8月にイラク北部全域をイスラミックステート(以下IS)が一掃したとき、「ルナ」はとらわれの身となりました。その後は4回売られて、そのたびに「所有者」からレイプされました。彼女は同じような運命をたどった何百人ものヤジディ教徒女性・少女のひとりです。
彼女たちの一部は最終的には脱出して、イラクのクルド人自治区に避難していた自分たちのコミュニティに戻ることができました。しかし、彼女たちの試練はそこで終わりではなかったのです。
私と仲間の調査員が聞き取り調査をしたレイプの被害者たちは、ISによる組織的なレイプや性奴隷制、強制結婚について証言しました。その誰もがこうした仕打ちから立ち直るための医療やカウンセリングなど、支援サービスを緊急に必要としていました。
クルド人自治政府の高官はその求めを真剣に受け止めましたが、同時に未婚女性および少女の一部を、科学捜査だとしてレイプ後「処女検査」の対象にしました。それが、人権侵害かつ不正確な検査であるにもかかわらず…。ISによる犯罪の証拠収集を託された委員会を率いるアイマン・ベイマニー(Ayman Bamerny)判事は、処女検査結果はイラク法廷でレイプの証拠として扱われていると述べています。
今週になってアイマン・ベイマニー判事は私の同僚に、委員会が「処女検査」実施の指示をやめたと伝えてきました。ドホーク県保健局は、人権とベストプラクティス(最善の方法)に合致する国連勧告を基にした、性暴力に関する新たな医療審査報告制度を採用したのです。ドホーク県の首席判事も、法的手続きのためにこれを承認することに同意しているそうです。
世界保健機関(WHO)はきっぱり「処女検査」に科学的根拠なしと述べています。こうした検査は、未経験なら処女膜は無傷で最初の性交で出血するものという、広く信じられている不正確な情報を基にしています。検査自体が不正確なのですから、女性や少女がレイプの被害を受けたか否かを確認するのに、全く意味をなさないのです。
今回の決定は「ルナ」のような女性や少女たちにとって重要な第一歩といえます。これからは、法による裁きを求めるレイプ被害者たちは、女性の権利がもっと深く尊重され、レイプ被害者たちによりよい支援を提供すると掲げた捜査を期待できるからです。
関係の政府当局者はレイプ被害者たちのため、適切な法科学捜査に動き出しました。この動きは、性暴力の被害を受けたイラクの全女性・少女に対する、尊厳・尊重をもった対応に広がっていくべきです。