(ニューヨーク)―トランプ政権による国際刑事裁判所(ICC)への制裁決定は、世界の正義と法の支配に対する前例のない攻撃だと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。2026年10月9日、マルコ・ルビオ米国務長官はICCへの制裁を科すと発表した。
「トランプ政権は、米国とイスラエルの政府高官がICCで訴追されるのを防ぐため、ICCを破壊するという狙いを明確にしている」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのフィリップ・ボロピオン代表は述べた。「ICCを攻撃することで、米国政府はパレスチナからウクライナ、ミャンマー、スーダンに至るまで、人権侵害の被害者のための正義を脅かしている。」
ICCは、戦争犯罪、人道に対する罪、ジェノサイド、侵略犯罪の容疑者を、高官も含めて裁くために設立された常設の国際裁判所である。1990年代半ばのルワンダと旧ユーゴスラビアでのジェノサイドを受け、国際社会は、重大犯罪に最も責任のある者が裁きを逃れるのを防ぐためにICCを設立した。国連加盟国の約3分の2がICCに加盟している。ICCはパレスチナに関する捜査に加え、アフガニスタン、スーダン・ダルフール、バングラデシュ/ミャンマー、ウクライナ、ベネズエラを含む17の事態で、犯罪の容疑に関する捜査を開始している。
米国政府によるICC制裁決定が発表されたのは、ノルウェーのノーベル委員会が、元ICC裁判官で著名な国際法律家であるナビ・ピレイ氏への2026年ノーベル平和賞授与を発表したのと同じ日だった。同委員会は、「戦争犯罪、人道に対する罪、ジェノサイドの確実な訴追を確保する」うえでピレイ氏が中心的な役割を果たしたことを授賞理由に挙げた。
米国のルビオ長官は10月9日の発表で、今回の制裁は米国民をICCによる捜査と訴追から守ることを目的としていると述べた。トランプ政権はこれまで、パレスチナにおけるイスラエル国民の行為に対するICCの捜査に異議を唱えてきた。ICCは、ガザでの重大犯罪を理由に、イスラエルのネタニヤフ首相とガラント前国防相に対して逮捕状を発付している。パレスチナは2015年にICCに加盟し、2014年6月13日以降に自国領域内で、または自国民によって行われた重大犯罪を扱う権限をICCに付与した。
トランプ政権はすでに、ICCの検察官、ICC裁判官9人、パレスチナの著名な人権団体3団体、そして国連の被占領パレスチナ地域人権状況特別報告者に制裁を科し、ICC締約国に対してICCから脱退するよう呼びかけている。
米国の制裁は、対象に深刻な影響を及ぼす。銀行口座の凍結や閉鎖、金融取引の拒否、デジタルサービスの利用拒否、米国への入国禁止などだ。米国の制裁はまた、米国の管轄外にある米国以外の銀行やその他の企業にも萎縮効果をもたらす。これらの企業は、制裁に従わなければ、自らが米国の銀行システムを利用できなくなるおそれがあるからだ。つまりICCは、銀行業務から情報、技術、渡航に至るまで、日常業務で頼っている企業を利用できなくなる可能性がある。
ヒューマン・ライツ・ウォッチは他の人権団体3団体とともに、2026年8月11日に米連邦裁判所に訴訟を提起し、これまでICC関連の一連の制裁の根拠として用いられてきた制裁枠組みの無効確認を求めている。この訴訟を支持して、幅広い人権団体、その他の専門家、元米政府高官らがアミカス(法廷助言者)意見書を提出している。
ハーグにICCを擁するオランダ政府を含むICC締約国、ICC締約国会議の議長団、欧州連合(EU)、国連人権専門家、国連事務総長、国連人権高等弁務官、市民社会団体、そしてICC自身が、制裁に反対する声を繰り返し上げてきた。
ICCと締約国は、制裁の潜在的な影響から裁判所を守るための重要な措置を講じてきたが、ICCが重要な活動を継続できるよう守るためには、さらなる行動が必要だ。EUは、域外適用される制裁の影響から欧州の事業者を保護することを目的としたブロッキング規則を直ちに発動すべきである。
国際司法システムを標的とする一連のトランプ政権の制裁は、人権を守るための法、制度や組織に対するより広範な攻撃の一環だと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。米国はまた、パリ協定と世界保健機関(WHO)から脱退し、国連人権理事会への関与も停止している。トランプ大統領をはじめとする米政府高官らは、国際法を軽んじる姿勢を示し、戦争犯罪を行うと威嚇してもいる。
「ICCは、どれほど強大な権力者であっても、最も重大な犯罪の裁きを逃れられないようにするために設立された」と前出のボロピオン代表は述べた。「世界各国の政府は、米国の制裁の影響に対抗するために取れるあらゆる措置を講じ、ICCと、法の下の正義を求めてICCを頼りにしている人びとの側に立つべきだ。」