(バンコク)「結社および非政府組織(NGO)を規制するカンボジア政府の法案は、市民社会の強化ではなく弱体化を招く。よって、撤回されるべきである」と諸NGO(ヒューマン・ライツ・ウォッチ、アムネスティ・インターナショナル、フォーラム・アジア、グローバル・ウィットネス、東南アジアプレス同盟(Southeast Asia Press Alliance)、フロントライン、そして、人権擁護活動家の保護のための監視枠組みパートナーシップ内の国際人権連盟(FIDH)ならびに世界拷問防止機構(OMCT))は述べた。

法案が通過すれば、近年のカンボジア市民社会の歴史の中で、最大の脅威となる。ゆえに、カンボジア国内で活動する計62の国際機関は、4月6日、カンボジアの経済援助国に対し、公けの場及び非公式の場で、強く反対意見を表明するよう求めた。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長、ブラッド・アダムズは「カンボジア政府のNGO法案は、公共の利益に貢献する組織をいとも容易に登録拒否したり、解散させたりすることができる」と指摘。 「過去20年間で、市民社会の発展は、カンボジアにおける数少ない継続的な達成事項の一つとなっている。本法案は、こうした過去の達成を後退させる。」

フォーラム・アジアのエグゼクティブ・ディレクター、ヤップ・スウィーセン(Yap Swee-Seng)氏は「2010年12月にこの法案が初めて回覧された際、カンボジア政府が市民社会の批判をねじ込むべく、国、州、地方自治体各レベルでこの法律が濫用されかねない、という切迫した懸念が市民社会に広がった」と言う。

法案の主要な問題点は以下のとおり。

  • 任意の登録という国際標準に従うよう再三にわたる勧告が行なわれたにもかかわらず、登録を義務化したままである点。未登録の結社・NGOの活動は禁止されている。強制登録は、カンボジア憲法ならびにカンボジアが締約国となっている市民的及び政治的権利に関する国際規約(B規約)第22条が保障する結社の自由を侵害する。 
  • 登録と報告のため過剰に煩雑な手続きが必要とされており、その結果、小規模の組織、団体、地域ネットワークが犠牲となり処罰される危険性がある点。この問題は残ったままである。新しく追加された条項は、登録通知後30営業日以内に銀行取引残高証明書を提出しなかった団体を、政府が登録リストから削除することを可能としている。この決定(しかも異議申し立てが許されない)は、資金不足でこうした行政的な手続きに対応できない、村などの地方レベルで活動している団体を特に狙い撃ちしている。また、こうした団体は、正式な法的資格のないままに正当な活動を行なっただけで、訴追される危険性もある。
  • セーフガードの欠如、有意な司法審査制度の不在、そして異議申し立ての権利の欠如という問題点が何ら解決されていない。加えて、当初の法案の問題点だった定義の曖昧さも解決されていない。当初の法案で唯一「異議申し立て」に触れられていたのは、申請が拒否された場合に「瑕疵」訂正の申立ができるという限定的な釈明の権利だった。しかし、この限定的な権利さえ、第二草案では完全に削除されてしまった。

 「過去10年間のカンボジア政府の抑圧の歴史を振り返れば、この法案の意図は、カンボジア政府が市民社会の統制をさらに強めようとしているとしか思えない」とFIDH代表のSouhayr Belhassen氏は語る。

カンボジア政府は、市民社会を規制する既存の法令があるにもかかわらず、なぜ新たにこの法律が必要なのかについて十分な答えを出していない、とこれらの団体は指摘。特に、これらの団体は、2007年制定の民法は、任意の登録制度に基づく営利・非営利団体への十分な法的枠組みであると考えている。ゆえに、この新法導入は不要である。

「世界各国は、カンボジア開発援助資金の一部として、カンボジア市民社会の能力構築および強化のために何十億ドルも費やしてきた。こうした援助が、この新法案によって無意味になる恐れがある」とグローバル・ウィットネスのディレクター、サイモン・テイラー氏は言う。「カンボジア政府が本法案を通過させるのを、援助国政府がただ傍観するのならば、カンボジアの開発目標のために援助しているという道義的資格はなくなる。」

「カンボジア政府がこの法案を撤回することを強く求める。そして、カンボジア市民社会に関するすべての法律、政策、規制を、人権を尊重し、国際標準に沿って起草・施行するよう、カンボジア政府に強く求める」と世界拷問防止機構(OMCT)事務局長のエリック・ソッタス氏は述べた。