(モスクワ)-ロシア政府当局は、人権保護団体メモリアルの活動家たちに忍び寄る不振な動きに対する捜査を開始し、活動家たちの身の安全を確保するための緊急の手段を講じるべきである、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

今月3日、メモリアル(Memorial Human Rights Center)のオレグ・オルロフ(Oleg Orlov)代表と、武力紛争担当の調査員アレクサンドル・チェルカソフ(Alexander Cherkasov)氏が暮らすアパートに、正体不明の者たちが不審に現れた。モスクワを本拠地としながら、コーカサスに関する調査を行なう専門家である両名は、7月15日に発生したメモリアルの著名なチェチェン調査員ナタリア・エステミロワ(Natalia Estemirova)氏の拉致・殺害後、この事件を公けに批判してきた。

「NGOメモリアルのスタッフの身の安全について、非常に心配している」とヒューマン・ライツ・ウォッチのヨーロッパ・中央アジアディレクターであるホリー・カートナーは述べた。「今年の夏に入ってから、既にNGOの活動家が3名も殺害されている。激しい脅迫も多発している。ロシア政府は、メモリアル職員の自宅に対する今回の不審な訪問を直ちに捜査する必要がある。」

9月3日午後、オルロフ代表が暮らすアパートに見知らぬ男が現れた。近所に住む女性が後からオルロフ氏に伝えた話によると、この男は女性宅のドアをノックして税務調査官を名乗り、アパートで未登録の事業活動が行われていないか調べている、と話した。その「税務調査官」を名乗る男が「周りの部屋には誰が住んでいるのか」と質問し、オルロフ氏の部屋に特に興味を示したため、この近所の女性は不信に思ったという。

同日の朝、似たような事件がチェルカソフ調査員が住むアパートでも発生した。未登録の事業活動を調査している税務調査官を名乗った見知らぬ女がチェルカソフ氏の部屋を訪ね、チェルカソフ氏の母親と話をし、チェルカソフ氏自身のことや彼の仕事について尋ねた。

オルロフ氏とチェルカソフ氏は、ともに管轄の税務監察局に電話をし、3日に両氏を訪問した税務監督局の職員はいなかったことを確認した。

メモリアルの他のスタッフたちも、ここ数週間に脅迫や嫌がらせをうけている。8月10日、チェチェンでの紛争の被害者を支援する人道団体Save the Generationの活動家であるザレマ・サドゥラエワ(Zarema Sadulayeva)氏とアリク・ドズハライロフ(Alik Dzhabrailov)氏はグロズヌイにある事務所から拉致され、翌日遺体となって発見された。

オルロフ氏とチェルカソフ氏の自宅への不審な訪問があった9月3日は、チェチェンのラムザン・カディロフ(Ramzan Kadyrov)大統領がオルロフ氏に対して起こした名誉毀損訴訟の、裁判手続が開始する1週間前にあたる。この訴訟は、エスレミロワ氏の殺害を受けてオルロフ氏が出した声明に対して、起こされた裁判である。

ロシア政府は、人権活動家の保護に重点的に取り組み、NGOの活動家や独立したジャーナリストが活動しやすい環境を作るべきだ。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、ロシアの関係各国に対し、ロシア政府に対してこの点を強く要求するよう、呼びかけた。

「ロシア政府は、今年の夏の3名の活動家暗殺事件の犯人を探し出すとともに、人権活動家に対するあらゆる脅迫に、直ちに対応する必要がある。」とカートナーは述べた。