アップデート:2012年9月24日、ホーチミン市人民裁判所はグエン・ヴァン・ハイに禁固12年と執行猶予5年および移動の制限、タ・フォン・タンに禁固10年と3年の執行猶予および移動の制限、ファン・ターン・ハイに禁固4年と3年の執行猶予及び移動の制限の有罪判決を下した。
(ニューヨーク)-ベトナム政府当局は著名なブロガー3人に対する訴追をすべて取り下げ、直ちに釈放するべきだ、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。ホーチミン市人民裁判所は2012年9月24日に、グエン・ヴァン・ハイ(Nguyen Van Hai—Dieu Cayという名で知られる)、ファン・ターン・ハイ(Phan Thanh Hai—Anhbasgの名で知られる)、タ・フォン・タン(Ta Phong Tan)の3人を裁判にかける予定だ。容疑は、「ベトナム社会主義共和国に背くプロパガンダ行為」でベトナム刑法第88条に違反したというもの。有罪となれば3人には、最長で20年の刑が言い渡されることになる。
グエン・タン・ズン首相は9月12日、表現の自由に対する弾圧の陣頭指揮を取った。公安省および情報通信省ほか関係局に命じて、政府未承認の政治を扱うブログを閉鎖し、こうしたブログに関係する個人を処罰すると共に、国家公務員にブログ上のニュースを読んだり、広めることを禁じた。有力なコネを持つ大物実業家や国有企業の責任者に対する一連の逮捕でベトナム経済が大変動している最中にこの首相命令は出された。
ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長ブラッド・アダムスは、「3人のブロガーが行なったとされる『犯罪』は、ベトナム政府が国民に知ってほしくない情報を明かした、ということだ」と指摘。「政府は、批判を封じ込めてブロガーを投獄するために、あいまいな定義の治安関連法を恣意的に用いている。そのため、ブロガーたちが表現の自由に対する攻撃の矢面で苦しんでいる。」
グエン・ヴァン・ハイ、ファン・ターン・ハイ、タ・フォン・タンの3人ブロガーは、報道の自由・表現の自由・人権の促進を目的に2007年9月に設立された「自由ジャーナリストクラブ」の設立メンバー。同クラブの設立以来、政府当局は所属する独立系ジャーナリストやブロガーを、脅迫したり拘束したりしている。
警察はタ・フォン・タンを2011年9月、ファン・ターン・ハイを2010年10月に逮捕。以来ふたりとも裁判前拘禁され続けている。グエン・ヴァン・ハイは2008年4月に逮捕され、ねつ造された脱税容疑で30カ月の刑を下された。2010年10月に刑期を終えた後も政府当局は彼を釈放せず、刑法第88条を適用して新たに訴追した。ブロガー3人に対する公判期日はこれまで3度延期されている。
国連人権高等弁務官事務所は2012年8月13日、「グエン・ヴァン・ハイ、ファン・ターン・ハイ、タ・フォン・タンに対して、反国家プロパガンダのかどで間もなく行われる裁判がとりわけ憂慮される。なぜならその罪状が、社会問題や人権問題についてオンライン上で出版したことなどを含む、表現の自由の合法的な行使に直接的に起因しているからだ」と表明した。5月3日には米国のバラク・オバマ大統領が、「我々はブロガーのディウ・カイのような[ジャーナリストたち]を忘れてはならない。2008年の彼の逮捕は、ベトナムで市民的ジャーナリズムに対して行われた大規模な弾圧と時を同じくしている」と公言している。4月にも米国政府は、「世界報道の自由の日」を記念して国務省が称える一連のブロガーやジャーナリスト紹介リスト内で、ディウ・カイのケースを第1位にランクインさせ、彼の勇気を褒め称えた。
7月30日には、タ・フォン・タンの母親ダン・チ・キム・イアン(Dang Thi Kim Lieng—64歳)が、バクリエウ省共産党支部の本部事務所外で自らに火を放つという痛ましい事件も起きている。彼女はその日のうちに死亡。焼身自殺の動機は警察による家族への嫌がらせと、間もなく開かれる娘の公判への抗議にあると言われている。土地の権利の活動家のブイ・チ・ミン(Bui Thi Minh)や元政治囚のミン・ドゥック(Minh Duc)、チュン・ミン・グエット(Truong Minh Nguyet)などのブロガーや人権活動家が彼女の葬式に参列しようとして、警察から嫌がらせと脅迫を受けた。
前出のアダムス アジア局長は、「迫りくる経済危機、複数のスキャンダル、政治闘争に直面するベトナム政府が望むべきは、より開放された情報の流れだ」と述べる。「批判を封じ込めて沈黙させ、ブロガーを投獄することは、ベトナムの直面する問題解決にならないというメッセージに、政府は耳を傾ける必要がある。」