)を議題に

(ニューヨーク) - 米国のオバマ大統領は、初のASEAN諸国の首脳との会談で、極めて緊急性の高い域内の人権問題への対処で協力するよう訴えるべきだ。ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日このように述べた。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、オバマ大統領に対し、10カ国からなる東南アジア諸国連合(ASEAN)の各首脳との会談で、ビルマ民主化の停滞、ASEAN内での表現の自由の制約、人権侵害の責任者に対する不処罰がまかり通っている現実、権限の弱いASEAN人権機構を取り合げるよう求めた。

今回の訪問は、オバマ大統領にとって就任後初めてのアジア訪問となる。シンガポールで開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)年次会合の翌日11月15日、オバマ大統領はASEAN首脳と会談する。

「オバマ大統領は、初のアジア訪問を機会に、ASEANで人権問題を議論するよう促すべきだ」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局局長代理のエレーン・ピアソンは述べた。「ビルマ問題が当然最初に取り上げられるべきだが、その他にも、この地域には、メディアへの抑圧や人権侵害の責任者の不処罰などの問題もたくさんある。」

オバマ政権は、ビルマに対する二面作戦を行っている。ビルマ軍政高官との会談を開始して民主化の受け入れを迫る一方で、実質的な進展があるまで制裁は続けるという姿勢だ。米国国務省高官が今月始めにビルマを訪問し、11月11日にはヒラリー・クリントン国務長官がAPEC首脳会談で「ASEAN加盟国が個別に、そして組織として、ビルマ政府指導部に働きかけ、2010年総選挙が自由かつ公正で信用できるものにするための準備に着手すべき時だと自覚させるよう望む」と述べた。同長官は、ビルマの民主化に進展がなければ制裁は解除しないことも再度明らかにした。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、オバマ大統領に対し、ASEAN首脳全員に強く働きかけて、2010年のビルマの総選挙を前に、全当事者の包括的な政治過程参加の実現とともに、民主化指導者アウンサンスーチー氏ら全政治囚の釈放を力強く、ASEANが一丸となって要求するよう促すことを強く求めている。

オバマ大統領はまた、ASEAN首脳に対し、東南アジア諸国に庇護を求める大量のビルマ難民の存在を踏まえ、難民保護の国際標準を満たすよう強く求めるべきだとヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

「ASEAN 首脳はビルマに対して矛盾するメッセージを送り続けてきた。したがってオバマ大統領は、各国が一致団結して、真の民主的な改革の実現を支持する強いメッセージを発するよう促すべきだ。」と、ピアソンは述べた。「すべてのASEAN加盟国は、ビルマでの抑圧に反対するとともに、ビルマ国民の権利を強化するために難民の基本的な保護を実現すべきだ。」

ASEANが人権擁護のために実質的な役割を果たせる組織となるよう、オバマ大統領は、加盟国首脳に対し、各ASEANの国の中で起きている人権問題を解決するよう強く働きかける必要があるとヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。オバマ大統領は、表現の自由と報道の自由が民主社会に不可欠で重要であることを公式の場で繰り返し指摘すべきだ。

ASEANにおける大きな問題の一つが、政府を平和的に批判する人々やジャーナリスト、人権活動家を沈黙させるため、司法制度が濫用されていることだ。これは、国際法に反する。ジャーナリストや人権活動家を弾圧するため、カンボジア、インドネシア、シンガポールでは刑法の名誉棄損罪が、マレーシアとヴェトナムでは国家保安法(過大な範囲に適用されている)が用いられており、タイでは不敬罪とコンピューター犯罪法が恣意的に適用されている。

カンボジアについて、ヒューマン・ライツ・ウォッチはオバマ大統領に対し、権威主義的な姿勢を強めるフンセン首相の政策に公然と疑問を呈するよう強く求めた。同首相と与党関係者は、暴力や脅迫のほか、腐敗で悪名高い裁判官を用いて、野党の党員、ジャーナリスト、土地の権利の活動家など、現政権に批判的な人々から発言の機会を奪い、投獄している。

ヒューマン・ライツ・ウォッチはまた、オバマ大統領に対し、2010年のASEAN議長国となるヴェトナムに、人権状況の改善を通して地域に範を示すよう強く働きかけることを求めた。ヴェトナム政府はまず、投獄されている数百人にも上る平和的な反体制活動家、独立系教会の活動家、ブロガー、民主化活動家などを釈放するべきである。こうした人びとは、反体制的な意見を平和的な手段で表明したとして、国家保安法上の根拠のない容疑で拘禁されているが、こうした投獄は国際法に違反する。

ヒューマン・ライツ・ウォッチはこのほかにも、カンボジア、インドネシア、フィリピン、タイの各国で、治安部隊が深刻な人権侵害を引き続き行いながら、責任追及も処罰もされていない実態に注意をうながした。政府首脳は人権侵害の実行者を訴追すると確約しているにもかかわらず、侵害を行った当局関係者の訴追は順調に行われていない。過去に侵害行為を行った人物たちが、依然として処罰されないだけでなく、現在も治安部隊に在籍したままで、昇進するかもしれないという実態にある。

タイでは、2003年の「麻薬との戦い」や反政府勢力への軍事作戦における残虐行為の責任者であったことがわかっている軍人や警察官たちが、処罰されないだけでなく昇進の対象となっている。インドネシアでも、残虐行為の責任者たちが陸軍特殊部隊(略称Kopassus)の内部で昇進を重ねており、人権活動家ムニル・ビン・タリブ氏殺害事件(2001年)の首謀者は今も逮捕されていない。

米国政府は、米国が資金提供するプログラムに参加している治安部隊のユニットや個々の要員に関する情報を見直し、参加者が人権侵害行為(特に拷問、強制失踪、超法規的処刑)に一切手を染めていないことを確認すべきである。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、オバマ大統領に、この点を確約するよう求めた。オバマ大統領は、米国政府の軍事援助のうちもっと多くの部分について、残虐な人権侵害行為の訴追の進展を条件とするよう検討すべきである。

ASEAN諸国は、加盟国に人権保護を誓約する憲章を批准したものの、10月の第15回ASEAN首脳会議で設立された人権委員会の力は弱い。委員たちの一部は、出身国の政府から独立していない。委員会のマンデートも、加盟国の人権を保護するというよりは、加盟国が人権を促進することを許すというレベルにおおむね限定されている。

「オバマ大統領はASEANに対し、この地域的枠組が、人権状況改善に向けた真の力になりうることを理解してもらうべきだ。」とピアソンは述べた。「しかしそのためには、新設されたASEAN人権委員会が、口先だけで人権促進をうたうのではなく、人権侵害に苦しむ人々を保護する権限を持つべきだ。」

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