(ジュネーブ)― 国連人権理事会は、イエメンの全内戦当事者による人権侵害に関し、独立した国際調査委員会を設置すべきであると、ヒューマン・ライツ・ウォッチほか61の国・地域・国際NGOが、人権理事会加盟国へ宛てた書簡内で本日述べた。
内戦当事者は引き続き、国際人道法および国際人権法の重大な違反や侵害を犯している。イエメンでは世界最大級の人道危機が進行中で、少なくとも700万人の人びとが飢饉に瀕し、数十万人がコレラに苦しんでいる。イエメン政府とそれを支援するサウジアラビア主導の有志連合軍は、自軍による人権侵害の中立かつ透明な捜査をこれまでしていない。
ヒューマン・ライツ・ウォッチのジュネーブ代表ジョン・フィッシャーは、「イエメンでの人権侵害に対する国際的な調査を支持する声が、最高潮に達した」と述べる。「国連人権理事会の加盟国は、自らのマンデートに従ってこれらの呼びかけに耳を傾け、イエメン内戦の特徴となっている不処罰を排除するための体制を整えなくてはならない。」
国連人権高等弁務官、国連人道問題調整事務所所長、および安全保障理事会のイエメン担当専門家パネルも、イエメンでの人権侵害に関する国際調査を求めている。フーシ派の部隊とイエメン政府双方の支配下にある地域から、数十のイエメン団体も呼びかけに加わった。
国連人権事務所は、2015年3月以来、内戦で少なくとも5,110人の一般市民が犠牲になり、8,191人が負傷したことを具体的に認定。しかし、「全体数はおそらくはるかに多い」と考えている。
2015年3月からサウジ主導の連合軍は違法な空爆を多数繰り返しており、その一部は戦争犯罪に該当する可能性がある。一方、フーシ派の部隊もタイズやアデンといった街の人口密集地域にロケット弾を無差別に発射しており、これも戦争犯罪に該当する可能性がある。双方ともイエメン全土で、イエメン人活動家をはじめとする人びとを嫌がらせや恣意的拘禁、強制失踪の対象にしており、「行方不明」者の数が増加している。両当事者は、紛争終了後も長きにわたり一般市民を危険にさらす可能性から広く禁じられている武器を使用しており、人道支援も妨害してきた。
2015年と2016年に人権理事会は、イエメンでの人権侵害に対する国際的な調査委員会を設置しなかった。代わりに支持したのは2年以上にわたるプロセスで、これまでイエメンの人権侵害の重大性に対処するのに必要な、独立した、公正かつ透明な捜査を提供できずにいる。書簡に署名した57の団体は、人権理事会に対し、独立した国際調査委員会の設置を要請。事実の確立および現状の把握、証拠の収集および保存、長期的な責任追及の実現を見据えた人権侵害疑惑をめぐる責任の所在特定のためのマンデートを、調査委に付与するよう併せて提言している。
フィッシャー ジュネーブ代表は、「人権理事会加盟国は、サウジ主導の連合軍からの圧力に過去2回弱腰となり、くり返される戦争犯罪と世界最大の人道危機を眼前にしながら、原則を貫くことはなかった」と指摘する。「今年9月に各国政府は、政治的圧力に屈することなく、イエメンの人びとを最善のかたちで支援する方法で応えなくてはならない。そして加盟各国は、内戦の当事者に気兼ねすることなく責任追及を促進することにより、自らのマンデートに忠実であるべきだ。」