(ニューヨーク)-国連人権理事会はカンボジアに対し、人権問題への抑圧的な態度を改め、政策と実際の行動を改革するよう求めた。しかし同国政府はこれを無視していると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。カンボジアと協力関係にある各国は、国連の審査プロセスが指摘した多数の人権侵害行為に対処するよう、同国政府への働きかけをいっそう強めるべきだ。
カンボジアは、2014年6月26日に人権理事会の普遍的定期的審査(UPR)会期で他国政府からの勧告を受けた。普遍的定期的審査は全国連加盟国に義務づけられており、各国の人権状況が4年ごとに評価される。
「カンボジアは根本的な改革を行い、人権を尊重することが強く求められている。だがフン・セン首相は立場を頑として変えようとしない」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長ブラッド・アダムズは指摘した。「国際社会は、カンボジア政府による政治的暴力の使用、政治的動機に基づく反対勢力の投獄、拷問、言論の自由や集会の制限などを黙認すべきではない。」
カンボジア政府は勧告の無視に等しい態度を取り、主要な人権問題を繰り返し指摘されたことに「留意する」とだけ述べた。カンボジア側が取り合おうとしない勧告内容には、非暴力的な集会の自由の権利、およびインターネット上での自由など報道の自由を確保する行為について、政府による恣意的な停止を止めること、何人も表現の自由の権利を行使したことで、拘束あるいは投獄されないことなどがある。
同国政府は、不公正な裁判の停止や、野党勢力・人権活動家・ジャーナリスト・活動家に好ましい人権環境の整備についても他国から勧告を受けているが、これらも無視している。さらに治安部隊が致死力を過剰に使用した最近の事件についての調査、そのような違法な暴力への不処罰の停止、拷問禁止のための司法・制度改革の求めにも応じていない。
カンボジア政府は、人権侵害の停止、カンボジア憲法に記された土地の権利の保護、国連の人権専門家と人権機構との密接な協力を求める勧告も無視している。
6月26日に政府見解を述べた際、カンボジアは先に受け入れを表明した4つの勧告について前言を翻した。1つはとくに「自由で独立したメディアの保護」を求めるもの、その他3つは子どもの教育関連の勧告だった。
政府の立場を正当化するため、カンボジアのジュネーヴ国連代表部は、留意した勧告の受け入れを撤回するのは、それらが「現状を反映」していない、または「国内と域内の状況に合致」していない可能性があるからだと述べた。受け入れを拒否した勧告は「カンボジア国内法と憲法に反する」ものだと主張した。
6月27日、与党カンボジア人民党のチアン・ヴン報道官は「一部の法律に関する国連の勧告については検討済だ。ただし内容を受け入れることはない[…]。われわれが受け入れないものはカンボジア国内には適用されない。カンボジア社会は国連のものではないからだ」と発言。さらに同報道官は、政府に反対する他党や個人に対処する手段を取り上げて「国家機構の武装解除」を強制するような勧告について、カンボジア政府は反対すると述べた。
「フン・セン首相とその見解を代弁する人びとは、今回のプロセスで本性を明らかにした。重要な勧告を無視し、偽りの例外主義を唱えて人権侵害を続けることを正当化した」と、前出のアダムズ局長は述べた。「カンボジアに大量の対外援助を行っているドナー側は、共同して影響力を行使し、人権侵害で国を支配するという政府のやり方を止めさせるべきだ。」