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新型コロナウイルス 経済的権利に対する重大なリスク

各国政府に関する質問・回答・提言

Daily wage laborers and people without homes wait to receive free food during an extended nationwide lockdown to slow the spread of Covid-19 in New Delhi, India, April 28, 2020. © 2020 Danish Siddiqui/Reuters

(ニューヨーク)― ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日、経済的・社会的支援に関するQ&A(よくある質問と回答)を発表。この中で、新型コロナウイルス感染症のパンデミックは長期間にわたり経済的・社会的影響を及ぼし、危機以前からすでに経済的・社会的にぜい弱であった人びとに対し、かたよった損害を与える可能性が高いことを指摘した。深刻な不平等がさらに拡大するのを防ぐため、各国政府は短期・中期・長期的なコロナ危機をめぐる経済対策の中心に人権を据えるべきだ。

文書「新型コロナウイルス感染症のパンデミック中およびその後の経済的・社会的権利の保護:経済的・社会的支援に関する質問と回答」は、国際法のもと、数ある人権基準の中でも適切な生活水準への権利を保障する各国政府の義務について指摘した文書。この義務が新型コロナウイルス感染症をめぐる経済対策の中核をなすべきだ。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、各国政府が今回のパンデミックにどのように対応したかを調査・検証した。その分析に基づいて、本文書は、パンデミックの封じ込め対策の経済的影響がもたらす人権へのインパクトおよびリスクについて、各国政府や金融機関がこれを阻止・防止・軽減するための提言およびガイドラインを提供するものだ。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの貧困・不平等担当上級調査員のレナ・シメットは、「各国政府は今回の予期しない経済への悪影響を軽減するために重要な措置を講じてきたが、その多くはもっともリスクにさらされている人びとを十分または適切に保護していない」と述べる。「大規模な救済プログラムにもかかわらず、多くの人が貧困状態にあったり、最低限のニーズを満たせないままであり、こうした支援から除外されている層も一部ある。」

支援は、新型コロナウイルス感染症ゆえに、経済的・社会的リスクにもっともさらされている人びとを対象とすべきだ。しかし一部の国では、特定の地域や個人の滞在資格、または公式経済に結びつけることで、一定の層のみに援助を提供する政策を採用している。そのようなやり方で多くの人が取り残されており、その多くは女性だ。結果、医療サービスや社会的保護へのアクセスが限定的になり、貧困状態に陥るリスクの一因を生み出している。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、短期的・中期的・長期的な経済的・社会的支援に関して提言した。短期的な支援としては、既存または新たな社会的保護プログラムの拡大、家賃および住宅ローン支払いの延期、滞納による立退きの一時停止、家賃・賃貸料の安定化または削減、および電気・ガス・水道代支払いの一時停止、債権回収の中断といった措置の導入が挙げられる。各国政府はまた、新型コロナウイルス感染症用に開発された検査・治療またはワクチンを手頃な価格で誰もが利用できるようにする措置を講じる必要がある。

中長期的には、弱者への打撃となるような緊縮財政を打ち出すのではなく、経済的・社会的権利の保護により多くの予算を割くべきだ。 緊急支援プログラムを無期限で継続したり、普遍的にすべての人が対象となるより強力な社会的保護システムを構築するかたちも考えられよう。

パンデミックの経済的悪影響を和らげるには民間部門への財政支援が欠かせないが、ヒューマン・ライツ・ウォッチはその資金を無駄にしないために監視規定を含めるよう求める。緊急支出はその緊急性と規模の大きさから、腐敗の対象になったり、誤用されやすい。既存の監視システムでは緊急事態に対応しきれなかったり、緊急事態ゆえに監視が妨げたりする可能性は高く、労働者を支援する仕組みであるにもかかわらず、上部で資金を自らの利に悪用する動きがでる可能性がある。

同様に、世界銀行国際通貨基金といった国際金融機関からの資金提供および支援は、リソースが少ない国々の生活と経済を保護するために不可欠だが、非常事態対策でも透明性と説明責任の確保が必要だ。人権状況が芳しくない国、企業、銀行に財政支援が行われ、それがもっとも必要としている人びとの手に届かないのではないかという懸念が生じている。

新型コロナウイルス感染症のパンデミックが露呈し、さらに悪化させた広範な経済的不平等に取り組むには、公衆衛生ケア、社会的保護、インフラへの長期的な投資が求められる。 そのような再生計画では、パンデミックの間に一部の集団がその他の集団よりも多くの被害を被ったやり方を再検討し、経済回復の優先、そもそもの格差をもたらした不公平を是正しなければならない。

シメット上級調査員は、「非常に多くの人びとが貧困に陥り、飢餓と長引く失業に直面するかもしれない非常に大きな危機が迫っている」と指摘する。「各国政府が効果的かつ長期の経済的・社会的支援を提供しない限り、パンデミックが経済的な不平等をさらに拡大し、定着させる恐れがある。」

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