(ニューヨーク)-政府軍部隊と毛沢東主義の反政府ゲリラは、インド中央部その他各地における戦闘で、民間人はしっかりと保護すべきである、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

「政府軍も毛沢東主義ゲリラも、自分たちは、インドの最貧困層に置かれた人の味方だと主張している。しかし、その主張とはうらはらに、両陣営ともインドの最貧困層に対し、残虐行為を行なっている」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチの上級南アジア調査員メナクシ・ガングリーは述べた。「地元民たちが、戦闘の真っ只中に取り残され、殺害され、負傷し、拉致され、どちらかの側に付くことを強制され、次には報復に遭う危険にさらされている。」

2009年11月4日、マンモハン・シン首相は、部族コミュニティーに対する「組織的な搾取及び社会的経済的な不正」に言及。「もっと対策を講ずるべきだった。今後は、もっと対策を講ずる。」と語った。一方、シン首相は、毛沢東主義ゲリラによる暴力の脅威には「断固たる決意」で対処すると警告。インド政府の新しい政府反乱勢力鎮圧作戦「グリーンハント作戦」を決行し、国の準軍事部隊を派遣し、州の警察部隊とともに、毛沢東主義ゲリラ(ナクサライト(Naxalites)とも呼ばれる)による武装抵抗運動を終結させようととしている。反乱軍の支配地域で、インド政府の支配権を確保する目的。

毛沢東主義ゲリラは、インドの最貧困層(とりわけ部族やダリットと呼ばれるカースト制度の外に置かれる最下層民、土地を持てない小作民)の権利のために戦っている、と主張している。一方、インド政府も、毛沢東主義ゲリラ支配地域での開発・発展が必要不可欠と認めるものの、ナクサライトこそがインド政府の開発・発展のイニシアチブを妨害していると主張。ナクサライトは、平和的なアドボカシー活動(政策提言、ロビーイング)を行なうべきだという。争いの主要因は、天然資源の支配権で、特に内戦に苦しむ州に多く点在している膨大な地下資源に対する支配権をめぐる戦いなのである。

ナクサライトは、インドにある600の地域のうち200地域近くで活動。戦闘支援のために村民を徴用するため、村民たちは政府軍部隊によって逮捕・拷問の対象にされることが多い。村民たちは、ナクサライトの徴兵活動(子どもの徴兵を含む)や広範で恐喝的な物資徴用活動を批判。ナクサライトは、学校などの政府施設を攻撃したり、警察署や武器庫を襲撃するほか、地雷や簡易爆破装置を使用している。最近の攻撃で、ナクサライトは、旅客列車をハイジャックし、警察当局者を拉致し、企業や鉱山会社の従業員を襲撃し、警官と内通していたと疑いをかけられた人びとの首をはねるなどした。

「貧困や、巨大産業プロジェクトがもたらした被害に対する政府の無策を批判し、毛沢東主義ゲリラは暴力を用いてきた」とガングリーは語った。「しかし、ナクサライト自体が人権を無視する手法を用いており、いったい彼らの主張は真実なのか、疑問を呼んでいる。」

インド政府軍部隊が、これまでの毛沢東主義ゲリラに対する戦闘で、恣意的逮捕・拷問・違法な暗殺など、広範な人権侵害を行っていること、そして、そうした人権侵害が処罰されていないことを、ヒューマン・ライツ・ウォッチなどの団体は調査し、報告してきている。

チャッティースガル(Chhattisgarh)州政府は、大量殺人・レイプ・民間人数万人の強制移住に手を染めている自警団サルヴァ・ジュドム(Salwa Judum)を支援してきた。10月30日、P.チダムバラム(P. Chidambaram)内務大臣は、サルヴァ・ジュドムを非難して、政府は「サルヴァ・ジュドムのような私的な組織が武器を取ることに賛成」しないと表明。ヒューマン・ライツ・ウォッチはそれを支持した。

人権侵害の責任を負うべきサルヴァ・ジュドムのメンバーや国軍部隊をしっかり訴追するよう、ヒューマン・ライツ・ウォッチは政府に強く求めた。今も多数の準軍事組織が派遣されており、人権侵害が増大すると懸念される。

「インド政府高官は正しい事を言っている。しかし、本当の試練は、現場で何が起きるのか、だ」とガングリーは語った。「インド政府は、グリーンハント作戦に参加している兵士たちに対し、人権侵害を許容しない、そして過去の人権侵害に責任を負うべき者も訴追する、という強いメッセージを伝える必要がある。」

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、インド中央政府と州政府に、表現の自由をまもるよう求めるとともに、毛沢東主義ゲリラの主義主張に対する単なるシンパシーと、ゲリラの暴力や脅迫に対する共犯行為を、混同しないように呼びかけた。西ベンガル州政府は、先頃一部の映画製作者、作家、活動家に対し、単に警察の暴力に抗議しているグループを支持していただけであるにも拘わらず、毛沢東主義ゲリラを支持していると非難した。

人権活動家たちも、これまで度々、ナクサライトとの実体のない関係を疑われて、攻撃されたり恣意的逮捕されたりした。内科医であり人権活動家でもあるビナヤク・セン(Binayak Sen)は、刑務所当局の監視の下にナクサライト指導者に面会しただけなのに、その指導者の密使として活動しているという疑いを掛けられ、2007年から2009年にかけて投獄されている。2008年、セン医師は誉れ高い「ジョナサン・マン世界健康・人権賞(Jonathan Mann Award for Global Health and Human Rights)」を受賞。世界中の人権団体、医師、一般市民が、彼の釈放を求める陳情に署名した。

最高裁判所が5月にセン医師を保釈するよう命令を出したのは前向きな進展であったが、その数日前、警察は、チャッティースガル州ダテワダ地方に住む人権活動家ヒマンシュ・クマル(Himanshu Kumar)が運営しているバンバシ・チェトナ・アシュラム(Vanvasi Chetna Ashram)というNGOを包囲。サルヴァ・ジュドムと州部隊による残虐行為を批判してきたヒマンシュは、退去に30分与えられただけで、同NGOセンターを破壊するためのブルドーザーが運び込まれた。保護されている森林に同センターが侵入している、との説明だったが、同センターはその場所に20年前からあるものである。

「人権保護を求める人びとに対し、毛沢東主義ゲリラへの共犯者というレッテルを貼らないよう、政府はしっかり約束すべきだ。」とガングリーは語った。「民主主義国なのに、こんな実態となっているのは残念だ。何にはさておき、両陣営は、インドの最貧困層が直面する問題を、暴力と人権侵害のサイクルで解決することなど、絶対にできないことを理解する必要がある。」