(バンコク)― ビルマ政府は、シャン州北部でタアン民族解放軍(TNLA)が開催した公開イベントのニュース取材に訪れた記者3人の起訴を直ちに取り下げるべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。
2017年6月26日、ビルマ軍はビルマ民主の声(DVB)のエイナイとピャエポンナイン両記者、およびイラワディ誌のテインゾー(ラウィウェン)記者を逮捕した。3人は国連の国際薬物乱用・密輸防止デーを記念するTNLAの薬物焼却行事の取材を終えて帰るところ、車を停止させられた。地元メディアによると、6月28日に3人全員が、植民地時代に制定された1908年の非合法結社法第17条(1)違反で起訴された。シャン州のスィポー刑務所に拘束されており、次回公判での出廷は7月11日の予定だ。
「ビルマ当局が、取材をしていただけの記者を起訴しているという事実にはぞっとさせられる」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局局長代理のフィル・ロバートソンは述べた。「ビルマ政府には、同じような根拠の疑わしい容疑で拘束経験のある元政治囚が多く存在する。起訴を直ちに取り下げ、3人を釈放すべきだ。」
国軍はほぼ3日間、3人を起訴しないまま拘禁したが、その所在を明らかにしなかった。この他に4人が逮捕され、現在も身柄を拘束されていると伝えられる。
非合法結社法第17条(1)は「非合法結社の構成員であるか、そうした結社の会合に参加するか、そうした結社のために寄付を行い、受け取り、または求めるか、何らかの形でそうした結社の活動を助けた」者に最長3年の刑を定めている。定義のあいまいなこの規定がこれまで数十年にわたり、反体制武装組織との接触を疑われた人びとを処罰するために日常的に使われている。
ビルマ中央政府と数十年間戦闘状態にある少数民族武装組織は十数団体を数えるが、TNLAはその1つであり、ビルマ当局から「非合法武装組織」に指定されている。TNLAは2015年10月に署名された全国平和協定を批准していないが、TNLA幹部はビルマ中央政府が2017年5月に首都ネイピドーで開いた第2回「パンロン平和会議」には参加している。
武装組織に関するニュースの取材をしていた記者を逮捕したことは、ビルマの報道の自由を大きく揺るがすものであると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘した。政府が国家安全保障を理由に報道規制を行うときには、正当な目的への厳密な必要性が不可欠であり、過度に広範なものであってはならない。報道規制は正当な公的関心に属し、国家安全保障を脅かすことのない情報の抑圧あるいは公開留保のため、またはそうした情報を報道するジャーナリストの訴追に用いられてはならない。
政府がこの責任を果たすためには、ジャーナリストが逮捕や嫌がらせの恐怖を感じることなく、政府や軍と対立する人びとも含めた多様な人びとに話を聞き、直接取材することができなければならない。
今回の3記者の逮捕は、ビルマのニュースメディア法の規定に抵触するように見られる、とヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘した。2015年6月に施行された同法第7条(a)は、「戦争が勃発する、または紛争や暴動、デモが発生する」地域での取材について、ジャーナリストは「治安関連の機関による拘束、あるいは当人の所持品の押収または破壊から免れるものとする」と定めている。
「ビルマ国軍は非合法結社法を使って国内ニュースメディアを攻撃している」と、前出のロバートソン局長代理は述べた。「同法17条(1)による起訴はすべて取り下げるべきであり、条文自体は廃止すべきだ。そうすることでジャーナリストは、国内の民族紛争を正確にカバーすることができるようになる。」