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エジプト:平和的な抗議運動への実弾発砲を止めよ

カイロとアレクサンドリアで数十名を殺害

エジプトからのライブ・アップデート

(カイロ)-「エジプト政府は、治安部隊とりわけ警察と私服治安当局者に、平和的な抗議運動参加者や通行人に対する実弾発砲を止めるよう命令を出すべきである。」ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日こう述べた。デモ参加者数十名が殺害されたという報道に続いて、ヒューマン・ライツ・ウォッチはアレクサンドリアで少なくとも33名が殺害されたのを確認。それとともに、カイロ中心部にある2か所の遺体安置所に少なくとも80から100の遺体があるという信頼するに足りる報告を受けている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチはエジプト軍に対し、適法な抗議運動に対し自己抑制的な態度をとり続けるよう強く求めるとともに、兵士や警察官には、正当な理由なくデモ参加者に対して発砲若しくはその命令をした場合には訴追される可能性があると警告。エジプト政府当局は警官と私服警官が実弾発砲した事件への捜査を直ちに開始するとともに、殺人や傷害に関与した者を訴追しなければならない。

ヒューマン・ライツ・ウォッチ中東局局長代理ジョー・ストークは、「デモと対峙した際にエジプト警察が見せた情け容赦のない残虐行為に、エジプト軍が追随しないよう期待する」と述べる。「警官と私服警官は、実弾使用や催涙ガス弾の水平射撃など、正当な理由もないまま人びとに対し発砲していると見られる。発砲を命じた者は、いかに政府高官であろうと責任を問われなければならない。」

ヒューマン・ライツ・ウォッチは米国政府に対し、エジプトの法執行機関へのあらゆる援助、協力をただちに停止するよう強く求めた。非暴力の平和的な抗議運動に発砲した疑いがあるからである。米国政府は、催涙ガスを含む犯罪抑止用装置のライセンスも停止すべきである。

カイロでは、略奪が起こっているという報告に加え、アレクサンドリア市近郊のシディ・バシル(Sidi Bishr)、ボークラ(Bokkla)、アーサフレ(Assafre)では街頭にはまったく警察や内務省の治安当局者の姿がない、と報告されている。「法執行職員による強制力及び武器の使用についての国連基本原則(United Nations Basic Principles on the Use of Force and Firearms by Law Enforcement Officials)」の規定のとおり、治安部隊は犯罪抑止のための合理性と必要性を満たす場合、比例原則に則った武力行使の権利を有している。しかし、本原則には、火器の使用は、死の危険や重傷を負う重大かつ差し迫った危険にさらされた状況のみに限られると規定されている。

アレクサンドリア市内では、住民がヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、自宅を守るために近隣住民委員会を設立中であると話した。その内少なくとも一つのグループが掠奪者からの保護活動のために軍に支援を要請したものの、軍は既に手一杯で今のところ何もできないと伝えられた、とのこと。アレクサンドリア市に展開中の軍は、地元住民に人民財産保護委員会(Popular Committee for Protection of Property)のコーディネートを依頼し、1月30日には援軍が到着する予定であると述べた。カイロではヘリオポリス(Heliopolis)とモハンデーシン(Mohandessin)、マーディ(Maadi)、ショウブラ(Shoubra)の中産階級の居住地域で略奪が起きているという報道があり、ヒューマン・ライツ・ウォッチのスタッフは、地元住民グループが自宅を守るために地域のパトロール隊を立ち上げたのを目撃している。

ヒューマン・ライツ・ウォッチがカイロ市のデメルダシュ(Demerdash)病院の医療関係者に確認したところ、前日午後2時以降、銃傷を負った100名以上の抗議運動参加者を受け入れ、これまでにそのうち30名が死亡した、とのこと。カスル・エル・アイニ(Qasr al Aini)病院のある医師は、同病院を訪れたヒューマン・ライツ・ウォッチの調査員に対し、頭部に銃傷を負った9名分の遺体を目撃したこと、及び2011年1月28日の夜には病院内に「少なくとも50から70名分の遺体があった」と証言した。同医師は匿名を希望。氏は、「催涙弾の直撃を受けた男性を治療したが、その後その男性は死亡した。催涙ガスの吸入での窒息による心停止と見られる」と語った。

アレクサンドリア市内で調査を行なったヒューマン・ライツ・ウォッチ調査員は、アレクサンドリア総合病院の遺体安置所で13名の男性の遺体を目撃。また、ある弁護士はヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、同市の2つ目の遺体安置所で20名分の遺体を目撃した、と話した。銃傷を負い同病院の緊急治療室で治療を受けるのを待つ多くの負傷者のうちの一部がヒューマン・ライツ・ウォッチの調査に答えて、「制服警官と私服治安当局者に実弾で撃たれた」と語った。一部は、銃撃された時自宅にいた、と証言。その際、警察は彼らが物を投げていたと疑っていたという。

ある弁護士はヒューマン・ライツ・ウォッチに「アレクサンドリア市内にあるコム・アル-ディーカ病院(Com al-Dikka)の遺体安置所で、射殺されたいとこの遺体を確認しに行き、20名分の遺体を見た」と語った。アレクサンドリア市には3か所の遺体安置所があるが、ヒューマン・ライツ・ウォッチは3つ目の遺体安置所からの情報は入手できなかった。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、「アレクサンドリア市内で制服を着た警官と私服警官が実弾射撃を行なった状況には2種類あると見られる。ほとんどの場合は、警察署に襲撃を行った抗議運動参加者を警察が撃った場合。その他には、私服警官が、窓から警官に物を投げつけたと疑いをかけた市民に発砲した場合である」と指摘。目撃者たちはヒューマン・ライツ・ウォッチに「制服警官よりむしろ私服警官が実弾を発砲していた」と語っている。さらに、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、複数の警官が催涙ガス弾を抗議運動参加者の頭を狙って水平発射するのを目撃。その後、催涙ガス弾の顔面直撃によって殺害されたと見られる男性の遺体を少なくとも1体確認している。

脚を撃たれたある男性はヒューマン・ライツ・ウォッチにこう語った。「1月28日午後6時30分、友人と一緒にカフェでお茶を飲んでいたところ、警察が、外出禁止令が出ているので立ち去るよう命令。そのおよそ30分後に警察署の前を通り過ぎたとき、複数の警察官が私たちの一団に石を投げつけてきたんだ。そして次の瞬間、何の理由もなく発砲され、それで負傷した。」

ヒューマン・ライツ・ウォッチの取材に応じたもう1人の男性は、「私服の情報局員が私のアパートに来て、窓から警官に向かって物を投げていたと非難すると、自分に発砲してきた。」と語っている。

1月29日の夕方近くまで、アレクサンドリア市内では大規模な抗議運動が続いており、その情勢は非常に緊迫していた。同市内の多くの警察署が1月28日に焼き討ちに遭っている。デモ参加者は情報局の建物を焼き討ちしようとしたが失敗している。軍はアレクサンドリア市街に展開していたものの、夕暮れまでその事態に介入しなかったのだ。

ヒューマン・ライツ・ウォッチが取材した目撃者によれば、「カイロ市内のタハリール広場(Tahrir Square)とコルニーチェ(Corniche)にいるデモ参加者が、早い段階でエジプト軍に同地域の治安管理を明け渡していたにもかかわらず、そこに戻ってきた警察によって襲撃された。」とのことだ。軍は抗議運動の鎮圧に手を貸している様子はなく、幾つかのテレビ局は、横断幕を掲げようとするデモ参加者を手助けする兵士たちの映像を流している。

カスル・アル・アイニ(Qasr al Aini)病院の外で親族と一緒にいたある女性はヒューマン・ライツ・ウォッチにこう語った。「夜街頭に出ていた息子が、首を撃ち抜かれた。頸椎を損傷して、腰から下が麻痺状態になった。」ヒューマン・ライツ・ウォッチ調査員はカイロ近郊のドキ(Dokki)にある民間病院で、31歳のタクシー運転手が肩・腕・肋骨に破片によると思われる重傷を負っていたのを目撃した。その運転手は撃たれたと言っていたが、どのような発射物がその傷をもたらしたのかは不明だった。

ドキ(Dokki)にあるもう1つの民間病院の職員はヒューマン・ライツ・ウォッチに語った。「国家治安調査局(State Security Investigations)の当局者がその病院に、同病院が収容した負傷している抗議運動参加者全ての姓名・住所・身分証明の詳細を、当局に提供するよう命令した。」その病院職員は従う以外に選択肢はなかったと語った。

夕方近くまでの間に、外出禁止令にも拘わらず、少なくとも1万人の平和的な抗議運動参加者がタハリール広場(Tahrir Square)に集まっていた。戦車の中で監視する兵士をよそに、お祭り騒ぎの様相を呈していた。しかし午後4時30分、ヒューマン・ライツ・ウォッチの調査員は内務省の近くで銃声を聞いた。目撃者は男性3名が射殺されたことをその目で確認し、ヒューマン・ライツ・ウォッチのスタッフはその他に、銃傷を負い治療を受けている少なくとも8名の人びとを目撃している。銃撃されたうちの1人は「内務省を警備している機動隊に撃たれた」とヒューマン・ライツ・ウォッチに証言した。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは米国とEUに対し、抑圧的な現政権への援助戦略の再検討を迫り、代わりにエジプトのホスニ・ムバラク大統領に、基本的人権を尊重する政府へただちに移行を開始するよう最大限の圧力を掛けることを強く求めた。その第一歩として、数十年にわたるエジプト国内の人権への弾圧と攻撃を支えてきた、数々の非常事態法の即時撤廃を断行すべきである。次に、組織的な拷問を含めた治安部隊による重大な人権侵害への説明責任が問われるべきである。

「中東での弾圧政権を支援する戦略はとうの昔に有効期限切れであるどころか、今や政情不安の大きな要因の一つである。」と前述のストークは語った。「米国とEUはエジプト政府に、数々の非常事態法を直ちに停止するよう圧力を掛けるべきである。そしてその次の手段は、エジプト国民の人権を長期にわたり侵害してきた治安部隊に対してその責任を問うことである。」

ヒューマン・ライツ・ウォッチはさらに、「エジプト軍が抗議運動への対処において人権を蹂躙する役割を担うことになれば、オバマ政権はエジプトに対する軍事援助を停止するべきである」と指摘した。

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