(ベルリン)-タジキスタンで2012年10月24日、重要な人権団体を閉鎖する判決が下された。この判決はタジキスタンの市民社会にとって極めて大きな打撃であり、結社の自由を保護するタジキスタンの国際的義務に沿って改めて再検討されるべきである、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。「青年法律家協会『アンパロ』」は、拷問の調査や、徴兵された新兵など社会的弱者の権利を擁護する団体。アンパロは、軽微なミスを指摘されて閉鎖させられた。
ヒューマン・ライツ・ウォッチ欧州・中央アジア局局長のヒュー・ウィリアムソンは、「この事件は当初から、実態なき政治的動機で提起された。拷問、徴兵された新兵の権利など極めて重大な問題に取り組む団体の意見を抑え込むみえすいた企てであり、タジキスタンにおける人権にとって大きな後退だ」と指摘する。
タジキスタン北部のホジェンド市にある裁判所は、アンパロが正式な許可証なしに活動していると判示し、同団体を閉鎖するという司法省の申請を許可。司法省当局は、アンパロが「同省に新住所を登録しないまま事務所の所在地を変更した」と主張、更に「ウェブサイトを違法に運営している」「元々登録されていたエリアであるソグド州北部地域の外で活動している」「軍新兵には拷問や虐待を受けない権利があるなどと、人権問題に関し正式承認されていない教育を高校生に対して行っている」とも述べた。
アンパロの代表者たちはヒューマン・ライツ・ウォッチに、司法省の主張は政治的動機に基づいていると話した。住所変更は当局に伝えており、すべての教育は現行法に沿って教育省との合意のもとで行い、ウェブサイトの運営は法律で禁止されていなかったと語る。更にアンパロの代表者たちはヒューマン・ライツ・ウォッチに、閉鎖申請が提出された当時、司法省に全国規模での登録を申請中だったとも話した。
青年たちを人権教育で力づけることを目指した青年弁護士のグループによって2005年に設立されたアンパロだが、今ではそのメンバーには、40人を超える人権活動家、ジャーナリスト、教育者などが含まれている。アンパロは積極的に、タジキスタン軍新兵・貧困者・孤児・障がい者・その他社会的弱者の権利を調査・監視している。
タジキスタンの複数のNGOが、拷問被害の申立を全国規模で収集・報告し、政府に対し拷問を止めるという国際公約を守るよう共同で働きかけている。それらを取りまとめる「反拷問連合」の中で、何年も積極的に活動してきたのがアンパロだった。
「反拷問連合」は拷問に関する報告書(いわゆる市民社会提出の「シャドーレポート」)をジュネーブの国連拷問禁止委員会に提出。アンパロは拷問と虐待の事件の調査以外にも、憲法上の保護規定や国際的な人権保護基準についての認識を高めるため、様々な団体(主に青年団体)向けに教育やサマーキャンプを行っている。
司法省は6月29日、アンパロを解体する申請を申し立てた。その前日、司法省職員がアンパロのホジェンド市にある事務所を訪れ、事前告知もなしに広範囲に及ぶ会計監査を行った。また、その一週間前には首都ドゥシャンベで、EUが開催した市民社会向けの拷問に関するセミナーにてアンパロの代表が、タジキスタン軍における拷問と激しい体罰に関する数々の報告を監視する必要性について講演していた。その更に1カ月前にはアンパロの代表たちが、タジキスタンを訪問した国連拷問特別報告者のジュアン・メンデズ氏に対し、軍隊内での新兵に対する人権侵害と体罰について報告を行っている。
司法省がアンパロを提訴した後、タジキスタンNGOの大連合体が、タジキスタンのエモマリ・ラフモン大統領に提訴取り下げの陳情を行った。
前出のウィリアムソン局長は、「アンパロはタジキスタン内で、法的リテラシーの向上や歴史的に取り上げられなかったテーマへの取り組みなどで極めて重要な役割を果たしている。司法省がこの小さな問題が原因でアンパロを攻撃しているとは誰も思っていない。タジキスタンの司法省などのその他の当局は、アンパロが活動できるよう許可証を直ちに再発行し、アンパロのメンバーに対し、国際的に保障された結社の自由の権利に沿って、閉鎖決定を緊急に再検討すべきだ」と述べる。