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東京新聞・中日新聞 2020年6月12日

来月二十三日で、延期された東京五輪まで一年となる。これからまた日本のスポーツ界に世界の注目が集まるだろう。ぜひとも改革が必要なのが、スポーツにおける「子どもの虐待」問題だ。

ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)が今年行ったアンケートの結果わかったのは、スポーツにおける体罰が今も日本で蔓延している実態だ。高校球児だった男性(23)は、監督から「あごを殴られ、口の中が血だらけになりました」と証言しつつ、野球部ではよくあることだったと語った。暴力は、一種の指導方法として日本のスポーツ界に深く根付いたままだ。指導者や保護者、さらには選手の間にすら、スポーツにおける体罰には意味があるという誤った考えが蔓延している。そして結果的に、子どもたちが苦しみ続けている。

世界では、スポーツにおける虐待に対処する「セーフスポーツ」運動が高まりつつある。日本でも、二〇一二年にバスケットボール部の男子生徒が自殺した事件などをきっかけに一定の改革が進んだが、極めて不十分と言わざるをえない。

五輪延期で時間的猶予が与えられた日本には、トップレベルの制度を設けるチャンスが訪れたともいえる。虐待を防ぎ、加害者の責任を追及する制度の導入、独立組織の設立など大胆な改革を行い、五輪のレガシー(遺産)とすべきだ。未来の子どもたちのために。

(HRW日本代表)

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