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(ベイルート)–イラン司法権は最近逮捕したジャーナリスト十数人を起訴するか、しないのであれば即時釈放すべきである。犯罪の疑いで起訴するのであれば明確な証拠が必要であり、また容疑そのものがジャーナリストの基本的権利(表現、結社の自由など)を侵害してはならない。司法権をはじめ、イラン政府各当局は、イランのあらゆるジャーナリストの表現の自由が完全に保証されることを、特に2013年大統領選挙に至る期間について確約すべきだ。

テヘランの治安部隊は2013年1月26日に、ジャーナリストの自宅や職場に踏み込んで逮捕を行った。外国メディアとの「接触」が理由とされる。一連の逮捕劇は、6月14日に予定される大統領選挙を控えて、ジャーナリストやブロガーの動きを封じようとする、最近勢いを増す弾圧の一環と見られている。

「6月の大統領選挙を前にして、当局はジャーナリストを威嚇し、黙らせようとしている」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチ中東局長サラ・リー・ウィットソンは指摘した。「検察側は、ジャーナリストが外国メディアや反体制政治勢力と接触することが犯罪にあたる理由を説明していない。」

1月26日に、治安部隊はテヘランにある国営イラン労働通信(ILNA)の事務所を捜索し、ミーラード・ファダーイー・アスル氏を逮捕したと、国境なき記者団は伝えている。また同日、親改革派新聞「バハール」の記者ソレイマーン・モハンマディー氏も職場で逮捕された。国境なき記者団によれば、2人はテヘランのエヴィーン刑務所に送られた。

翌日、治安部隊はテヘランに本社を置く新聞5紙の事務所を家宅捜索した。5紙とはエッテマード、バハール、シャルグ、アールマーン(以上、日刊)、ナーメイェ・アーセマーン(週刊)である。少なくとも10人のジャーナリストが逮捕された(以下、敬称略)。エッテマード紙のサーサーン・アーガーイー、ナスリーン・ターハーヤーリー、ジャヴァード・ダリーリー、エミリー・アムラーイー。アールマーン紙のモタッハレ・シャフィーイー、ナルゲス・ジューダキー、サバ・アザールペイク。シャルグ紙のプーリャ・アーラーミー、ペイマーン・ムーサヴィー。アーセマーン紙のアクバル・モンタジャビーだ。治安部隊は1月28日、さらに2人のジャーナリスト、ケイヴァーン・メフレガーンとホセイン・ヤーグチーの両氏を逮捕した、その後、前日に逮捕されたシャフィーイ氏は釈放されたと、国境なき記者団は伝えている。

国境なき記者団のメンバーはヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、イランの準国営メフル通信は1月29日、当局は現在拘束中の13人のうち複数を釈放したと報じたが、実際に釈放されたのはシャフィーイー氏だけだと述べた。また、13人全員がエヴィーン刑務所第209区画(情報省管轄下)に収容されたが、多くがこの数日のうちに家族に連絡をすることができたと付け加えた。

検察当局はさらに、人数は不明だがジャーナリストに逮捕状を出しており、対象者には今後数日中に革命裁判所に出頭するように命令があったと国境なき記者団は述べた。

検察当局と司法権当局は逮捕理由を明らかにしていない。準国営メディアは逮捕されたジャーナリストの容疑を特定してはいないが、反体制組織や外国メディアと接触があったために逮捕されたと報じた。当局は、反体制組織や外国メディアが、物議を醸した前回2009年6月の大統領選挙後の反政府デモを仕掛けており、今回の大統領選挙でも混乱を狙っていると主張する。

各種情報によると、警察はメフレガーン氏(1月28日の被逮捕者の1人)を拘束したのは、ジャーナリスト活動に関して2012年に有罪判決を受けた「反体制プロパガンダ」罪で1年間服役させるためだ。アムネスティ・インターナショナルによれば、当局は同氏以外の複数の被逮捕者についても、言論や集会の自由に関する基本的権利を行使したとして、これまでに身柄を拘束したことがある。

1月27日、イスラーム共和国通信は、詳しい理由を伏せたまま、テヘラン検察庁が独立系ニュース・ウェブサイトのターブナークをフィルタリングの対象としたと報じた。ターブナークは2009年大統領選候補のモフセン・レザーイーや、最高指導者アーヤットラー・アリー・ハーメネイー師に忠実な保守勢力と関係が深い。

1月28日、準国営メフル通信は、当局がジャーナリストを「司法の命令にもとづき、イラン内外の偏向メディアと協力した」として逮捕したと報じた。そして逮捕されたジャーナリストは「一部の外国ペルシャ語メディア」と共謀していたと思われると付け加えた。

同日、準国営ファルス通信(イラン革命防衛隊と関係が深いとされるメディア)は、少なくともジャーナリスト11人が逮捕されたことを認めた。同通信は逮捕されたジャーナリストは「扇動主義者や反革命分子」に近いとし、イラン司法権発行の令状に基づき逮捕されたと報じた。モハンマド・ホセイニー文化イスラーム指導相は1月28日、被逮捕者が逮捕されたのは「報道関連」活動が理由ではないと述べた。

当局はこれまでも、今回の家宅捜索の対象となったシャルグ紙やバハール紙など複数の新聞を、期間はまちまちだが発行禁止処分にしている。両紙は現在もイランで発行されている改革派寄りの独立系新聞として知られている。

当局は国内のジャーナリストと、外国のペルシア語メディアで働くジャーナリストへの圧力を共に強めている。国境なき記者団によると、2013年に入って以来、革命防衛隊と情報省傘下の部隊が複数のジャーナリストに尋問目的での出頭を命じている。これは今度の大統領選挙に関わる出来事の報道に関連した動きとされる。

当局はまた、BBCペルシャ語放送やヴォイス・オブ・アメリカ(VOA)などペルシア語メディアで働く在外イラン人ジャーナリストへの嫌がらせも強めている。国内の家族への脅迫、出頭命令、尋問などが行われていると、BBCペルシャ語放送幹部のサーデク・サバ氏ら複数のジャーナリストが指摘する。2012年にヒューマン・ライツ・ウォッチは、BBCペルシャ語放送で働くジャーナリストの家族に対する嫌がらせを文書化している。

2012年12月28日、最高指導者アリー・ハーメネイー師は演説の中で、ジャーナリストらに対し、イランの選挙が自由ではないと発言するのを慎むようにと警告した。2013年1月21日、ゴラームホセイン・モフセニー・エジェイー検事総長は記者会見の席上、「イラン国内のジャーナリストには、西洋人や国外に拠点を置く反革命分子に協力する者がいる」と述べ、治安部隊が近いうちに逮捕するとも示唆した。この発言が、ここ数日で逮捕されたジャーナリストを指すのかは不明だ。

政府はジャーナリストとブロガーに神経を尖らせており、とくに2012年総選挙を控えた時期には締め付けが厳しくなった。複数が逮捕されており、司法権からは選挙ボイコットを唱えた人物はすべて起訴するとの脅迫があった。

国境なき記者団によれば、2012年12月現在、イランでは43人のジャーナリストとブロガーが投獄されている。この人数は世界で2番目に多い。 

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