7月30日、パレスチナ・ガザ地区のジャバリヤ難民キャンプで、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の学校が攻撃されました。少なくとも15人が死亡し、多数が負傷しました。学校に避難していた女性や子どもも被害に遭っています。国連が運営する学校が攻撃されたのは今週2回目です。しかし今週になって初めてガザ地区の学校が攻撃されたわけでも、学校に避難していた子どもたちが犠牲になったわけでもありません。
学校への攻撃は、避難する子どもと大人の命を危険にさらすだけではありません。紛争後も長期にわたり、子どもに甚大な被害を与えるのです。
イスラエル軍は「ジャバリヤ難民キャンプ内のUNRWAの学校の付近から、武装勢力がイスラエル国防軍兵士に迫撃砲を発射した」ので、「[イスラエル軍]兵士は反撃として、砲弾の発射元に攻撃を行った」と説明しています。当時この学校には、自宅から離れろとのイスラエル軍の警告を受けとった難民3,300人が避難していました。UNRWAによれば、イスラエル軍は施設を3度攻撃しています。
イスラエル軍は7月27日、ガザ北東部のベイト・ハヌンで、国連の小学校が置かれた地域にいたパレスチナの兵士に対し、7月24日に迫撃砲を発射した際に「迫撃砲のうち1発が校庭に落ちたが、当時無人だった」と発表しました。報道によれば、この攻撃で少なくとも15人が亡くなり、それより多くの人びとが負傷しています。
2008~09年のガザ攻撃の際、イスラエル軍は国連が運営する複数の学校を何度も攻撃しました。これらは武力紛争法に基づいた正当性が認められないものでした。燃焼性の高い白リン弾や、誘導型ミサイルでの攻撃も行われていました。イスラエルは国連に対し、2008~09年の戦闘で破壊したガザ地区の国連施設(学校を含む)の損害賠償として、1,050万ドル(10億5千万円)を支払っています。
ガザのパレスチナ武装組織も、学校の民間施設としての性格を損なう行動に出ています。7月16日、UNRWA職員は運営する学校のうち1校で、無人の施設内にロケット弾20発を発見しました。UNRWAは、正体不明のパレスチナ武装組織による国連施設の軍事利用を非難しました。また7月22日には、別の学校でロケット弾を発見したと発表しました。この学校に人はいなかったものの、砲撃を避けてパレスチナ難民が身を寄せる学校から遠くない場所にありました。7月29日、UNRWAは、定期巡回をしていたところ、ガザ中部の学校でロケット弾を発見したと発表しました。3校目となるこの学校に人はおらず、避難所として使われてはいませんでした。イスラエルは、攻撃した2校に武器が保管されていたとの主張を行っていません。
学校はその性格上、民間施設であり、軍事目的に使用されていない限り、攻撃が禁じられています。正当な軍事目標ではない学校施設を意図的に攻撃することは、戦争犯罪にあたります。
学校は、基地、兵舎、砲撃陣地、拘禁施設、武器や弾薬の保管庫などのかたちで軍事利用されることにより、正当な攻撃目標になる可能性があります。こうなった場合、生徒や教師は命の危険にさらされます。国連安全保障理事会は最近、各国に対して、「適用可能性のある国際法の規定に反し、政府軍や武装非国家組織が学校を使用しないよう、具体的な措置」をとることを促しています。
ガザでの戦闘にかかわる両勢力は、学校・大学の軍事目的使用を防止する指針である「ルーソン・ガイドライン」の存在に十分に留意すべきです。このガイドラインは、全世界の生徒と教師を学校の軍事利用から保護するとともに、学校を軍事ドクトリンや軍事戦略の対象から明示的に保護するために策定されました。ガイドラインは、世界の軍事専門家と国際人道法専門家も参加して作成されたものであり、武力紛争法、国際人権法、および優れた実践例が定める既存の義務に根拠を置いています。
ガザの学校攻撃で被害を受けた子どもたちはもちろん、その他の地域で自分たちが通う学校が攻撃された子どもたちについても、心と身体に受けた被害を回復するためには、さまざまな人が協力して行う、継続的な取り組みが必要となります。恒久的な平和と安全の実現を望む人びとは、安全な学校と優れた教育機会を域内のすべての子どもたちに提供することなくしては、その実現がますます遠ざかることを自覚すべきです。