(ニューヨーク) - ビルマを襲ったサイクロン「ナルギス」からの復興を支援するドナー諸国・関係諸機関は、援助がビルマ国民に届き、同国の抑圧的な政権に悪用されない状況を確保すべきだ。ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日、ドナー側への公開書簡でこのように述べた。5月2日~3日にビルマ南部を直撃し、甚大な被害を引き起こしたこのサイクロンは、被災者240万人、死者・行方不明者14万人を出している。

国家平和発展評議会(SPDC=ビルマ軍事政権)、東南アジア諸国連合(ASEAN)、国連からなる合同調査会議(TCG)は7月21日、シンガポールでの会合で、先般行った被災状況調査の結果を報告し、救援・復興の総経費を10億米ドル(約1100億円)と推計した。これに先立つ7月10日には、国連がニューヨークで緊急支援のための最新アピールを提出し、国際社会への援助要請額を当初の2億1000万ドル(230億円)から4億8100万ドル(530億円)に変更した。

「サイクロン被災者への国際的な救援活動は賞賛に値するものだった。したがってこの支援がコミュニティの復興でも継続されることが重要である。だが援助は通常の国際基準に則って実行されなければならないのに、ビルマ軍政は今日に至るまでこれを受け入れていない。」ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長ブラッド・アダムズはこのように述べた。

ヒューマン・ライツ・ウォッチはこれまでにも、ニーズを抱える人々に援助が適切な形で提供されることを条件に、ビルマへの人道援助の増強に賛成してきた。だがビルマ政府は、現地へのアクセスにも援助のモニタリングにも規制を加えており、同国内でドナーが援助を提供し、援助機関が活動する上での障害となっている。

サイクロン後のビルマで被災者を支援する国際的な取り組みは、ビルマ軍政からの妨害を受けてきた。国連や国際人道支援組織への約束にもかかわらず、外国人スタッフは被災地への移動を制限されている。また各地の被災地では民間人数千人が強制移住させられており、地元のコミュニティは自由に支援活動ができない。救援活動を行うビルマ人の中には当局によって逮捕された者もいる。

サイクロンから10週間が経過したが、国連の推計によれば、援助を受けられず、食糧に事欠き、住居を必要とし、最低限の衛生状態が確保できず、被災による深刻な精神的被害を抱えた人々がまだ大勢いる。

「これまでも長年にわたり、ビルマ軍政幹部は援助の実施を促進するのではなく、妨害してきた。ドナー側は基本原則に同意すべきであり、また援助のすべての段階でこれらに従うよう同国政府に圧力をかけなければならない」と、アダムズ局長は述べた。

今回の書簡で、ヒューマン・ライツ・ウォッチは以下の基本10原則を示した。

  • 被災者が現在も有する人道的ニーズが即時満たされるべきであること
  • 復興ニーズの算定を行うため、国内外の人道支援組織が被災者に対し、妨害を受けずにアクセスすることが可能であること
  • 国際社会が資金提供する復興活動は、そのすべてについて、ビルマ政府への直接的な資金提供ではなく、独立した人道・開発機関による実施が確保されること、かつビルマ側の参加についてドナー側のモニタリングが確保されること
  • 復興事業が、強制労働・強制移住・土地の強制収用などのこれまでに記録されている人権侵害行為を発生させないようモニタリングを行うこと
  • 復興事業計画の策定と実施にあたり、被災地域のコミュニティや少数民族、宗教的なコミュニティ、市民社会の広範な各層からの意見を参考にすること
  • 復興事業について、国際社会が制裁対象とする、あるいはビルマ軍が所有または支配しているビルマ国内の企業・個人とは契約を行わないこと
  • ニーズに基づいて人道援助と復興支援を行い、民族や宗教、所属政党、その他の理由に基づいて政府がその実施を差別しないよう監視すること
  • 復興事業へのコミットメントを行うに先立ち、約35億米ドル(3850億円)の外貨準備を有し、天然ガス輸出で毎月約1億5千万米ドル(165億円)の収益を得ているビルマ政府に対し、復興事業に相当する額のコミットメントを自ら実施するよう求めること
  • 復興事業の実施を通して、ビルマでの人権尊重を促進すること
  • 独立したモニタリング機関を確立すること

「ビルマでの人道・復興事業への資金拠出と実施、モニタリングにあたり、ドナー諸国・関係諸機関が直面している複雑で例外的な困難を踏まえ、ドナー側は『独立したモニタリング機関』を設置すべきである。この機関は復興・人道援助の整合性、透明性、アカウタビリティを確保するため、ドナー側と国連が共同で運営されなければならない。」アダムズ局長はこのように述べた。

スライドショー:サイクロン被災状況とビルマ政府の非効率的な対応

ヒューマン・ライツ・ウォッチは2008年6月~7月に、イラワジ・デルタ地域で、サイクロンが与えた船舶やインフラへの甚大な被害、制約を受ける人道支援活動、大量の治安要員の存在を記録した。これらの写真が明らかにするのは、被害の規模と共に、ビルマ国内のコミュニティと国際機関の支援活動をいっそう困難なものにしているビルマ政府の五月雨式な対応である。詳細は以下を参照:https://www.hrw.org/photos/2008/burma0708/.