(ニューヨーク)― 高解像度の衛星写真の解析により、ビルマ・ラカイン州のロヒンギャの村落での、火災による大規模な建造物破壊が明らかになったと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。ビルマ政府は国連に対し、当該地域の村落での破壊報告に関する調査支援を直ちに要請すべきだ。
「今回の衛星写真でロヒンギャ村落の広範な破壊が確認され、更にその規模が当初の予想を上回ることも明らかになった」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長ブラッド・アダムズは述べた。「ビルマ当局は速やかに、国連支援のもと調査チームを編成し、被害者の正義と安全を確保する第一歩とすべきである。」
ヒューマン・ライツ・ウォッチは、マウンドー郡北部の3つの村で建造物430棟の焼失を確認。2016年10月22日、11月3日および10日のいずれも午前に撮影された高解像度の衛星写真の分析による。確認された建造物の破壊件数はピャウンピット(ンガーサーチュー)村で85棟、チェットヨーピン村で245棟、ワペイック(チェーカンピン)村で100棟。検討対象の村すべてで、破壊の痕跡は火災によるもの(大きな焼け跡、木の覆いの焼失)と一致した。木の覆いが厚いため、破壊された建物の実際数はこれを上回る可能性がある。
襲撃事件の直後、政府はマウンドーを「作戦地域」に指定し、襲撃犯と奪われた銃器を確保するためのローラー作戦を開始した。地元住民の移動の自由は大幅に制限され、その時に課された広範な夜間外出禁止令はいまだ続いている。
国連が支援する調査団は、死傷者を出した10月9日の国境警察襲撃事件と、事件後に政府治安部隊が超法規的処刑、性暴力、拷問、恣意的拘禁、焼き討ちなどの人権侵害を、マウンドー郡のロヒンギャの村落で行ったとのメディアや地元団体による報告の当否を確かめる必要があると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。
10月28日にロイター通信は、ビルマ軍兵士にレイプされたと訴える複数のロヒンギャ女性へのインタビューを発表した。政府はまた、ミャンマータイムズ紙に対し、ビルマ国軍兵士によるレイプの訴えを報じた編集者1人を解雇するように圧力をかけたと報じられている。政府がジャーナリストや人権団体による地域への立入を制限しているため、今なお公平な情報収集が行えずにいる。
11月3日にはマウンドー郡で国境警察拠点がふたたび襲撃され、警官1名が死亡したとも報道されている。
ビルマは国際法上の義務に従い、人権侵害行為の訴えに対して徹底的かつ迅速で公平な調査を行い、責任者を訴追し、人権侵害被害者に十分な補償を行わなければならない。こうした調査の基準になるのは、例えば国連の「超法規的・恣意的・即決処刑の調査及び効果的予防に関する原則」や国連の「調査委員会と実情調査ミッションに関する国連ガイダンス」である。ビルマがこれまでこうした調査を行ってこなかったことは、国連の支援の必要性を示すと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘した。
ロイター通信の報道によれば、国軍は文民政権による追加情報の提供の求めに応じていない。
「ビルマ国軍は独立したオブザーバーに対し、ロヒンギャが住む被害地域の立ち入りを認めようとしないだけでなく、自分たちの政府への状況報告すら行おうとしていない」と、前述のアダムズ局長は述べた。「当局は国連、メディア、人権モニタリング団体に対し、当該地域への妨害を受けない接触と、何が起きたか、そしてどのような措置が必要かを判断することを認めるべきである。」
政府は4つの村への単発的な食糧配給を、国連食糧計画(WFP)に対し最近一度だけ認めた。しかし人道援助団体は、包括的な接触を依然として禁じられており、すでに弱い立場に置かれた数万人がさらなるリスクに直面している。村人の大半はまったく支援を受けることができておらず、当該地域への人道アセスメントチームや人権団体の立ち入りは禁じられている。国連児童基金(UNICEF)の11月8日付の声明は、ラカイン州北部の子どもたちが極度の貧困と栄養失調状態にあることを指摘している。「子どもたちの未来は、医師や看護婦、教師など、栄養や衛生、教育にかかわるサービスを提供できる人びとから、支援を受けることができるかどうかにかかっている」と、この声明は述べている。
ビルマ政府は、被害地域全域への人道援助再開の公約を直ちに実行すべきだと、ヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘した。
「ビルマ政府と国軍は、弱い立場にある人びとへの人道的アクセスを直ちに認めるべきだ」と、アダムズ局長は述べた。「国連と関係国政府は当局に一層強く働きかけ、危機的状況が2ヶ月に及ぶなかで、被害地域全てに援助が届くよう求めるべきである。」