(ニューヨーク)-「安全保障理事会が、スーダン大統領に対する訴追手続を延期することなくダルフールの平和維持部隊の任務を延長したことは、正義と安全を追求するとしたスーダンの一般市民への約束を再確認するものだ 」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。

AU国連合同の平和維持部隊のマンデート延長に関する安保理での議論で、リビアと南アフリカは、スーダンのオマル・バシール大統領の逮捕状発付についての国際刑事裁判所(ICC)の裁判官らによる審査を停止する文言を挿入しようとした。修正案では、バシール大統領の訴追に対するメッセージが弱すぎると懸念した米国は棄権にまわった。

AU国連合同の平和維持部隊のマンデート延長に関する安保理での議論で、リビアと南アフリカは、スーダンのオマル・バシール大統領の逮捕状発付についての国際刑事裁判所(ICC)の裁判官らによる審査を停止する文言を挿入しようとした。修正案では、バシール大統領の訴追に対するメッセージが弱すぎると懸念した米国は棄権にまわった。

「一部の理事国が、平和維持部隊を人質に、法の正義を損なおうとする近時のスーダン政府の行動を支持しようとしたが、安保理はこれを拒否した。」とヒューマン・ライツ・ウォッチのインターナショナル・ジャスティス・プログラムのディレクター、リチャード・ディッカーは述べた。「米国政府の棄権行動は、バシール大統領をこのまま処罰から逃れさせてしまおうとする目論見に対する明らかな拒否を示す一票に他ならない。」

2008年7月14日、ICC検察官は、スーダン・ダルフール地方での残虐な対ゲリラ活動軍事作戦を組織したとして、バシール大統領に対し、ジェノサイド(集団殺害)罪、人道に対する罪、戦争犯罪の容疑で逮捕状を請求した。スーダン政府は、アフリカ地域選出の安保理理事国に対しICC手続の延期を求めるよう説得し、バシール大統領に対する逮捕状の発付を妨害しようと企てた。

2005年3月、米国は、ICCに対する懸念ゆえ、ダルフールの事態をICCに付託する安保理決議で棄権した。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、米国の本件7月31日の棄権は、逆に、法の正義とICC手続きに対する支持の表明であり、特に注目に値すると述べた。

ICC設立を規定するローマ規程は、その第16条で、平和及び安全の維持を規定する国連憲章第7章の規定に基づいて採択した安保理決議によって、ICCの捜査又は訴追を12ヶ月間延期することを認めている。

「ダルフールでの犯罪の捜査をICCに付託したのは安保理に他ならない。理事国は、ダルフールで法の正義を追求するとしたその約束を遵守すべきだ。ICCの手続きを止めようとする本件試みは、独立した司法に対する露骨な政治的干渉に他ならない」とディッカーは述べた。

安保理がダルフールの事態をICCに付託して以来3年、スーダン政府は、国際人道法及び多数の安保理決議を破り続けているにも拘わらず、何らの報いも受けていない。ICC検察官が逮捕状を請求したのが2週間前であるが、その後だけでも、政府軍は少なくとも2回、村落への攻撃を行ったと報告されている。そしてスーダン政府は、こうした重大犯罪の責任者を国内裁判所で訴追するという真剣な努力を何ら行ってこなかった。

ダルフールの和平交渉は少なくともこの9ヵ月間進展がないが、その理由は、ICCの捜査あるいはバシール大統領に対する逮捕状請求とは何らの関係もない。一方、スーダン政府が、ダルフール合同国連平和維持ミッション(UNAMID)の配備を大幅に妨害・遅延させたため、決議1年を経過したにも関わらず、UNAMID要員の3分の1しか配備されていない状況が続いている。こうした状況の中で、現時点でスーダン政府に譲歩をすることは全く正当化しえない。

2007年4月、ICCが2名の容疑者に対し初の逮捕状を発付して以来、スーダン政府は、安保理決議1593下の法的義務にも関わらず、ICCへの協力を完全に拒否してきた。6月5日、ICC検察官は安保理でブリーフィングを行い、ダルフールで捜査を行った結果、「外交機構、国家報道機構及び司法制度を含む国家機構全体を動員した犯罪の計画」が明らかになったと述べた。6月16日、安保理は、スーダン政府にICCへの協力を求める議長声明を満場一致で採択している。