Peter Omari Ogenche was shot in the back by police in Kibera, Nairobi, during the post-election violence. He is now paralyzed from the waist down and suffers severe pain. Ogenche won a civil suit against the government, but the government has failed to pay the court-ordered compensation.

© 2011 Noor Khamis for Human Rights Watch

(ナイロビ)-2007年から2008年にかけて起こった選挙後の衝突から4年が経過する。しかし、ケニアの警察・司法は、犯罪を捜査・起訴せず、被害者たちは法の裁きを待ち続けている、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日発表した報告書で述べた。国際刑事裁判所が立件している事件が数件あるものの、ケニア政府はより広範囲なアカウンタビリティ(加害者の責任の追及)の達成のために、自らの司法制度の中に特別裁判機構を設置するべきである。さらにケニア政府は、警察による狙撃事件で司法長官(Attorney General)へ民事裁判を起こして勝訴した被害者21人(又はそれ以上)への賠償を手始めに、裁判所の賠償命令を履行すべきである。

全95ページの報告書「小石をも裏返せ(徹底的に捜査せよ):ケニア選挙後の衝突のアカウンタビリティ」は、2007年に行われた選挙に引き続き発生した「与党支持者・警察」対「野党関係の武装勢力・民間人」の衝突への警察と司法制度の対応を検証している。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、この暴動の際に1,133件以上の殺人が行われている事実と、その中でわずか2件しか殺人罪での有罪判決が出ていない事実を明らかにしている。レイプ・襲撃・放火その他の犯罪の被害者も同様に、法の裁きを待ち続けている。紛争中に少なくとも405人の人びとを殺害、500人以上を負傷させ、少女と女性数十人をレイプした警察官らが、完全な不処罰を享受している。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのアフリカ局長 ダニエル・ベケレは「ケニア当局者は、選挙後の衝突を捜査起訴すると再三約束してきたが、わずか数件しか有罪判決が出されていない。約束を守ろうという意思が欠如しているのは明らかだ。国際裁判官や国際検察官で構成される特別裁判機構を設立し、ケニア政府はこうした事件に政治的干渉から独立した形で真摯に取り組むべきだ」と指摘する。

本報告書は、ナイロビ、リフトバレー、ウェスターン、ンヤンザ、コーストの各州での、172人への聞き取り調査と76件の裁判事件に対する分析に基づいている。

国際刑事裁判所(ICC)検察官は、有名な6人の人物を「人道に対する罪」容疑で起訴している。ケニア政府当局は、訴追を延期或いは阻止しようと、政治的・法律的策略をめぐらしたが、起訴された。予審裁判所は、手続き進行に向けて十分な証拠があるのかどうか、2012年1月に判断する見込みである。

あるケニア人活動家はヒューマン・ライツ・ウォッチに、「国際刑事裁判所は、[ケニア人政治家にとって]ワイロを渡せず、殺せず、脅迫も出来ない、初めての制度だ」と言い、多くの被害者の法の裁きへの期待の中心となっている、と語る。しかし、ケニアのエルゴン山地域での1,000 件以上の殺人と300件以上の強制失踪などの重大な犯罪を犯した数百人が今も責任を逃れ続けており、そうした実態がこの選挙暴力に影響している。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、微々たる数の有罪判決しか出せないケニアの刑事裁判制度の問題点は何かについて指摘をしている。警察官は同僚を捜査・起訴するのを躊躇しているほか、一般的に捜査の質は悪く、検察官の一部は能力に欠けている。政治的干渉と汚職が司法過程をむしばんでおり、更にケニアには効果的な証人保護制度がない。

リフトバレー州エルドレット市のカレンジン族市民の1人はヒューマン・ライツ・ウォッチに、選挙後の武力衝突に対する不処罰に関して以下のように話した。「1つの石も残さず裏返すような徹底的な捜査をするとは言うが、それは口先だけ。もしかすると、小石なら裏返すかもしれないが、誰も大きいのを裏返す度胸はない。」

一部の加害者が軽犯罪容疑で有罪となっているものの、重大犯罪の責任者の殆ど、そして暴力を計画・実行した疑いのある者は事実上全て、不処罰を享受しているという事実を、ヒューマン・ライツ・ウォッチは明らかにしている。

2008年10月に「ワキ選挙後暴動調査委員会」がケニア国内で初めて、特別法廷設置を求める声をあげた。しかし、この声は未だに緊急な意味を帯び続けている。ケニア司法制度の独立性と能力に対する懸念、ヒューマン・ライツ・ウォッチが取りまとめて来た証拠、そして国際刑事裁判所は少数の事件しか取り扱わないという事実を考慮すれば、特別法廷の設置を求めることは、極めて重要である。

ケニア国会議員と閣僚は2009年中何度も特別法廷を設置するべく法律を提案しているが、提案が通らなかった。1年前の2010年12月15日、ムワイ・キバキ大統領は、「政府は新憲法の規定に沿って、選挙後の武力衝突の黒幕を処分するために地方裁判所の設立に邁進する」と発言したものの、その法廷を設置する具体的措置は何1つ取られていない。

ケニア政府は国際刑事裁判所に協力し続けながら、特別司法制度をケニア内に設置するべきである。特別司法制度は、政治的干渉から守られ、国内外の専門家の協力を通して必要な専門性を備えられるならば、現存するギャップを埋められるはずである。さらにケニア政府は、警察による捜査を改善すると同時に、高度な能力を持つ文民検察官を採用するために努力すべきである。

ケニア政府は直ちに、「証人保護機関」の資金を全額活用すべきである。同制度は、2011年初期に開始されたものの1人の証人もいまだ保護していない。また、選挙後の武力衝突での警察による発砲に関し、政府に対する民事訴訟で既に勝利した被害者にも、損害賠償金を支払うべきである。そして、政府は、現在進行中の他の民事訴訟で和解し、人権侵害被害者向けの総合的な補償政策を確立すべきだ。

「国際法のもとで、ケニアは重大な国際犯罪を訴追する義務があり、一方全ての被害者には法の裁きが実現するのを見届ける権利がある。選挙後の武力衝突の被害者に救済措置を提供することは、選択肢ではなく、義務である。紛争後4年が経過した今でも被害者は法の裁きを待ち続けている。」とベケレは語っている。