(ニューヨーク)イランでは2012年に入ってから少なくとも10人のジャーナリストとブロガーが逮捕されている。当局は全員を直ちに正式に逮捕するか、釈放すべきである。ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日こう述べた。一連の逮捕劇は、今年3月2日の総選挙を控え、情報の自由な流通の遮断をねらったイラン政府の最近の動きの一つである。

1月19日に治安部隊は、ジャーナリストのシャフラーム・マヌーチェフリーの自宅を捜索し、所持品を没収した上で、氏をどこかに連れ去った。1月17日に、治安部隊はテヘラン在住のジャーナリスト、マルズィーイェ・ラスーリーとサハモッディーン・ブーラガーニーの自宅にそれぞれ踏み込み、2人を拘束した。1月15日にはジャーナリストでブロガーであり、女性の権利活動家でもあるパラストウ・ドクーヘキーを逮捕した。このほか少なくともジャーナリストとブロガー6人が今年になってから逮捕され、現在も身柄を拘束されている。全員が現政権の政策に批判的な改革派の新聞やウェブサイトと関わりを持っている。

「ジャーナリストとブロガーに対する今回の断続的な逮捕劇は、市民が利用できる情報を完全に統制しようとする政府の恥知らずな試みだ」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチ中東局長代理ジョー・ストークは指摘した。「当局は、正式な起訴もなく、また逮捕の根拠となる証拠も提示されることなく、あるいは表現の自由を行使する時間を奪われたまま、現在イラン国内の刑務所で拘束されているジャーナリストとブロガーを全員即時釈放すべきだ。」

当局は、今年に入って逮捕されたジャーナリストとブロガーへの容疑を明らかにすることを拒否している。1月24日、BBCペルシャ語放送のウェブサイトは司法当局がドクーヘキーの「一時的身体拘束」令状の発行を認めたと報じたが、ラスーリーとドクーヘキーの家族に近い筋がヒューマン・ライツ・ウォッチに語ったところによれば、当局は家族との面会を不許可とした上で、この2人の女性の正式な逮捕理由をいっさい開示していない。またこの消息筋によれば、ドクーヘキーは逮捕されてから数回家族に電話をかけているが、ラスーリーは拘束から24時間以内になんとか1回電話できただけだった。治安当局はラスーリーとドクーヘキーの自宅を捜索した際、ノートパソコンなどの私物を押収している。

ラスーリーの逮捕後にBBCペルシャ語放送のウェブサイトは、治安当局が氏を拘束する際に「国家安全保障を脅かす行為」で逮捕したと報じた。ドクーヘキーは「反体制プロパガンダ」の容疑での起訴を通告されたことを示唆する報道もある。

消息筋がヒューマン・ライツ・ウォッチに話したところによれば、ラスーリーとドクーヘキーはテヘランのエヴィーン刑務所2A区に拘束されている。この区画はイラン革命防衛隊の管理下にある。

ラスーリー、ドクーヘキー、マヌーチェフリー、ブーラガーニーはこれまで改革派の新聞と関係を持ってきた。このうち複数の新聞が当局によって廃刊されている。4人は過去にも活動を理由に逮捕された経験がある。2007年に当局はドクーヘキーをジャーナリストとしての活動に関して「国家安全保障を脅かす行為」で起訴した。しかし裁判所は2010年5月に彼女を釈放した。2010年10月、ラスーリーは当局によって出国を阻止され、情報省から繰り返し取り調べを受けた。マヌーチェフリーは、2009年の大統領選挙後の弾圧で逮捕されていた。

ドクーヘキー、ラスーリー、ブーラガーニーのほか、治安部隊は今年に入ってから以下のジャーナリストとブロガーを逮捕した(括弧内は逮捕日)。ペイマーン・パクメフル(1月17日)、スィーミーン・ネッマトッラーヒー(1月11日)、モハンマド・ソレイマーニーニア(1月10日)、サイード・マダニー(1月8日)、ファーテメ・ヘラドマンド(1月7日)とエフサーン・フーシュマンド(1月7日)だ。ネッマトッラーヒー・ゴナーバーディー・スーフィー教団関係のウェブサイトであるマジュズーバネ・ヌーア(Majzooban-e Noor)の管理者兼ブロガーとして10数人が活動するが、ネッマトッラーヒーはこの1人だ。氏は2011年9月上旬に、仲間11人とともに治安部隊に拘束されたが、後に保釈金を払って釈放された。今年に入り、当局はこのとき逮捕されたジャーナリストのうち数人に出頭を命じて数週間にわたり尋問を行い、最終的に身柄を拘束している。逮捕者は全員エヴィーン刑務所に収容されていると見られる。

1月24日、ヘイダル・モスレヒー情報相は、治安当局と公安当局が近く行われる総選挙の正当性を損なう様々な陰謀を発見し、阻止したと発表した。そして「不穏分子と国家の敵とのつながりが既に確認されており、[その]証拠も多数存在する」と述べた。

1月8日、モスレヒー情報相は、治安当局と公安当局は複数の身柄を拘束し、近く行われる総選挙の妨害と、SNSを用いて「米国の目的を進める」活動を計画していたとする証拠を発見したと発表した。これに先立ち、同情報相は、今回の総選挙がイラン・イスラーム共和国の歴史上「最もデリケートな」選挙であると警告している。

11月から12月にかけて、改革派と反体制派の活動家から(収監中の活動家も参加して)総選挙はぺてんであり、候補者を擁立する理由はないと主張する声明が複数出されている。十二月にイラン司法権は、総選挙ボイコットを呼びかける者は訴追の対象となると発表した。

今回の逮捕劇とモスレヒー情報相の1月8日の発言との関係は、いまのところ不明だ。

ジャーナリスト保護委員会によると、イラン国内の刑務所には12月時点で42人のジャーナリストとブロガーが収監されている。人権団体筋の情報によると、2011年1年間だけで60人以上のジャーナリストが亡命を余儀なくされており、当局は2009年以降で少なくとも40誌を廃刊にした。1月17日に、イラン最高裁は、昨年10月に「イスラームを侮辱し、冒涜した」罪で起訴されたカナダ在住のイラン人ブロガー、サイード・マーレクプールへの死刑判決を支持した。このほかにも少なくとも2人が、インターネットに関わる容疑で司法権から死刑判決を受けている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチはイラン政府当局に対し、表現の自由などの基本的権利の行使に関わって現時点で拘束され、あるいは起訴されているジャーナリストとブロガー全員の無条件釈放を求めた。

ジャーナリストとブロガーに対する今回の最新の逮捕劇は、当局がインターネットでの情報流通を制限する取り組みを強化した動きと関連がある。1月4日、現地の新聞紙面に新たに設置されたイランのサイバー警察部隊が発行した新規制が掲載された。この規制はインターネット・カフェに対して15日以内に監視カメラを設置し、利用状況を追跡するために顧客の個人情報収集を開始するよう求めるものだ。

インターネット利用者と人権団体側からは、インターネット接続の切断回数やブロック対象のサイトが増加していることが、イラン政府が全国的なイントラネットの導入試験を行っている証拠ではないかとの懸念も出されている。2011年3月に当局は、社会的・道徳的腐敗からイランを守るため、国内に「ハラールな」(合法的な)インターネットを設置する数百万ドル規模のプロジェクトに資金を投入していると発表している。

総選挙を控え、政府はインターネットが果たす役割についてとくに神経質になっていることは、ボイコットを呼びかければ訴追するとの司法権による威嚇にも表れている。

「2009年大統領選挙の結果は議論を呼び、大衆的な抗議につながった。残念ながら当局がこのことから唯一学んだのは、情報の自由な流通を許せば、絶対的な統治を行う自分たちの力を根底から脅かされかねないという事実のようだ」と前出のストークは述べた。