A woman hides her face after recounting how pro-Ouattara forces killed two of her children and
her brother.

© 2011 Peter Dicampo

(アビジャン)-コートジボワールでは選挙後にあたる2010年から2011年にかけ、重大な国際犯罪が犯されたが、これらの犯罪について説明責任を公正に追及するという公約を同国政府が未だに果たしていない。政府は、両陣営の被害者が最終的に法の正義の実現を見届けられるよう、これらの事件に対応する裁判官と検察官への支援を増強すべきだ。

全74ページの報告書「約束を現実に:コートジボワールでの重大な国際犯罪への説明責任」は、2010年11月の大統領選挙に続いて行われた重大な国際犯罪の責任追及における、コートジボワール政府の取り組みの欠如を分析している。アラサン・ワタラ大統領は2011年5月の就任以来、所属政党や軍の階級にかかわりなく、関係者全ての責任を追求すると繰り返し約束してきた。しかし、選挙後の武装衝突の際に起きた犯罪に関し訴追された150人の中に、ワタラ派部隊に所属していた者は誰1人として含まれていない。

「政権支持派が犯した人権侵害の被害者に法の正義をもたらすための具体的な行動をとらない限り、ワタラ大統領の公正裁判に対する支持表明は空々しく聞こえる」とヒューマン・ライツ・ウォッチの国際司法上級顧問パラム-プリート・シンは述べる。「政府に近い者は法に裁かれない、という危険な慣習から決別するのであれば、選挙後の武力紛争において両陣営が犯した犯罪の責任者をしっかりと訴追する必要がある。」

欧州連合や国連、フランス、米国といったコートジボワールの国際パートナーは、公平な説明責任追及に向けた、外交的圧力と財政支援を強化すべきだ。

今回の報告書は、2012年9月にアビジャンで行った現地調査と、その後に政府職員、弁護士、市民社会メンバー、国連関係者、外交官、援助機関職員に対して行った聞き取り調査を基にしている。

2010年11月の選挙では、国際的に認知された結果に基づき、ワタラ氏が勝者と宣言されたが、現職だったローラン・バグボ氏が大統領職から退くことを拒否。その結果5ヶ月にわたる危機をもたらし、政治的立場・民族・宗教を理由とした襲撃が多発。少なくとも3,000人が殺害され、150人の女性がレイプされた。2011年11月にバグボ氏は国際刑事裁判所(以下ICC)の発行した逮捕状に基づき、オランダ・ハーグに引き渡された。人道に対する罪に関わる4容疑で、裁判に掛ける十分な証拠があるかどうかの判断を待つため、今もハーグにて身柄を拘束されている。

重大な国際犯罪に関する裁判は慎重に行う必要があるが、法の正義の欠如には高い代償が伴う。コートジボワールでは、慢性的な不処罰がこの10年間に暴力事件を繰り返し引き起こし、一般市民に最大の犠牲を強いてきた。

2011年6月にワタラ大統領は、選挙後の危機の際に犯された人権侵害に対応するべく、国家調査委員会、特別捜査班、対話・真実・和解委員会を創設した。2012年8月に調査委員会は報告書の概略を公表し、バグボ派とワタラ派の双方の部隊によって重大な犯罪が行われたことを認め、責任者を法の裁きにかけるよう勧告した。これらの調査結果は、国連の事実調査委員会や人権団体による報告とも呼応している。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、選挙後の犯罪に関する司法捜査を行うことを任務とする特別捜査班に、国家調査委員会の報告書を基に「マッピング・エクササイズ」(mapping exercise)を行うよう求めた。マッピング・エクササイズは、紛争中に各地域で行われた犯罪の全容をより詳細に明らかにし、可能な場合は容疑者個人も特定することを目的とする。この作業は、捜査班がこれまで着手していなかった、捜査・訴追に向けた事件選別の戦略作成に繋がるものである。

「マッピング・エクササイズ」の機密扱いでない結果と訴追上の戦略は、捜査当局が自らのマンデートを中立・公平に執行する力を有しているという信頼を構築するためにも、一般に公開されるべきである。重大な国際犯罪の訴追手続きを公平に進めるためには、特別捜査班にはもっと多くの人員が必要であろう。

選挙後の犯罪の容疑をかけられた多くの人びとが、およそ2年間も審理前拘禁されていることを、ヒューマン・ライツ・ウォッチは明らかにした。これは国際的に認知された公正な裁判を受ける権利に反しており、その原因の一部は、同国において長く待ち望まれている法制度改革が未実現であることにある。コートジボワール政府は、既に拘禁中の被告人が迅速に法の裁きをうけ、控訴する権利を保証されるよう、刑事訴訟法の改正を急ぐべきだ。早期段階での弁護士へのアクセス、そして弁護士を雇えない者への法的支援も義務化するべきだ。

これまで特にICC加盟国、EU、そして国連は、ICCの補完性の原則(ICCは国内裁判所が被疑者の捜査・訴追を真に行う能力や意思がない場合等にのみ介入する)を実現するために、コートジボワールの裁判所における説明責任(アカウンタビリティ)の追及を促進する姿勢を徐々に示してきた。しかし、ヒューマン・ライツ・ウォッチの本報告書は、主要なパートナー国・機関がコートジボワールにおいて、この目標に向けて限られた努力しかしてこなかった事実を示している。

コートジボワールの国際的パートナー国・機関は、同国で2002年から2003年にかけて発生した武装紛争の後に犯された過ちから学ぶべきである。この武装紛争の後、国際社会が沈黙している間に、法の正義の実現は二の次にされ、不処罰が深く根を下ろしてしまった。その結果、2010年から2011年にかけての破滅的な選挙後危機の到来を招いたのである。

「捜査と訴追に必要とされる支援を提供するための主要な改革の欠如が、コートジボワールでの重大な国際犯罪に対する説明責任追求に関する進展を妨げている」と前出のシンは指摘する。「国際的パートナーは、同国政府に対し必要とされる支援は提供し、不処罰は選択肢としてあり得ないというメッセージを外交力を使い強化するべきだ。」

同国政府と国際的な援助国機関は、裁判官と検察官の独立性を支援し、重大な国際犯罪裁判に関与する証人・裁判官・検察官・被告側弁護士に対する保護と安全の提供のため、協力すべきだ。これらは最近発生した主要な犯罪に関し、公正で公平な裁判が行われることを保証し、また、同国の司法制度全体を強化し、今後効率的かつ公正に機能するようにするために非常に重要である。 

ICCは2011年10月、バグボ氏とワタラ氏の両政権からコートジボワールで起きた暴力事件を捜査するよう要請を受け、捜査を開始した。ICCは2002年9月19日後の同国における犯罪に関し管轄権を有している。ICCがこれまで公に発行した逮捕状は、バグボ氏とその妻シモーヌ氏に対する2通だけで、容疑は人道に対する罪である。多数の市民社会活動家や当局者への聞き取り調査を基にとりまとめられた今回のヒューマン・ライツ・ウォッチによる報告書は、ICCの偏ったアプローチが、同国司法当局による同様のアプローチを正当化し、ICCの公平性に関する認識を損なったと結論付けた。コートジボワールは2013年2月、ICCを創設した条約であるローマ規定を批准、ICCの122番目の締約国になっている。

シモーヌ・バグボ氏は国内でジェノサイド罪その他の容疑を掛けられ、同国管轄下で拘留中だ。政府は、ICCに彼女の身柄を引き渡すか、もしくは、彼女が同様の犯罪で国内裁判に掛けられていることを理由に、ICCによる管轄権に対して異議申し立てを行ない、締約国としての義務に従うべきである。

「ICCはワタラ陣営関係者により行われた犯罪を速やかに捜査し、証拠を基に、逮捕状の発行を求めるべきだ」とシンは述べる。「それはコートジボワールでのICCの正当性を回復し、同国政府に対し、信憑性のある公平な結果をもたらすよう圧力をかけるために不可欠である。」