同性同士であるから結婚できないことは違憲とする判決を読み上げた札幌地裁の武部知子裁判長の目には涙が浮かんでいた。
裁判所がレズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー(LGBT)の人びとの尊厳について、これほど明確に判示したことは、日本社会にとって重要かつ感情的な瞬間でした。婚姻に伴う法的利益を同性カップルから奪う現行法の状況は「合理的根拠を欠く差別取扱い」とするこの判決は、婚姻の平等に向けた長年の闘いにとって画期的です。そして同時に、日本政府が国民の意見に耳を傾け、かつ、他の人権尊重国に追いつく火急の必要性も浮き彫りにしています。
日本では近年、LGBTの平等に対する国民の支持が高まりつつあります。たとえばマスコミやテレビがゲイ、トランスジェンダーの人たちを嘲笑したときなどには、広く抗議が起こることもめずらしくなくなりました。2020年の全国世論調査では実に約88%が「性的マイノリティに対するいじめや差別を禁止する法律・条例」に「賛成・やや賛成」し、2018年の調査では同性婚に賛成している人が80%近くとなっています。法的拘束力はないものの、これまでに80近い自治体が同性パートナーシップを認定する制度を導入しています。国内外の100を超える市民団体は今年、LGBTの人びとを差別から守る法律を導入するよう、菅総理大臣に書簡で求めました。
日本政府は、性的指向及び性自認に基づく暴力や差別の撤廃を求める2011年と2014年の人権理事会決議に賛成票を投じるなど、国連でリーダーシップを発揮してきています。一方日本国内では、LGBTの人びとが依然として強い社会的圧力に直面しています。日本はG7諸国のなかで同性パートナーの法的地位を認めていない唯一の国です。
17日に言い渡された札幌地裁の判決は、全国5か所で起こされた同様の訴訟の初判決であり、今後さらに裁判所の判断が続く見込みです。そして、国会が同性婚を認める法改正を行わなくてはならないか否か、そして最終的には最高裁が判断することになります。それには数年かかります。しかし今回の画期的な判決は、婚姻の平等をすでに支持している日本の世論をさらに後押しするでしょう。こうした世論の高まりは、最高裁が国民の声を無視することを困難にするにちがいありません。