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カンボジア:環境NGO「マザー・ネイチャー」の活動家、1年にわたり収監

当局は環境活動家やジャーナリストへの弾圧を止めよ

プノンペンの裁判所の外でポッドキャストを収録するマザー・ネイチャーの活動家5名(右から左:リ・チャンダラヴット(Ly Chandaravuth)氏、トゥン・ラータ(Thun Ratha)氏、イム・リアンヒー(Yim Leanghy)氏、プオン・ケオラックスミー(Phuon Keoraksmey)氏、ロン・クンティア(Long Kunthea)氏)、2024年6月11日。 © 2024 Private

(バンコク、2025年7月2日)―カンボジア政府は、根拠のない容疑で6年~8年の刑を言い渡され、すでに1年の刑期を終えた環境活動家5人を即時かつ無条件で釈放すべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。

2024年7月2日、首都プノンペンの裁判所は、若者主体の環境保護団体「マザー・ネイチャー」の活動家10人に対し、「政府転覆」と「国王侮辱」で有罪判決を下した。容疑はすべてかれらの非暴力の環境保護活動を理由とするものだ。5人は即座に収監され、4人は欠席裁判で有罪を宣告された。残りの1人はスペイン国籍の活動家で、2015年に国外追放されていた。

「1年前にマザー・ネイチャーの活動家たちに科された、根拠のない容疑に基づく過酷な判決は、カンボジア政府が自国の環境の悪化から完全に目を背けていることの証明だ」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長代理ブリオニー・ラウは述べた。「政府は、平和的な環境保護活動に対する有罪判決を取り消し、投獄されている活動家たちを直ちに釈放すべきだ」。

当局は、収監された5人の活動家を、家族のところから数百キロも離れた各地の刑務所に分散拘禁した。あるカンボジアの人権団体はこれを「残酷で前例のない措置」と非難している。2025年4月30日、カンボジア最高裁判所は活動家側による最後の保釈請求を却下し、2月17日にプノンペン控訴裁判所が保釈を拒否した最初の判断と有罪判決を支持した。

収監されている活動家の氏名と出身地は、トブン・クムム州出身のトゥン・ラータ(Thun Ratha)、カンダル州出身のリ・チャンダラヴット(Ly Chandaravuth)、プサット州出身のプオン・ケオラックスミー(Phuon Keoraksmey)、カンポン・スペウ州出身のイム・リアンヒー(Yim Leanghy)、プリア・ヴィヘア州出身のロン・クンティア(Long Kunthea)の各氏だ。分散拘禁によって、家族の面会、医療、法的支援へのアクセスは厳しく制限されており、活動家の健康状態とデュープロセス権への重大な侵害が生じている。

Map of the current prison locations of the 5 Mother Nature activists convicted in July 2, 2024. © LICADHO

10年以上にわたり、マザー・ネイチャーはカンボジアの天然資源管理にはびこる腐敗を暴露し、破壊的なインフラプロジェクトに反対し、国内の生物多様性の保護に若者を動員してきた。カンボジアの生物多様性は、森林伐採と野生生物密輸が深刻化していることで、世界的に見てもきわめて重大な脅威にさらされている。マザー・ネイチャーのこれまでの成果には、中国主導のダム建設の停止、先住民族コミュニティへの脅威の排除、ココン島からの不正な土砂輸出の停止などがある。

2023年、マザー・ネイチャーは「恐れを知らない本気の活動」が評価され、Right Livelihood賞を受賞した。Right Livelihood賞財団は、国連人権理事会(UNHRC)で、マザー・ネイチャーの活動家の投獄を取り上げ、逮捕と判決を「これまで聞いたことのない(……)、不当で恣意的」なものだと非難した。

カンボジア当局は、人権活動家をたびたび煽動罪(刑期は最長2年)で起訴している。2021年、国連のカンボジアの人権状況に関する特別報告者は、「人権活動家が、重罪の煽動罪で起訴され、現在も拘禁されている」との懸念を表明した。今回有罪となったマザー・ネイチャーの活動家は環境活動家としては初めて、煽動罪より刑期が長くなる(最長10年)共謀罪で起訴された。現在の刑期によれば、チャンダラヴット、ケオラックスミー、クンティアの4氏の刑期満了は2030年、リアンヒー氏は2032年である。

マザー・ネイチャーへの有罪判決以来、カンボジア当局は、環境ジャーナリストも報道内容を理由とした弾圧の標的にしている。

1月4日、イギリス人の環境ジャーナリストのジェラルド・フリン氏はカンボジアへの再入国を拒否されたが、これは明らかに彼の報道内容に対する報復だった。フリン氏は国外からシエムレアプに到着した際、入国管理当局からビザ延長が「ねつ造」によるものだと告げられた。しかし、彼は2024年11月にこのビザでカンボジアを自由に出入りしていた。当局は、国内に残る数少ない外国人ジャーナリストであるフリン氏本人に対して、カンボジアへの再入国を無期限禁止にしたと通告した。フリン氏は、カンボジア中に広がる違法伐採ネットワークを調査し、フランスの国外向けTV局「フランス24」のビデオドキュメンタリーに出演した。環境省は、このドキュメンタリーを「フェイクニュース」と公の場で決めつけている。

5月16日、覆面車両に乗った私服警官3人が、ストゥントレンの自宅近くで、カンボジア人の環境ジャーナリストのオウク・マオ(Ouk Mao)氏を令状なしで逮捕し、手錠をかけたと、氏の妻は環境ニュースメディアのモンガベイ(Mongabay)の取材に対して述べた。軍警察は、2024年6月にストゥントレンの共有林での森林伐採に関する調査の件で、オウク・マオ氏をすでに事情聴取していた。

この事件から5月の逮捕までの間、マオ氏は森林破壊に関する報道を引き続き行った。また、彼については、本人が受けた暴行や恣意的な起訴についてモンガベイの記事が取り上げたほか、ラディオ・フランス・アンテルナショナル(RFI)のクメール語放送でのインタビューも多くの視聴者を得た。

マオ氏は、9日間の未決勾留の後、5月25日に保釈されたものの、環境問題についての報道と公の場での発言を理由に複数の重罪容疑で起訴された状態が続いている。

5月27日、国連の人権活動家に関する特別報告者は、オウク・マオ氏についてのコメントを発表し、「カンボジアの違法伐採と森林破壊を暴露した(環境人権活動家)に対する司法的・物理的嫌がらせは今すぐ停止されなければならない」と記した。

「カンボジア政府が環境活動家とジャーナリストを標的としていることはきわめて深刻だ」と、前出のラウ局長代理は述べた。「カンボジアの環境を守ろうと、自分の生命と生計手段を今も危険にさらしている人びとを投獄し、国外追放し、あるいは潜伏を余儀なくさせることは、カンボジアの人々に長期にわたる損害をもたらすことになるだけである」。

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