(ニューヨーク、2016年12月23日) - 国連安全保障理事会が2016年12月23日、南スーダンに武器の禁輸と同国のリーダーたち3人に渡航禁止および資産凍結を科した決議を否決。これを受けて7つのNGOが共同で本日、深い遺憾の意を表明した。採択には9票が必要だったが、8カ国が棄権したため、賛成が7票とこれに届かず否決となった。
アフリカの権利団体「イナフ・プロジェクト」の創設者ジョン・プレンダーガスト(John Prendergast)代表は、「国連安保理はこの間、武器禁輸措置や重大な人権侵害の責任を負う指導者の一部に対する制裁措置の発動という警告を続けるにとどまっていたが、とうとう実行に移される時が来たと南スーダン国民は期待していた」と述べる。「本日の採決で、人びとがどれほどの失意にあるかは想像に余りある。」
本声明は、アムネスティ・インターナショナル、コントロール・アームズ、イナフ・プロジェクト、保護する責任のためのグローバルセンター、ヒューマニティ・ユナイテッド、ヒューマン・ライツ・ウォッチ、およびPAXが共同で発表したものだ。
アフリカ連合と国連の調査官らは、2013年12月15日に内戦が始まって以来起きている一般市民の殺害やレイプ、紛争当事者による子ども兵の強制動員といった戦争犯罪を調査・検証してきた。ここ数カ月のあいだに、以前は内戦の影響を受けていなかった地域でも、上層部による暴力の扇動やヘイトスピーチが拡大しており、一般市民が民族性を理由に標的となっている。
ヒューマン・ライツ・ウォッチの国連担当局長代理アクシャヤ・クマルは、「国連安保理にとって、この紛争の被害者である一般市民の側に立つと示すチャンスだった」と指摘する。「それなのにこの決議否決により、南スーダンの内戦当事者はさらなる武器の購入が許容された。その武器が一般市民に対して使われることになるだろう。」
特に憂慮されるべきは、事務総長やジェノサイド防止に関する顧問などの国連幹部の勧告を、国連安保理が一致して実行に移せなかったことだ。保護する責任のためのグローバルセンター代表シモン・アダムズ博士は、「切迫した保護の必要がある一般市民が国連安保理に見放される光景を、我々はまたも目の当たりにすることとなった」と述べる。「1月に新しい理事国を迎えることとなる安保理が、この取組みを復活させることを願うばかりだ。」
安保理理事国の一部は、キール大統領が今年12月に発表した包括的な国民対話の声明を、制裁決議を支持しない理由に挙げている。しかし、2015年8月の和平協定合意に至る過程でNGOや宗教指導者、女性の役割が極めて限定的だったことや、表現・集会の自由が厳しく規制されていることを鑑みれば、こうした政府の保証をそのまま素直に受け取るのは難しいと言わざるを得ない。
ヒューマン・ユナイテッドの副ディレクター、デイビッド・アブラモウィッツ(David Abramowitz)氏も、「メディアが政治情勢を報道できず、NGO活動家が安全を求めて隣国に脱出する国で、対話に参加できる人間など残されているのだろうか」と問う。「国際社会は、キール大統領の発表を鵜呑みにするのではなく、誰が国民和解の対話に参加し、誰がその進行役を務め、どのような安全確保が参加にあたって保障されるのかなど、数多くの質問をすべきだ。」
12月23日の否決をうけ、政府間開発機構(IGAD)はアフリカ連合や地域の国々とともに、国際法が定める犯罪やその他の重大な違反行為および人権侵害、そして南スーダンで犯されたこれらの罪の不処罰に終止符を打つために、より大きな役割を果たしていかなくてはならない。
アムネスティ・インターナショナルの東アフリカ・アフリカの角・グレートレイク地域担当局長ムトーニ・ワニエキ(Muthoni Wanyeki)氏も、「アフリカ諸国の指導者は、あらゆる方法を思い切り駆使して、速やかに行動すべきであり、残虐行為を止める検討を来年1月のアフリカ連合サミットまで後回しにするようなことがあってはならない」と述べる。
本NGO連合は国連安保理に対し、南スーダンにおける一般市民への人権侵害を阻止し、これ以上の犠牲を食い止め、かつ不処罰を止めるため能力の高い公正かつ独立したハイブリッド法廷を速やかに設置するため、アフリカ連合や地域の安全保障機構、政府間開発機構と協力する努力を強化するよう要請した。