(ブリュッセル)- 欧州連合(EU)首脳は、今週ブリュッセルを訪問するビルマのテインセイン大統領に対し、重要事項である人権状況の改善を強く働きかけるべきだ。 テインセイン大統領は3月5日、マルティン・シュルツ欧州議会議長、ジョゼ・マヌエル・バローゾ欧州委員会委員長、ヘルマン・ファン・ロンパイ欧州理事会常任議長、キャサリン・アシュトン外務・安全保障政策上級代表などのEU首脳と会談する予定だ。

ビルマ大統領に対しては、国連人権高等弁務官事務所に人権の保護と尊重、技術支援のマンデートの完全な履行を認め、人道機関に一般市民が支援を必要とする地域への完全で妨害のないアクセスを認めるという公約を遵守させるため、強い働きかけが必要だ。

「EU首脳は、今まで行われてきたビルマでの改革は、ひとつのプロセスの終わりではなく、始まりに過ぎないと捉えるべきだ」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチEUディレクターのロッテ・ライヒトは述べる。「テインセイン大統領による改革を後押しすべきであることはその通りだ。しかし同時に、ビルマには進行中の深刻な人権侵害が存在するという難しい現実に対処するよう、同大統領に強く働きかけるべきなのだ。」

EU首脳は、ビルマで最近生じている肯定的な変革は、国際社会の圧力とともに、経済的・政治的孤立を回避したいというビルマ政府側の強い願望にも多くを負っていることを認識すべきだ。したがってEUは、ビルマ治安部隊が現在も起こしている人権侵害を無視しないことがきわめて重要である。こうした人権侵害には、民族紛争地域での一般市民への攻撃や、ラングーンなど各地で起きている非暴力抗議行動への弾圧などがある。

2011年にカチン州でカチン独立軍との武力衝突が再燃して以来、ビルマ軍は多数の戦時国際法違反行為に責任を負ってきた。これには、一般市民への砲撃、超法規的処刑、子ども兵士の使用、不当な強制労働、略奪などが挙げられる。生活する家を追われたカチン民族の一般市民数万人が人道支援にアクセスできない状態だ。

アラカン州では昨年、ムスリムであるロヒンギャ民族などへの宗派間暴力が発生し、多くの死傷者を出したが、ビルマ政府はこれへの対処も怠っている。この暴力事件に関して政府が設置した調査委員会は、調査結果の公表を再び延期し、3月下旬とした。テインセイン大統領は、今回の欧州訪問に際して、政府としては1982年国籍法を改正するつもりがないことをすでに明らかにしている。同法の差別的な規定により、ロヒンギャ民族の大半はビルマ国籍を取得することができない。

EU首脳はテインセイン大統領に対し、カチン州やアラカン州など住民が危機的な状況にある地域で、人道援助を妨害なしで実施することを認めるよう強く求めるべきだ。EU加盟国と欧州委員会は、政府による妨害が依然存在するにもかかわらず、ビルマへの人道援助を増額した。テインセイン大統領は、援助拡大を許可すると述べたが、治安部隊は政府支配地域外のカチン民族の国内避難民や、ロヒンギャ民族の避難民キャンプなど、困窮した人びとへの援助物資運搬に対して妨害や嫌がらせを行ったり、十分な護衛をつけないといった態度を取っている。

テインセイン大統領は、11月にバラク・オバマ米大統領に公約した通り、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)のビルマ駐在を許可すべきだ。政府は国連人権高等弁務官事務所スタッフ3人がアラカン州での事態の推移を監視することを確かに許可しているが、同様の監視がビルマのそれ以外の地域でも緊急に必要とされている。同事務所の駐在にあたっては、人権の保護と尊重、技術支援に関する完全なマンデートが不可欠である。もしこれが実現すれば、ビルマ政府に対して「国連人権高等弁務官事務所の国別事務所設置に対するコミットメントの実施を加速すること」を求めた、最近の欧州議会決議に沿うものとなる。

「テインセイン大統領はおそらく話の内容を練り上げて、自らの改革への称賛を受ける手はずを整えている。だがビルマ現地の状況を実際に分析してみれば、改革を根づかせるためには、まだまだ相当の取り組みが必要との結論に常に行きつく」と前出のライヒトEUディレクターは指摘する。「EUは、通りのよい決まり文句で済ませるならば、ビルマでの移行過程を――もっと大切なのは、ビルマの人びとだが――ほんとうの意味で支援してはいない。ただ建設的で強固な圧力によってこそ、一般市民への強力な保護と、すべての人の基本的人権が保障されるのだ。」