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ベトナム:国の指導者を決める選挙の実施を

ドナー国・機関は一党支配の廃止と多党制の確立を求めるべき

Vietnam's Communist Party's Politburo Member and Chairman of the Propaganda and Education Committee Dinh The Huynh speaks at a news conference of the 12th National Congress of the Party at the National Convention Center in Hanoi on January 18, 2016. © 2016 Reuters

(ニューヨーク)— ベトナム共産党はまもなく第12回全国代表大会を開催するが、国のリーダーは自由で公正な選挙で選ぶ、とその際に発表すべきだ、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。ベトナムのドナー国は、ビルマやカンボジアなどに対しては自由で公正な選挙の実施を何度も求めてきた。ドナー国はベトナムに対しても、多党制選挙と一党支配の廃止を公に求めるべきである。

ベトナム共産党大会は1月21日〜28日にハノイで開催され、1,510人の代表党員が新中央執行委員会を選出する。この委員会は、政府内各レベルでの指導部を選ぶこととなる。形式的には、国会がその後正式に、国家主席と首相を選出する仕組みだ。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局局長ブラッド・アダムスは、「9,000万人超のベトナム国民の命運が、共産党党員の一部の人びとの手中にあるべきではない」と指摘する。「ベトナムは今度こそ国際的な法的コミットメントに従うべきだ。そして、これまで続いた共産党による選出はやめて、国民による選挙を実施すべきだ。」

ベトナムが1982年に批准した市民的及び政治的権利に関する国際規約(ICCPR、自由権規約)の第25条は、国民は「直接に、または自由に選んだ代表者を通じて、政治に参与する」権利、および「普通かつ平等の選挙権に基づき秘密投票により行われ、選挙人の意思の自由な表明を保障する真正な定期的選挙において、投票し及び選挙される」権利を有すると謳っている。

共産党は5年ごとに国会議員選挙を実施している。真の野党は、組織することも出馬することもできない。共産党は選挙管理の一切を掌握しており、体裁を保つだけに党外の候補者が容認されているのが現実だ。

ベトナム憲法第4条は、共産党による一党支配を公式に認めるもので、ベトナム共産党は「労働者階級の先導隊であると同時に働く人民およびベトナム民族の先導隊であり、マルクス=レーニン主義およびホーチミン思想を思想的基礎として採用し、労働者階級、働く人民およびすべての民族の利益を忠実に代表する国家と社会の指導勢力である」と謳う。本条項を改正し、多党制を認めようとした2013年の試みは失敗したのみならず、一党支配体制を強固にする重要な変更が加えられた。これにより、多元的で自由な選挙に参加する権利を行使する法的余地は更に狭まった。

一党支配体制によって、共産党は事実上の政府として機能しており、刑法をはじめとする国内法の広範であいまいな一連の条項によって、民主主義を求める人びとを沈黙させ拘束している。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは全国代表大会に対し、現在の悲惨な人権状況を改善すると約束するよう強く求めている。平和的な手段で政府を批判しただけの人物を政治囚にできる現在の国内法の改正などだ。ベトナムは2015年11月、刑法の改正法案を可決。これにはブロガーや人権活動家を沈黙させることを目的した条項がある。同月チャン・ダイ・クアン公安大臣は国会に対し、2012年6月〜2015年11月のあいだに、国家安全関連容疑で2,680人を逮捕し、民主主義と人権を促進する60以上の団体を標的にしたと報告している。

活動家の逮捕は続いている。著名な人権活動家のグエン・ヴァン・ダイ(Nguyen Van Dai)氏が2015年12月に逮捕の末、「国家に背くプロパガンダ行為」の罪で訴追された。仲間の活動家Le Thu Ha氏も同日に逮捕されたが、罪状ははっきりしていない。グエン・ヴァン・ダイ(46歳)氏は人権弁護士で、2006年にVietnam Independent Unionや民主化主義の8406 Blocなど、多くの人権団体の創設を支援していた。2007年3月に逮捕され、5年の刑期を言い渡されている。2007年11月、控訴裁判所は刑期を4年に減刑。氏は同年、名誉あるヘルマン・ハメット賞を受賞している。介入的な警察の監視や嫌がらせにもかかわらず、2013年4月には「ベトナム憲法および国際条約の数々が謳う人権を擁護」し、「ベトナムのための民主的・進歩的・市民的で公正な社会の建設を促進」するために、「民主主義のための同胞団」(Brotherhood for Democracy)の創設を支援。2014年5月に仲間の活動家とカフェで話をしていた氏は、複数の不審者に襲われ負傷した。

今回の氏の逮捕の10日前にゲアン省で、グエン・ヴァン・ダイ氏とほか3人の活動家は手術用マスクで顔を隠した平服の男約20人に襲われ、暴行された。その日の暴行事件前、氏は憲法と人権について講演していた。逮捕の日の朝は、政府と二国間人権対話をするためにベトナムを訪問していたEU代表団の関係者に面会する予定だった。

前出のアダムス局長は、「グエン・ヴァン・ダイ氏などの人権活動家の今回の逮捕は、改革がいまだ空虚なものであることを示す」と指摘する。「ベトナムは、民主主義を求める表現の自由や願望を窒息させる、一党支配というぬかるみにはまったままでいる。今回の全国代表大会は、そこから抜け出して近代化の準備ができているとベトナム国民に示す絶好の機会だ。共産党の利益を追求するだけではなく、国際的な人権コミットメントにそった国内法を確立する時がきている。」

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