日本の「人質司法」の被害者4人が3月24日、長期間の勾留や保釈拒否を許容する刑事訴訟法の規定が憲法に反することを訴え、東京地方裁判所に国家賠償請求訴訟を提訴しました。
「人質司法」の下、刑事事件の被疑者・被告人は適正手続と公正な裁判を受ける権利を侵害され、「被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由がある」という抽象的な根拠に基づき、長期間、ときには数ヵ月から数年にわたり身体を拘束されます。とくに否認や黙秘をしている場合、その期間は長くなります。今回の訴訟は、長期間の勾留を許容する刑事訴訟法60条1項2号、89条1号、3号及び4号並びに81条が、制定当初から、あるいは特定の時期から明⽩に違憲であったことを理由に、⽴法⾏為⼜は ⽴法不作為の違法があるとして、原告1人当たり110万円の国家賠償を求めるものです。
原告4人のうち2人、浅沼氏と盛本氏は最終的に無罪判決を受けましたが、繰り返し行った保釈請求は認められず長期間の身体拘束を強いられました。浅沼氏は、強制わいせつ罪の嫌疑で逮捕され、合計3ヵ月半にわたって勾留されました。盛本氏も、不同意わいせつ致傷事件で逮捕され、約4ヵ月にわたって勾留されました。浅沼氏は「僕は人生のうち約1年3ヶ月の貴重な時間を失いました。大学院に合格し、2024年4月から社会人院生になるはずでしたが、それも叶いませんでした」と記しています。
また柴田氏は、覚せい剤取締法違反で逮捕・起訴されました。勾留の間、2回にわたり保釈を求めましたが、認められませんでした。天野氏は、2018年に詐欺被疑事件で逮捕されて以来、現在まで、6年以上にわたり勾留され、かつ一貫して接見禁止とされています。
「この国では現代⽂明国の基本的なルールである『公正な裁判によって有罪を宣告されるまでは無罪の者として扱われる権利』が存在しないのです。(……)わたしたちは、⽇本の刑事司法における歪んだ時間軸を正常に戻したいと考えています」と、弁護団長の高野隆弁護士は述べています。なお今回の訴訟は、公共訴訟を中心としたソーシャルチェンジを促進するための専門家集団であるLEDGEの支援事件でもあります。
日本は市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)の締約国です。この規約では刑事事件の被疑者は「速やかに」裁判官の面前に連れて行かれるものとし、有罪とされるまでは無罪と推定されること、また原則として裁判前の拘束は認められないと定められています。
今回の訴訟は、日本初の「人質司法」の違法性を問う集団訴訟であり、被害者たちの勇気ある画期的な行動です。基本的人権侵害に終止符を打つための闘いにとり、転換点となるべきです。