日本の大手飲料メーカーであるキリンホールディングスがミャンマーから撤退する。
同社が2022年2月14日に撤退を表明するまで、合弁事業を組んでいる軍系企業ミャンマー・エコノミック・ホールディングス(MEHL)と事業解消に向けて一年ほど協議してきたが成果がなかった。キリンは6月までに撤退を完了させるようだ。
報道によると、キリンは2021年2月1日にクーデターが発生して数日後に事業解消に乗り出した際、ミャンマーからの撤退は望んでいなかった。しかし、MEHLがキリンに事前通告せず合弁事業の清算申し立てを行うなどのトラブルが発生したため、同社は撤退に踏み込んだ。
キリンは、ミャンマーブルワリーとマンダレーブルワリーの二つの合弁事業をMEHLと展開している。クーデター前からヒューマン・ライツ・ウォッチを含む人権団体らは、キリンとMEHLの合弁事業がミャンマー国軍の資金源になるリスクがあるため解消を求めてきた。ミャンマー軍によるラカイン州の少数民族ロヒンギャに対する人権侵害(人道に対する罪及びジェノサイドに当たる行為)の詳細が明るみになるにつれて、キリンに対する批判は高まった。クーデター以降、同社に対する圧力はより一層強まり、ミャンマーではミャンマーブルワリーの商品の不買運動(ボイコット)が発生した。
キリンはミャンマーから撤退する過程で、厳格な人権デューデリジェンスを継続的に実施すべきだ。その際には、保有している合弁事業の株を軍系企業などに売却すべきではない。また、同社は売却以外の選択肢を模索し、ミャンマー国軍に資金が流れないよう責任ある形で事業解消すべきだ。
横河ブリッジ、東京建物やフジタなどミャンマーに出資している外資系企業は、ミャンマー国軍の「財政的孤立」を呼びかけた国連が設置した事実調査団の提言に基づき、軍との関係を解消するべきだ。
また、日本政府は「ビジネスと人権に関する行動計画 (2020 – 2025)」に基づいて、日本企業が海外で事業を展開するにあたり人権侵害に加担しないよう責務を果たすべきだ。