(ニューヨーク)- コンゴ民主共和国政府は、ヒューマン・ライツ・ウォッチの上級調査員1人が国内で調査を継続することを拒否した、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。弾圧が強まるなかで、アイダ・ソイヤー上級調査員の労働許可証が取り消されたのは、人権状況を明らかにする動きを抑圧し続けてきた同国政府の新たな試みといえる。
ヒューマン・ライツ・ウォッチ代表のケネス・ロスは、「労働許可の問題と装って、経験豊富なヒューマン・ライツ・ウォッチ調査員の活動を禁じたコンゴ民主共和国政府の真意は、誰の目にも明らかだ」と指摘する。「これは、ソイヤー調査員を国外に強制退去させただけの問題ではない。大統領任期の制限を支持する人びとへの、政府の非情な弾圧をレポートする動きに圧力をかけるという、恥知らずな試みだ。」
出入国管理局は、2016年8月9日に期限が切れるソイヤー調査員の労働許可を、今年5月に3年の期限で更新していた。しかし、7月3日に海外から戻って、首都キンシャサのヌジリ国際空港から入国しようとした際に、入管が予期せぬかたちで説明もなしに許可証の無効を宣告。これを受けてヒューマン・ライツ・ウォッチは、入管当局に対し書面で、通常と異なる措置への懸念を表明したうえで、許可証の再有効化を求めたところ、当局はソイヤー調査員に労働許可証の再申請をするよう伝えてきた。
しかし、8月8日に入管は申請が却下された旨とともに、48時間以内の出国をソイヤー調査員に通達。却下の理由は明らかにされなかった。本人は指定された時間内にコンゴ民主共和国を出国することになる。
ヒューマン・ライツ・ウォッチは25年以上にわたり、コンゴ民主共和国の人権状況に関する調査を行ってきた独立した国際団体だ。ソイヤー調査員は2008年1月以来同国に住み、ヒューマン・ライツ・ウォッチの調査員として活動してきた。政府からM23および神の抵抗軍(LRA)といった非政府系武装組織によるものまで、多岐にわたる人権問題を調査し、アドボカシー活動も行なってきた。
2015年1月以来、現職ジョゼフ・カビラ大統領の任期を延長しようとする動きに反対したり、異を唱える人びとに対し、政府が非情な一斉取締りを加えてきた。コンゴ民主共和国憲法は任期を2期までと定めており、このままだとカビラ大統領の任期は12月19日で終了することとなる。しかし大統領選挙の準備は立ち往生しており、政府高官は技術上、ロジスティック上、財政上の問題で年末までの選挙実施は不可能であるとしている。
これまでに、政府の治安部隊は恣意的に野党指導者や活動家を多数逮捕したり、平和的なデモ参加者に発砲したり、また野党勢力の抗議集会も禁じてきた。更に、報道機関が閉鎖されたり、平和的な民主派の青年活動家たちがテロ行為の首謀で訴追され、野党の指導者たちが国内を自由に移動することも阻止されてきた。少なくとも14人の活動家および野党政治家が、ねつ造された罪状で投獄されたままだ。
政府は、政府によるこれら人権侵害疑惑について信頼に足る中立的な捜査を行い、加害者に対してはその地位や階級に関係なく、責任を問わなければならない。
政府はここ数カ月の間、国際機関関係者や人権状況を監視する人びとを強制的に退去させ、政府批判に対する弾圧を強めている。2014年10月には、同国にある国連合同人権事務所のスコット・キャンベル事務局長が国外追放された。キンサシャでの警察の取締りにおける略式処刑と強制失踪についての報告書を発表した後のことだった。コンゴリサーチグループ (Congo Research Group) のジェイソン・スターンズ代表も、コンゴ東部ベニ地域での虐殺に関する報告書を発表した後の2016年4月に、国外退去を強制された。7月には国際団体グローバル・ウィットネスの調査員2人が、森林伐採の実態についての調査中に当局により国外追放された。
ロス代表は、「活動家を投獄し、国際的な人権監視グループを国から追放するのは、人権侵害に手を染める政府の常套手段である」と述べる。「コンゴ民主共和国政府は、すべての政治囚を釈放し、ソイヤー調査員を含む国内外の人権活動家による重要な活動の継続を許可し、人権状況の改善に真摯に取り組むべきだ。」