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ウガンダ:警察部隊による拷問、脅迫、そして殺害

即応部隊の捜査を 人権侵害の責任者の訴追を

(カンパラ)ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日発表した報告書において、「ウガンダ警察の即応部隊 (Rapid Response Unit , RRU) は、日常的に法を無視した活動を行なっており、拷問や脅迫はもちろん、時には超法規的殺害にも手を染めている。ウガンダ政府当局は、部隊の活動に対して独立した捜査を緊急に開始するとともに、人権侵害に関与した全ての責任者の法的責任を問うべきである」と述べた。

報告書「警戒という名の暴力:ウガンダの即応部隊による拷問と違法監禁」(全59ページ)は、即応部隊(RRU)の重大な違法性を持つ捜査手法や、逮捕・拘禁時の深刻な人権侵害の実態を明らかにしている。この部隊は、2002年にムセベニ大統領が、ウェンブリー作戦で、ウガンダ軍の有力幹部が指揮する臨時の治安部隊として結成。以来、この部隊は暴力に満ちた違法な活動の歴史を辿ってきた。2007年には、正式に警察の指揮の下に編成され、即応部隊(RRU)と改名された。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのアフリカ局長であるダニエル・べケレは「即応部隊RRUの名前や幹部や長官を変更してみても、何も変わらない。この部隊は、人びとに対して拷問や拘禁、さらには殺害を犯し続けているのだから」と語る。 「ウガンダ政府当局はもちろん、ウガンダ警察に財政支援を行なっている援助国・機関は、即応部隊RRUの人権侵害の責任者の法的責任を真剣に問う必要がある。」

ヒューマン・ライツ・ウォッチの調査は2009年11月から2011年1月までの期間にまたがって行われ、総勢100名にのぼる人びとからの聞き取りが行なわれた。聞き取りの対象となったのは、RRUに逮捕拘禁されていた人びと、その家族、RRUの現役及び元メンバー、そして他の警察官、諜報機関の職員、弁護士、ジャーナリスト、市民社会 (NGO) の人びとなどである。

違法な取締りの実態 

RRUの任務は、「暴力的な犯罪」の捜査とされているが、隊員及び関係者は、この「犯罪」を広範囲に解釈し、軽犯罪からテロにいたるまで逮捕してきた。RRUの隊員は、通常は記章のない平服を着用し、拳銃から大きな突撃銃まで様々な銃を携帯し、覆面パトカーで活動し、トランクに容疑者を入れて移送することもあった。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの調査は、RRUが、自白を引き出すために日常的に拷問を行っていた実態を明らかにした。 RRUに逮捕されていた77人が聞き取りに応じ、そのうち60人は、拘禁中あるいは取調べ中に激しい暴行を受けたことがあると語った。2010年には、少なくとも2人が取調べ中の暴行による負傷が原因で死亡し、4人が逮捕される際に射殺された。過去の被拘禁者の中には、自身の拘禁中に、取調べの際に暴行され死亡した者を見たと語る者も複数いたが、死亡者の個人名は知らなかった。

ウガンダ全土に広がる被害者たちは、異口同音に、RRUの隊員から取り調べ中にほぼ同様の手口で暴行を受けた、と言う。その手口とは、拘禁中、手を脚の下に回されて手錠をかけるという苦しい姿勢を数日間強要され、その間、関節部分を棒で殴られる、という暴行であった。さらに警棒、ガラス瓶、傘、金属パイプ、南京錠、テーブルの脚などで被拘禁者を殴る行為が常態化している。時には、RRUの隊員が被拘禁者の爪の下に釘を刺す、あるいは感電させるなどの拷問が行われたケースもあった。あらゆるレベルのウガンダ政府当局者は、これらの所業を終了させるとともに、責任者を起訴する責任があると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

過去、拳銃所持を疑われてRRUから拘禁された男性は、ヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、逮捕と取調べの様子をこう語った。

「彼らは私に手錠をかけると、コーラのガラス瓶で殴ってきたんだ。友人は執拗に耳を殴られていた。RRUの隊員は「銃はどこにあるのか吐け」と罵りながら、くるぶし、顔、耳、ひじを殴った。彼らは私をRRU の事務所に連行すると、70,000シリング(US$30相当)をふんだくった。その挙句、自宅まで連れ戻すと家宅捜索し再び拷問し始めたんだ。」

RRUに拘禁された人びとは、一様に捜査中に金銭を盗まれた、と訴える。中には、家族がRRU幹部に現金を支払うならば釈放すると告げられた人びともいた。強盗の被害者たちが、ヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、強盗被害にあったお金は捜査の過程で発見されたにも拘わらず、RRUの幹部がそのお金の全部または一部を着服した、と訴えるケースも複数あった。

強制された自白と違法訴追

RRUに逮捕・拘禁されていた人びとがヒューマン・ライツ・ウォッチに語ったところによれば、RRU隊員は、被拘禁者に対し、暴力を加えて調書への署名を強制。ヒューマン・ライツ・ウォッチの聞き取り調査に応じた者の中で、憲法上の規定である48時間以内の裁判所への起訴の期限が守られた者はいなかった。法律には家族や弁護士が被拘禁者と面会する権利が定められているにも拘わらず、この規定が無視されるケースがほとんどだった。

RRUにより逮捕された人びとは、大抵の場合、RRU本部のあるカンパラのキレカ (Kireka) に拘禁される。そして軍事法廷で裁判を行うため、軍当局に身柄を引き渡される。 2009年、ウガンダ政府の憲法裁判所は、軍事法廷は民間人に対する裁判の管轄を持っていない、と判示している。しかも、アフリカ委員会(African Commission) も、軍事裁判所における民間人の裁判を禁止している。しかし、ウガンダ政府当局は、これらの判決を無視して、違法な訴追を続けているのである。

軍事法廷の裁判官たちは、拷問されたという詳細な証言を前にしても、何ら人権侵害に対処する措置を講じていない。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、拷問を通じて引き出された自白が、証拠の収集方法や収集源の適切な精査もないまま、軍法会議で証拠として許容されたことを確認している。

超法規的殺害

RRUによる拘束中に死亡した人や、その他RRUの人権侵害によって死亡した人の人数については、正確な数字はない。しかし、ヒューマン・ライツ・ウォッチの調査によれば、2010年中に少なくとも6人が超法規的に殺害された。 1月にはRRU隊員が4人を射殺し、5月にはヘンリー・バカサム (Henry Bakasamba)が、外国為替管理局の強盗について尋問を受けている最中に死亡した。 8月には、RRU隊員が22歳のフランク・セカニジャコ (Frank Ssekanjako) を強盗容疑者として暴行し、その後まもなく死亡させた。3人の隊員がセカニジャコの殺害の容疑で逮捕、起訴されたのは前向きな一歩ではある。しかし、これらのRRU隊員は、セカニジャコの共犯者として逮捕された人物に対してもひどい暴行を加えたにも拘わらず、この傷害事件については起訴されていない。


3人の隊員が逮捕・起訴されたことは、RRUの常態化した人権侵害の実態に対し、政府当局がこれに真剣に向き合う決意を示す重要な機会である。しかし、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、セカニジャコの殺害に関する捜査がしっかりとなされるか懸念している。警察の捜査を見ると、当局が最適な証拠を得るために尽力しているのか疑問である。たとえば、警察は、セカニジャコの正確な死因を調べるための重要な目撃者の供述を集めていないし、RRU部隊の職員がセカニジャコ及び共犯被疑者に対して加えた暴力の全体像を調査・文書化する努力も行なっていない。

テロ関与調査

RRUは、2010年7月に79人が死亡したカンパラでの爆発事件の捜査に深く関与している。容疑者の中には、部隊に連行されて捜査を受け、音信不通の所在不明状態におかれたり、定期限を超えて拘束されたケースもあった。爆破容疑で起訴された人物のなかには、更なる尋問のために刑務所からキレカ(Kireka) のRRU本部に連れ戻されたケースもあった。さらには、アメリカ連邦捜査局の捜査官がくつかのケースで尋問を行ない、この地域で続いている対テロ作戦の情報提供者として協力する意思のある人物を探そうとしたことを示す証拠も存在する。

外国の捜査官や、ウガンダ政府のカンパラ爆破事件の捜査を援助している国際捜査官は、人権侵害に手を染めているRRUなどの部隊と協力すべきではない、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

新しい指揮官

2010年11月に、ウガンダ警察長官は、RRUの長官を新たに任命した。その新長官は、自らが、苦情対応や、市民がRRUと情報交換するための公開フリーダイヤルの電話回線を確立するなど、多数の変革を行なってきた、とヒューマン・ライツ・ウォッチに主張。新長官は苦情に対処するために、批判も甘んじて受け、市民社会と密接に協力していきたいと語る。

「新長官がRRUの改革を宣言するのは確かに重要だ。しかし、言うは易く行うは難し、である」前出のベケレは述べる。 「拷問されて訴追され、そして拘禁中の人びとは、苦情窓口に電話をかけることも、報告することもできない。弁護士が尋問に同席することを許すとともに、人権侵害や拷問に手を染めた隊員たちに対して行動を起こし、不処罰の常態化を根絶する必要がある。」

政府の法的義務

ウガンダ政府は国際法に則り、警察と治安部隊による人権侵害の捜査の申立を行い、法的責任を問う必要がある。政府当局がこれらの人権侵害をなくすために積極的役割を果たし、拷問や違法な拘禁の申立のもと、適切に捜査され訴追されることを確実にするべきである。ウガンダの政府システムの下では、裁判所も検察もRRUの捜査方法の適法性に異を唱えるべきであり、拷問または他の強制的な方法で引き出された自白などの証拠を除外すべきである。ウガンダ議会も、先延ばしにされてきた拷問を犯罪化する法律を通過させるため、緊急に行動するべきである。

「もし警察が、法を無視し、被拘禁者を拷問し、適正な法の手続きを軽視するのであれば、警察が尊敬されることはない。そして、市民が自分たちを保護する存在として警察を信頼することもありえない」と前出のベケレは述べる。 「RRUの暴力を助長、又は容認するウガンダ政府のあらゆるレベルの関係者も、責任を問われる可能性がある。」

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