(ソウル)-北朝鮮と韓国企業の新しいジョイントベンチャーである開城(ケソン)工業団地で適用される北朝鮮法は、労働者の基本的権利を適切に保障するものに改正される必要がある。本日発表されたヒューマンライツ・ウォッチの新しいブリーフィングペーパーはこのように述べている。

開城工業団地における北朝鮮の労働者の労働環境は、その他の北朝鮮の労働環境と比較すれば重要な前進を示しているといえるが、本工業団地で適用される法規及びそこで操業する韓国企業の行動の一部は、国際的な労働者保護の基準に遠く及んでいない。北朝鮮政府は、韓国の財閥現代(ヒュンダイ)グループの系列で、本工業団地の開発にあたる現代峨山(ヒュンダイアサン)と協議ののち、本法を作成した。

「北朝鮮における窮状に照らせば、人々が開城のような施設で働く機会を得られることは小さな前進といえる。」ヒューマンライツ・ウォッチのアジア部副ディレクター、ソフィー・リチャードソンは語る。「しかし、人々が法律の保護を享受することができない限り、開城での労働者の権利の侵害は免責されてしまう。」

この19 頁のブリーフィングペーパー「北朝鮮:開城工業団地での労働者の権利」は、北朝鮮内に位置する開城工業団地における労働環境を概観している。また、本ブリーフィングペーパーは、特に、結社の自由、団体交渉権、性差別、ハラスメントそして有害な児童労働の禁止などの分野における開城工業団地の労働法の欠陥を指摘している。

開城工業団地は、北朝鮮政府と韓国の現代峨山そして北朝鮮の国営会社である韓国土地公社の合意の下、2004 年6 月に稼動を開始した。開城工業団地は、北朝鮮の都市開城と、韓国及び北朝鮮の国境の西側の間に位置している。労働者は、時計、靴、服、台所用品、プラスチック容器、電気コード、自動車部品など、主に韓国市場向けの製品を生産している。8 月時点で、13 の韓国企業で、8000 人以上の北朝鮮人労働者が働いている。

加えて、ヒューマンライツ・ウォッチは、韓国の企業が、労働者に対する賃金の現金・直接払いを定める開城工業団地の既存の法律に違反していることを突き止めた。ある使用者代表は、ヒューマンライツ・ウォッチに対し、韓国企業は、労働者の賃金を直接北朝鮮政府に対して米ドルで支払うよう要求されており、その後、北朝鮮政府が、社会福祉基金への支払い分30%を強制的に控除したのち、北朝鮮ウォンで、労働者に賃金を支払っている、と述べた。

リチャードソン副ディレクターは「北朝鮮が、韓国企業に対し、賃金支払いの点ですでに労働者の権利を侵害する行為を行わせているということは、それ自体が遺憾であるのみならず、開城におけるそのほかの法違反の懸念を抱かせる」と述べた。

北朝鮮は、4 つの主要な国際人権条約の締約国である:市民的及び政治的権利に関する国際規約、経済的・社会的及び文化的権利に関する国際規約、女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約、そして、子どもの権利条約である。

すべての条約は、重要な労働者の権利の保障について定めており、それには、結社の自由、団体交渉権、性差別や有害な児童労働の禁止が含まれる。こうした国際人権条約の締約国として、北朝鮮は、これらの諸権利を保障する法的な義務を負っている。

ヒューマンライツ・ウォッチは、いまだに、開城工業団地の北朝鮮人労働者たちにインタビューすることを許されていない。このブリーフィングペーパーは、開城工場団地で操業している企業を代表している韓国の統一省その他から得た情報に基づいて作成されたものであり、開城工業団地の労働法についての分析も含んでいる。

北朝鮮は、韓国企業に対し、開城工業団地の労働法が定めるとおり、賃金を労働者に対し現金で直接払いすることを許すべきであり、また、労働法を国際労働基準に沿ったものに改正し、その効果的な適用を確保すべきである。ヒューマンライツ・ウォッチは、北朝鮮に対し、国際労働機関(ILO)に加盟すること、ILOの主要な条約に署名すること、そしてILO を招聘して労働者の権利の擁護と伸張について協議を行うべきであると勧告した。

韓国政府は、韓国企業が開城工業団地における労働者の権利を尊重するよう、確保すべきである。経済協力開発機構(OECD)の一加盟国として、韓国は、締約国に対し多国籍企業に主要なILO 条約に定められた労働者の基本的権利の尊重させることを求めるOECD 多国籍企業ガイドラインの適用を促進すべきである。

「開城を北朝鮮における人権状況の真の改善の表れというためには、ソウルも平壌も、それぞれ北朝鮮の労働者の基本的権利及びその保障を確保しなくてはならない。」リチャードソン副部長はこのように述べた。