(ニューヨーク)― 衛星写真と難民への聞き取りから、ビルマ・ラカイン州の村落での火災の責任は国軍側にあることが明らかになったと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。2016年10月9日以降に少なくとも建物1,500棟が焼失し、ロヒンギャ数万人が避難民化している。

October 9 – 10, 2016 October 14 – 15, 2016 October 14 – 22, 2016 October 22 – November 3, 2016 November 12 – 13, 2016 November 13 – 17, 2016 November 22 – 23, 2016 October 9 – 10, 2016 October 14 – 15, 2016 October 14 – 22, 2016 October 22 – November 3, 2016 November 12 – 13, 2016 November 13 – 17, 2016 November 22 – 23, 2016 Human Rights Watch identifed 1,500 buildings destroyed as of December 9, 2016. Arson Attacks on Villages in Rakhine State, Burma

軍と政府の当局者は人道機関、メディア、人権モニタリング機関に対し、ラカイン州マウンドー郡への接触を直ちに認めるべきだ。ビルマ政府は、放火は戦略の一環ではないと繰り返し述べ、ロヒンギャの村落の火災は過激派の仕業だとしてきた。

「新たな証拠により、ロヒンギャの過激派が自分たちの村落に火を放ったとのビルマ国軍と政府の主張は覆った」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチ・アジア局長のブラッド・アダムズは指摘する。「衛星写真と目撃証言は、国軍が建物を放火したことを明示している。」

マウンドー郡の村落を撮影した新たな衛星写真の分析で新たに4つのことが解明された。まず、ヒューマン・ライツ・ウォッチが特定した被災建物の総数は11月23日時点で1,500棟に上った。建物の一部が林の陰に隠れているため、実際の総数はこれを上回るだろう。

Burma Satellite Imagery Burma Satellite Imagery
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Left: Pre-destruction satellite image of Dar Gyi Zar village on 18 November 2016; Satellite Sensor: Deimos 2; Image.
Right: Post-destruction satellite image of Dar Gyi Zar village on 23 November 2016; Satellite Sensor: WorldView - 3; Image.

 

Before: © Deimos Imaging S.L.U. 2016 After: © Digital Globe 2016 – NextView

次に、時系列で捉えた火災のパターンから政府側の責任が示唆される。10月9日から14日にかけて、つまり最初に被災した3村落はいずれもタウンピョー地区の幹線道路に面しているが、11月12日から15日にかけての2度目のより大きな被害は、この道路のおよそ3~5km西に分布している。こうした被害の広がりは過激派や住民がでたらめに火を放ったのではなく、国軍部隊の西進に対応するものだ。

第3に、ヒューマン・ライツ・ウォッチの分析で、政府治安部隊がこの地域で何度も襲撃を受けたが、その後に3回にわたり建物が系統的に破壊されていることが明らかになった。これらは放火が報復措置であることを示唆している。襲撃が伝えられた数時間後に火災が起きるケースもあれば、1日か2日後に起きるケースもあった。たとえば11月12日朝には、プウィンピューチャウン村で起きた国軍と国境警備隊の合同部隊が襲撃されたが、それから4日間でこの村と近隣の5カ村の計800棟が火災に遭った。

最後に、衛星写真は、ワペイク村と直接隣り合う国境警地区支部1にビルマ治安部隊が駐留していることを明らかにした。この村は、1ヶ月のうちに3回に分けてほぼ全村が焼失した。過激派は10月9日朝に地区支部など治安部隊施設計3カ所を襲撃して9人の政府関係者を殺害。この2カ月間の暴力事件の発端となった。

ワペイク村で初めて火災が起きたのは10月9日午後早くで、国境警察地区支部が襲われてから数時間後のこと。ヒューマン・ライツ・ウォッチはここに軍の輸送車両が多数継続的に停車していること、また軍用ヘリコプターが定期的に発着していることも確認した。

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Burmese Security Forces near Wa Peik Village. 

©2016 Human Rights Watch

「ビルマ治安部隊が駐留・監視するなかで、過激派が1カ月にわたってワペイク村で建物300棟に放火したとは考えにくい」と、前出のアダムズ局長は指摘する。「今回の衛星写真にはビルマ政府当局者の姿がある。関与を否定し続ける自分たちの態度には信憑性がないことをもう認めるべきだ。」

さらにバングラデシュに逃れたロヒンギャ難民の目撃証言は、ビルマ軍の放火への関与を示していると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。対面で聞き取りを行った難民10人は、チェットヨーピン、ダージーザー、イェカットチャウングワソンの各村落区などでビルマ軍兵士による建物破壊と放火を目撃しており、その様子を詳しく述べた。

チェットヨーピン村落区のアブドゥルさん(23、仮名)は、国軍が村に入ってきた10月12日に村を逃れた。兵士は住民に銃を撃ち、ガソリンと携帯型ロケットランチャーで村に火をつけて回ったという。「軍が村に火を放ち、住民を狙って発砲するのを目撃しました。」

チョミさん(35、仮名)は11月13日、ダージーザー村落区にある自分の村に国軍が侵入して民家にロケットランチャーを打ち込み、火災を起こしたのを目撃したと語る。自宅が燃えているのが近くの畑から見えたので、妻と子ども3人と一帯を離れ、バングラデシュ側になんとかたどり着いたという。

アーメトさん(45、仮名)は11月半ば、イェカットチャウングワソン村落区にある自分の村に軍が侵入し、家の屋根にガソリンをまき、1軒ずつ火をつけて回ったと話す。

A family stands beside remains of a market which was set on fire, in Rohingya village outside Maungdaw, in Rakhine state, Myanmar on October 27, 2016. 

11月16日の記者会見で、ビルマ政府は軍用ヘリコプターで撮影したラカイン州北部の衛星写真を公表し、ヒューマン・ライツ・ウォッチが行った村落での建物の焼失に関する報告に反論した。しかし政府がワペイク、チェットヨーピン、ピャウンピット、ダージーザーの4村での火災による建造物破壊の規模と深刻さを控えめに述べることそのものが、ヒューマン・ライツ・ウォッチがワペイク、ダージーザー両村で確認し、明らかにした家屋の大規模な破壊を事実上裏付けている。

政府はダージーザー村が丸焼けになったことをヒューマン・ライツ・ウォッチが伝えたと述べるが、これは誤りである。この村はヒューマン・ライツ・ウォッチからの第一報には含まれていなかった。被害がその時点でこの村に及んでいなかったからだ。政府はこの村で30軒が破壊されたとの立場だが、その後撮影された衛星写真を分析したところ、被害規模は250軒を下らないことがわかった。

政府はまたダージーザー村近郊の村落(トゥウーラー、チェーカンピン、イェカットチャウングワソン、ミャウタウン、チャーグァンタウン、パインタウン、プウィンピューチャウンなど)で火災に遭った建物のヘリ撮影画像を公開していない。これらの村は軍用ヘリの飛行直前に焼き討ちに遭っている。ヒューマン・ライツ・ウォッチはこれらの村落の破壊状況を報告した。さらに環境監視衛星のセンサー群は11月15日の午後早くに、イェカットチャウングワソン村で複数の火災を検知している。これらの火災から発生した煙は、同日午後に地域の上空を飛行したヘリコプターからは当然見えたはずだ。

10月9日から現在に至るラカイン州での軍事作戦により、対象地域の住民は多大な被害を受けている。約3万人が避難民となったが、軍と政府は人道援助機関が避難民の数を確認し、そのニーズを同定する作業を妨害している。国際移住機関(IOM)によれば2万1千人がバングラデシュに脱出した

政府は、国連などの求めに応じ、ラカイン州北部全域に完全なかたちでの人道的アクセスを直ちに認めるべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。ビルマに影響力を持つ各国政府はビルマ国軍と政府に対して、直ちにアクセスを認めるよう強く働きかけるべきである。

12月1日に政府は、2017年1月31日までにラカイン州の情勢を調査し、報告する委員会の設置を発表した。しかし委員会の構成とマンデートを見ると、超法規的処刑や性暴力などの人権侵害の訴えに関する徹底した公平な調査の実施には重大な疑問符がつくと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。10月にラカイン州議会も情勢を調査する委員会を設置したものの、一部の委員によるロヒンギャへの差別発言により委員会の信頼性と客観性は損なわれている。したがって政府治安部隊が人権侵害を行ったとする訴えを、委員会側はこれまでのところ真剣に調査していない。

政府は国連に対して公平な調査の支援を要請すべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘した。

「アクセスも公平な情勢調査も認めないことは、重大なリスクをもつ人びとの支援にはならない。軍事作戦中にどのようなことが起きたとしても、政府には人道援助機関に対して、支援のために当該地域にアクセスすることを認める義務がある」と、アダムズ局長は述べている。