Children work in an artisanal gold mine, Kéniéba cercle, Mali.

© 2010 International Labour Organization/IPEC

(バマコ)-アフリカ・マリの手掘り金鉱山で、少なくとも2万人の子どもが著しく過酷で危険な環境下で労働に従事している、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日発表の報告書内で述べた。マリ政府と国際援助国・機関は、手掘り鉱山における児童労働の停止に向けて行動を起こすべきだ。手掘り鉱山では単純な技術しかなく、その労働は多くの場合、公的に組織化されていない。

報告書「マリ共和国の金鉱山:児童労働、水銀、手掘りの労働」(全108ページ)は、わずか6歳の子どもまでもが、採掘用の縦坑を掘って地下で働き、重い金鉱石を引き上げて運び、砕いて選鉱鍋でふるいにかけている実態を明らかにしている。ふるい分け作業の際に使われる水銀は中枢神経を侵し、とりわけ子どもには有害なものだ。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの子どもの権利局上級調査員ジュリアン・キッペンバーグは、「子どもたちは文字通り命と手足を危険にさらしている」と述べる。「自分の体重よりも重い荷物を運び、不安定な縦坑を登って、地球上で最も有毒な物質のひとつである水銀に触り、吸い込んでいるのだから。」

ヒューマン・ライツ・ウォッチの聞き取り調査に応じた児童労働に携わる子ども33人のうち21人が、背中、頭、腕、関節などに日常的な痛みを患っていると話していた。また、咳と呼吸器系の疾病にも苦しんでいる6歳くらいのある少年は、ツルハシで何時間も続けて縦坑を掘る時に感じる痛みについて話してくれた。もう1人の少年は、地下でのその日の仕事を終えて家に帰ると、「何もかもが痛む」という。

子どものほとんどは両親とともに働いている。大人が金を地元取引業者に売って得る収入はわずかであり、それを補うためだ。自ら鉱山に出稼ぎに来て、親戚や見知らぬ者に稼ぎを奪われ、搾取や虐待の目にあう子どももいる。また、性虐待を受けたり、生きるために性労働に携わらざるをえない少女もいる。子どもたちは、マリの他の地域やギニア、ブルキナファソなどの近隣国からもやって来る。

マリ政府は今年6月に「児童労働撲滅国家行動計画」を導入した。計画策定は重要な一歩であるが、その実施は遅れており、政府は現場でほとんど何もしていない状態だ。手掘り鉱山では正規の定期的な労働査察が全くされておらず、その最悪の形態に該当する危険な児童労働の禁止は、未だ執行されていない。マリの法律と国際法の双方が、18歳未満の子どもに対する鉱山労働や水銀使用などの危険労働を禁じている。

鉱山で働く子どもの多くは学校に行ったことがない。こうした子どもたちが学校に通って教育を受けられるようにする施策も、政府は怠っていることが多い。学校は多くの場合遠方にあり、授業料もかかる。出稼ぎにきた子どもに通学を推奨することはない。通学しはじめても、たいていは授業についていくのに悪戦苦闘することになる。

前出の上級調査員キッペンバーグは、「マリには児童労働や義務教育、そして無料教育に関するしっかりした法律がある。が、不幸なことに政府が執行を徹底していない」と指摘する。「地元の役人たちは多くの場合、手掘り金鉱山でその懐を肥やしており、児童労働をどうにかせねばという気がほとんどない。」

政府は児童労働における水銀使用の停止に向け行動を取ってこなかった。子ども及び成人の鉱山労働者が、水銀によって被る健康被害に対応するための政策を、即時に策定する必要がある。水銀中毒は様々な神経症状をもたらす。具体的には震え、運動障害、視力障害、頭痛、記憶障害、集中力欠如などがある。水銀の毒性による影響は直ちに現れるものではなく、少しずつ進行する。このため、ほとんどの手掘り鉱山労働者が、その健康的影響にまだ気づいていない。

マリの手掘り鉱山から採掘された金の大半は小規模業者に買い取られ、首都バマコの仲卸業者や取引所の手に渡る。ヒューマン・ライツ・ウォッチの聞き取り調査に応じたマリ人取引業者12人のほとんどが、児童労働や水銀使用による健康への危険性について、わずかな関心しか示さなかった。ある業者は、「考えているのは、金を稼ぐことだけだ」と話していた。鉱業分野を代表する機関「マリ鉱業協会」の代表は、手掘り金鉱山における児童労働の存在さえ否定した。

ヒューマン・ライツ・ウォッチがマリ鉱山省から入手したデータによると、毎年輸出される手掘り鉱山で採掘される金の総重量はおよそ4トン、2011年11月の価格で約2億1,800万ドル。その多くはスイスとアラブ首長国連邦、とりわけドバイに輸出されている。

マリの手掘り鉱山から産出された金を購入している3つの国際企業に、ヒューマン・ライツ・ウォッチは連絡を取ることができた。ドバイに本拠地を置くカロチ・ジュエリーインターナショナル(Kaloti Jewellery International)とベルギー企業のトニー・ゴエツ(Tony Goetz)は、購入する金が合法的な供給元からであることを保証するためのデューディリジェンス手続き(適正手続き措置)を共有。カロチはヒューマン・ライツ・ウォッチが明らかにした事実を知った後、マリの手掘り鉱山から産出された金の購入を停止した。スイス企業デカフィン(Decafin)は、「少なくとも4つの仲介業者からなるサプライチェーンの一番最後に位置するため、生産企業あるいはマリ政府とは全く接触がない」とした。しかしながら、金の産出元と労働条件について供給先に確認する可能性、及びマリ鉱業協会に情報を求める可能性について言及した。

前出のケッペンバーグは、「企業は、子どもが掘った金でないことを確保する措置をまだ導入していないなら、すぐ導入すべきだ」と述べる。加えて、「鉱山での児童労働をなくすために、政府や国際機関とも協力すべきだ。ボイコットは問題解決の答えにはならない。」

手掘り金鉱山における児童労働は、世界中の多くの国々で蔓延しており、とりわけブルキナファソ、コートジボワール、ガーナ、ギニア、ニジェール、ナイジェリア、セネガルにかかる西アフリカの「ゴールド・ベルト(黄金地帯)」に共通した問題である。マリはアフリカで第3位の金産出国だ。

国連環境計画(UNEP)によると、手掘り金鉱山での水銀使用に単純にとって代わる方法は今のところないものの、その使用量を大幅に削減することや、その影響を制限することは可能だ。たとえば水銀の蒸気を閉じ込めるため、レトルト(金鉱石を入れて精錬する耐火性の円筒形容器)と呼ばれる容器を使うべきであり、人の居住地域でのアマルガム法(粉砕した金鉱石に水を加え、水銀と練って攪拌し、加熱することで不純物を取り除く方法)による精錬は停止すべきだ。先進企業では、水銀ではなく、青酸塩を使ったよりコストが高くで複雑な技術を使っている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチはマリ政府とその国際支援国・機関に次のことを要請した:

  • 手掘り採掘における全形態の児童労働を停止すべく、現行労働法を執行する
  • 2011年6月に採用された児童労働に関する行動計画を実施する
  • 教育へのアクセスを改善するため、学校授業料の全面廃止、地域の学校に対する国家支援、恵まれない子ども向けの学校教育を資金援助する助成金事業を行う
  • 水銀使用の影響に対処する包括的保健戦略を練る
  • 生活協同組合の創設などを通じて、手掘り金採掘の従事者により強力な経済支援を提供する

 

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、マリの児童労働を終わらせるためのプロジェクトへの資金援助を、米国政府が打ち切ると決定したことについて憂慮している。海外の援助国・国際機関は、危険な児童労働をなくす取り組みを、経済支援し、政治的にも支持をするとともに、技術的支援も行なうべきだ。国際労働機関(ILO)は2005年に採択した、鉱業および採石業における児童労働の撤廃を目的とした「鉱山から未成年を救う」(“Minors out of Mining”)グローバル戦略を再興すべきだ。

前出のキッペンバーグは、「金は魅惑的だが、児童労働と水銀中毒はその正反対だ。金産出の一部にこうした問題は存在すべきでない」と述べた。 

NBCニュース「Rock Center with Brian Williams」での特集"The Price of Gold: 'I don't Care if I die'" より。本報告書の著者であるヒューマン・ライツ・ウォッチの子どもの権利局上級調査員、ジュリアン・キッペンバーグとのインタビューをご覧下さい(CMの後):

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