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日本政府はミャンマー国軍の軍事訓練をやめるべき

防衛省は、戦闘訓練を含む留学プログラムを通じて、ミャンマー国軍の変化を促すと主張。しかし、この主張はあまりにも非現実的だ。

掲載: Myanmar Now
2021年3月27日にミャンマーで開催された軍隊記念日で行進するミャンマー国軍の軍人ら。 © AP通信

日本政府は、ミャンマー国軍が2021年2月1日にクーデターを起こした直後、いち早くクーデターを非難。

クーデター発生当日、日本政府は「重大な懸念」を表明し、軍により拘束されたウィンミン首相とアウン・サン・スー・チー国家最高顧問を含む関係者の解放を求めた。

迅速な非難声明に続き、日本政府は、既存のODA案件は継続したものの、人道支援を除く新規の政府開発援助(ODA)を停止。

そして2021年3月28日、防衛省統合幕僚長の山崎幸二氏は、他11か国と「ミャンマー国軍と関連する治安機関による非武装の民間人に対する軍事力の行使」を非難する共同声明を発表。さらに、2017年以降、棄権表明し続けてきたミャンマーに関する国連決議も、2021年6月の国連総会で賛成を表明。

以上を踏まえると、なぜ日本政府はいまだにミャンマー国軍を訓練しているのか不思議である。クーデター発生以来、ミャンマー国軍及び治安部隊は、1400人以上を殺害、1万人以上を拘束。また、少数民族地域での軍事的弾圧を強めてきた。

日本政府とミャンマー国軍の関係維持は、クーデターに対する非難と矛盾する他、国軍幹部を「人道に対する罪」を含む人権侵害で責任追及している国際社会の努力を弱体化させる。

2015年以来、ミャンマー国軍の士官候補生は、日本の防衛大学校に留学し、学問と軍事訓練の両方を受けてきた。同留学プログラムは、防衛省所管施設で外国人の訓練を可能にする自衛隊法100条に基づき、防衛大臣の許可を得て行われている。

2021年12月、防衛省の担当者は、ヒューマン・ライツ・ウォッチの問い合わせに対して、8名の士官候補生が防衛大学校に留学中であり、その内少なくとも2名はクーデター後に入学したことを認めた。なお、防衛大学校のカリキュラムには、戦闘や武器の使用方法の訓練などが含まれる。

また、ヒューマン・ライツ・ウォッチが入手した防衛省の資料によると、現在ミャンマー国軍の現役軍人2名が、陸上自衛隊教育訓練研究本部と航空自衛隊幹部学校で訓練を受けている。

前別の防衛省担当は、日本政府は同プログラムを通じて、士官候補生に自衛隊が厳しいシビリアンコントロールの下で活動している様子を見せ、ミャンマー国軍の変化を内部から促そうとしていると主張。しかし、防衛省は留学後の士官候補生のキャリア状況を把握していないため、実際に「変化」が実現できたかに関して、モニタリングや調査をしていない。

日本政府は、ミャンマー国軍による人権侵害や文民当局への干渉をしてきた歴史から、自らが望んでいる「変化」は望めないと認識すべきである。

防衛省の留学プログラムが開始して2年後の2017年8月、現「軍事政権」指導者であるミンアウンフライン最高司令官が率いるミャンマー国軍は、ラカイン州の少数民族ロヒンギャに対して、「人道に対する罪」や民族浄化(ジェノサイド)の可能性がある軍事作戦を展開し、74万人以上がバングラデシュに避難した。

ミャンマー国内に留まった少なくとも60万人のロヒンギャは、常に現地当局や治安部隊に監視のもと、キャンプや村などに閉じ込められている。この状況は、アパルトヘイトにおける「人道に対する罪」に相当する。

また、ミャンマー国軍は2017年以前から、超法規的処刑、レイプ、無差別爆撃、拷問、放火などを含む人権侵害を、長年にわたり処罰を受けずに行ってきた。

そして、防衛省による訓練が始まり6年が経つが、現在ミャンマーは国軍によるクーデターにより混乱状態に陥っている。

日本政府は、同盟国であるニュージーランドやオーストラリアのように、直ちにミャンマーとの防衛関係を絶ち、同プログラムを停止するべきである。防衛関係の維持は、日本がミャンマー国軍による残虐行為に加担するリスクを高める。

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