(ナイロビ)—同性愛容疑で起訴された依頼人の弁護士である著名な弁護士2人への脅迫事件について、カメルーン政府当局はただちに捜査に着手しなければならない、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日発表した。政府は被告側弁護士への脅迫を公の場で明確に非難することに加え、弁護士らの安全を守る策を講ずるべきである。

カメルーンのドゥアラ市を中心に活動しているアリス・ンコム弁護士とヤゥンデ市を中心に活動しているミシェル・トグー弁護士は、世間が注目する複数の同性愛裁判の弁護を引き受けた著名弁護士だが、2012年10月18日以来、匿名の何者かから、携帯電話とEメールを通じて継続的に脅迫を受けている。トグー弁護士への携帯メールの1つを例に取ると、学校に通う彼の子どもに危害を加えると脅迫すると共に、同性愛容疑で起訴された人びとの弁護を中止するよう警告していた。それに続くトグー弁護士へのEメールでは「オカマとオカマに協力する奴らは、 この国から出ていけ」と警告している。更に送信者はトグー弁護士の子どもたちが下校する様子を映した画像を添付していた。ンコム弁護士へのメールの一例では、「お前が止め(撤回し)ないなら、分かっているだろうな」と書かれている。メールではトグー弁護士の子どもたちへ危害が及ぶことを再三繰り返し、ンコム弁護士に「血を見るだろう」と警告し、更にンコム弁護士の子どもたちに対しても危害が及ぶと脅している。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダー(レズビアン(L)、ゲイ(G)、バイセ クシャル(B)、トランスジェンダー(T)、以下LGBT) の権利プログラムの調査員ニーラ・ゴシャールは、「カメルーン政府当局はただちに捜査に着手し、この勇敢な人権弁護士らをおびやかす者を見つけ出さなければならない」と述べる。「誰にも弁護を受ける権利があるということ、被告側弁護士に対する脅迫は看過してはならないことを、カメルーン政府は公の場で明確に表明すべきだ。」

同意に基づく同性同士による性行為を犯罪として厳しく訴追している国が世界に数ヵ国あるが、カメルーン政府はその1つである。カメルーン刑法第347条の2は、同性愛を犯罪とし、「同性の者との性的関係」を5ヶ月〜5年の刑に処するとしている。少なくとも4人のカメルーン人が、同性愛の罪で服役中だ。ンコム弁護士とトグー弁護士は、被告人らの上訴審において代理人を務めている。また、刑法の同じ条項によって審理前拘禁されている人が少なくとも1人いる。司法省の記録によると2011年中では、同性愛容疑で起訴された14人のうち、12人に有罪の判決が下された。

ヒューマン・ライツ・ウォッチが10月にカメルーンで行った調査によると、多くの同性愛容疑裁判の容疑者が、取り調べ段階で弁護士に接見する権利を認められないなど、度重なるプロセス違反を経て裁判が実施されていることが明らかになった。検察官も裁判所も、薄っぺらな証拠を有罪のよりどころとしており、ある裁判ではコンドームと潤滑油の所持を、別の裁判では容疑者の好みのアルコール飲料を、同性愛の「証拠」とするなどしている。

カメルーン社会における同性愛嫌悪の風潮を政府の政策があおる結果となっており、LGBT関係者や同性愛容疑をかけられた人の権利を保護する弁護士や人権活動家の逆風となっている。同性愛裁判で被告の弁護を引き受けた弁護士は、日常的にメディアで激しく非難され、弁護士自身の性的指向にまで疑問が投げかけられる有様だ。ンコム弁護士は過去にも同僚の弁護士や元司法大臣から、彼女の活動を止めるよう警告されている。

ンコム弁護士とトグー弁護士、そしてふたりの子どもたちに対し暴力の脅迫が行われたことは、悪意による逆風が新たな段階に突入したことを示している。トグー弁護士は2012年10月18日に中央司法警察の地方局本部へ告訴し、一方ンコム弁護士も10月23日に政府検察官に告訴している。カメルーン政府当局は、Gメールのアドレスから発信されたEメールと、MTN SIMカードから発信された携帯電話メッセージについて、 発信者を特定する捜査に着手しなければならない。

カメルーン政府は、LGBTとその支援者に対するこれまでの攻撃に対して効果的な対応をとることを怠っており、政府の行為がLGBTへの敵意すらあおったことも一度や二度ではない。ドゥアラの警察は2月、ある若い男性を同性愛容疑で逮捕した上で、その後の釈放の条件として「オルタナティブ・カメルーン」という団体をテレビで激しく非難させた。その激しい非難と一般市民からの敵意が原因で、 男性と性行為をする男性(MSM)にHIV-エイズに関するサービスを提供するその団体は、活動停止に追い込まれた。

ヤゥンデ市当局は3月に、性的マイノリティーの権利に関するワークショップを不法に閉鎖。これは結社と表現の自由の侵害に当たる。その数カ月後にも、LGBTへのサービスを提供する複数の団体がヤゥンデ市で主催した「国際反ホモフォビアの日」を祝う集会を、暴徒が襲撃する事件が発生している。

カメルーン政府当局は、国際的な人権保護義務に違反して、性的指向についての疑いを根拠に人びとを日常的に逮捕、起訴している。ドゥアラにある「ゲイとレズビアンの権利を守る協会」は、2008年以来刑法第347条の2を根拠に行われ た、少なくとも51件の逮捕を記録している。いくつもの事件において警察、憲兵、刑務所看守が、自白を引き出すために同性愛の疑いをかけられた人びとに暴行を加えていることを、カメルーンで最近行った調査でヒューマン・ライツ・ ウォッチは明らかにした。

国連規約人権委員会は1994年、「トーネン対オーストラリア事件」において、同意に基づく同性同士の性行為を犯罪とするのは「市民的及び政治的権利に関する国際規約(国際人権B規約)」に違反し、特にプライバシー権と差別を受けない権利を侵害すると決定を下した。「国連恣意的拘禁に関する作業部会」は、性的指向を根拠にした逮捕は明らかな人権侵害としている。

前出のゴシャール調査員は、「カメルーン政府は、自国憲法が保障する平等を尊重し、同意に基づく同性同士の性行為を根拠として人びとを逮捕することを止めるべきだ」と指摘する。「しかし、そのような不当な逮捕が行われる限りは、政府は被告側弁護士が安全に職務を行えるよう取り計らうと共に、被告人の公正な裁判を受ける権利を確保しなければならない。」