米連邦最高裁判所は10月28日、学校におけるトランスジェンダー生徒の権利保障につながる可能性のある事案について、来年6月までに審理すると発表しました。
この事案の主人公はガビン・グリムくん、バージニア州に住む17歳のトランスジェンダー少年です。グリムくんが在学中に性転換したとき、学校は男子用洗面所の使用を認めました。ところがそれを知った一部の保護者や地元住民が異議を唱えたことから、グロスター郡教育委員会は、トランスジェンダー少年による男子用施設へのアクセスを禁じる方針を打ち出したのです。そこでグリムくんは裁判に訴え、性自認に基づいた洗面所の使用を認めるよう求めました。
グリムくんも指摘したように、トランスジェンダー少年をそうではない少年と同じように扱わないのは、1972年の教育改正法第9編(Title IX)が禁ずる性差別の一形態に該当するとの立場を米教育省はとっています。連邦第4巡回区控訴裁判所はグリムくん勝訴の判断を下し、裁判所および学校は、米教育省による第9編の解釈に従うべきとしました。これをうけて、現在グロスター郡教育委員会が、連邦最高裁にこの事案を上訴しているのです。
しかしこの事案の裁判中でも、すべての生徒に安全かつアクセス可能な施設の使用を保障する反差別方針を、各学校が導入することをとめるものは何もありません。ヒューマン・ライツ・ウォッチは近ごろ、性自認と一致した洗面所やロッカー室の使用をトランスジェンダーの若者に認めないことが、安全や健康、プライバシー、学ぶ力に悪影響を及ぼしかねない実態について調査・検証しました。政治的に加熱した状態に関係なく、インクルーシブな方針の導入に成功し、生徒の性自認を尊重して、若者の安全と健康を分け隔てなく確保している学校も多く存在します。
そして今、すべての視線が最高裁に注がれているのです。しかし、最高裁の判断がどうであれ、各学校がそれぞれ大きな変革を生み出せることも覚えておかなくてはなりません。地元地域のあらゆる人びとと同様、トランスジェンダーの生徒も尊重・保護することでそれは実現できるのです。