(ニューヨーク) - 政治活動や信仰する宗教を理由に、数十人の大学生が投獄され、数百人が放校処分を受けている。イラン国内が「学生の日」を祝う本日、ヒューマン・ライツ・ウォッチはこう述べた。投獄中の学生の多くは、現政権に批判的な立場をとる著名な学生団体の幹部だ。

イランの現政権は、権力を確立するため政府批判行動を力で押さえ込んでいるが、大学生たちが押さえ込みの対象となる事件が益々増えている。2005年以降、マフムード・アフマディーネジャード大統領率いる現政権は、大学での反政府運動を無力化し、高等教育を「イスラーム化」する多角的な取り組みを推進している。この取り組みの先頭に立つのは教育、科学技術、情報の各省。しかし、その一環として、学生活動家の投獄や、政治活動に関わる学生やバハイ(バハーイー)共同体(バハイ教の信者集団)構成員の高等教育からの排除、大学の規律委員会を通した学生の監視、停学・退学処分の実施のほか、バスィージ(強硬派のイスラーム主義系準軍事組織)関係の親政府学生団体を増加させる一方で、学生団体の活動に制限を加えている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチの中東局長代理ジョー・ストークは、「イラン政府は、学生活動家を国家安全保障上の脅威であり、『外国分子』に操られていると批判する。しかし、学生運動の撲滅と学問の自由の制限を意図する作戦のカモフラージュにすぎない」と指摘。「学生たちはこうした圧力をものともせず、大学や社会のあらゆるところで、自由の拡大を求める闘争の最前線に立っている。」

最近の学生指導者の大量逮捕は2010年11月に起きた。治安部隊と情報部員が、団結強化事務所(Tahkim-e Vahdat、Office to Foster Unity)のメンバー4人を逮捕した。同事務所はイラン最大規模の学生団体で、政府からは非合法団体と見なされている。

学生の日(イラン暦アーザル月16日)は、1953年12月7日にパーレビ朝の治安部隊によってテヘラン大学で殺された学生3人を記念する日だ。 2009年の学生の日には、イラン全土の大学でデモが起き、同年6月の大統領選挙の結果をめぐって多くの学生が怒りを表明した。

当局は、政府を批判する演説を行ったアミール・キャビール工科大学の学生で同大学のイスラーム学生協会支部に属するマジード・タヴァッコリーら数十人を逮捕した。革命裁判所は、同氏について「国家安全保障に対する謀議」や「反体制宣伝」のほか大統領と「最高指導者の侮辱」など一連の治安関連の容疑で有罪とし、8年6カ月の判決を下した。氏は現在テヘランのエヴィーン(エヴィン)刑務所に収監されている。

団結強化事務所に近い消息筋によれば、2010年11月現在、政治活動や非合法の学生団体に関わったとの理由で、イラン全土で学生70人以上が投獄されている。

最新の一連の逮捕劇の中で、11月5日、情報省職員によってアリー・ゴリーザーデも逮捕された。氏は北東部マシュハド市にある父の自宅で、逮捕状なしで身柄を拘束された。逮捕状なしの逮捕はイラン法に違反する。その2日後に、マーザンダラーン大学キャンパスの外でアリー・レザー・キヤーニーが私服の情報省職員に逮捕された。また同じ日にバボール市でモフセン・バルゼギャルが、西部シャフレ・コルド市でモハンマド・ヘイダルザーデが当局に逮捕された。当局は4人全員をテヘランのエヴィーン刑務所に移送したが、11月後半から12月上旬にかけてゴリーザーデ、キヤーニー、ヘイダルザーデを釈放した。しかしバルゼギャルは依然としてエヴィーン刑務所の第240セクションに拘束されており、弁護士や家族の接見も許可されていない。

団結強化事務所は11 月8日付の声明で、4人が狙われたのは同事務所の中央委員に選出されたところだったからだと当局を批判した。団結強化事務所に近い消息筋がヒューマン・ライツ・ウォッチに語ったところによれば、当局が4人を逮捕したのは、毎年行われる役員選挙の公式結果を同事務所が発表する直前だった。今年の投票は安全上の問題からインターネットによって行われた。

10 月31日に、情報省に近いとされるペルシア語ウェブサイト「ラージャ・ニュース」は、団結強化事務所が非合法組織であると繰り返した上で、複数のメンバーが、クルディスタン自由生活党(PJAK=ペジャーク)やモジャーヘディーネ・ハルグ(MEK、ムジャヒディン・ハルクとも)と関係があると非難する記事を掲載した。イラン政府はこの2つの団体をテロ組織と見なしている。団結強化事務所など複数のペルシア語ウェブサイトはこうした主張を退けた上で、一連の逮捕は、学生運動への信頼を低下させ、政府批判運動を押さえ込もうとする政府側の最新の作戦の一環だと述べた。

科学技術研究省は、2009年に団結強化事務所を非合法化。不正疑惑のある2009年6月の大統領選挙後、治安部隊は大規模な弾圧を行って団結強化事務所の幹部ら学生200人以上を拘束したが、その多くは2009年11月~12月前半にかけて逮捕されている。その数カ月前には治安部隊がテヘラン大学を襲撃し、複数の学生を殺害しており、その数週間後に学生の日の出来事が起きている。

イラン政府当局は多数の学生を何週間も外部交通を遮断したまま拘束。検察による起訴が行われるまで弁護士の面会を許可しなかった。拘束された学生の多くが、治安機関や情報省の職員から拷問を受け、虚偽の自白を強要されたという。司法権は革命裁判所の非公開法廷で学生たちを訴追した。

2009年に逮捕された団結強化事務所の中心メンバーには、他にバハーレ・ヘダーヤトとミーラード・アサディーの2人がおり、現在エヴィーン刑務所で服役中だ。ヘダーヤトは同事務所女性委員会第一書記で、中央委員に選出された初めての、また現在のところ唯一の女性だ。当局は2009年12月30日に氏を逮捕し、「反体制宣伝」や「非合法集会参加」、「大統領侮辱」といった治安上の容疑で起訴した。革命裁判所は5月、氏に9年6カ月の刑を宣告した。アサディーは治安部隊によって2009年11月 30日に逮捕された。革命裁判所第28支部のモギセフ判事は氏に対して、ヘダーヤトと似た一連の治安「犯罪」の容疑で7年の刑を宣告した。

当局は団結強化事務所以外の学生団体やその構成員も弾圧の対象としている。団結強化事務所の関連団体のイラン・イスラーム大学卒業生協会(アドヴァール)や教育権擁護委員会(CDRE)などだ。複数の卒業生協会中央委員のうち、アフマド・ゼイドアーバーディー、アブドッラー・モメニー、アリー・マリーヒー、アリー・ジャマーリー、ハサン・アサディー・ゼイドアーバーディーらがエヴィーン刑務所に収容されている。治安部隊は、同協会のゼイドアーバーディー書記長とモメニー報道官を昨年の大統領選後の事態を受けて逮捕した。ゼイドアーバーディー、モメニー、マリーヒーの3人は現在、「非合法集会参加」と「反体制宣伝」、「大統領侮辱」など治安上の容疑で14年11カ月の刑に服している。

2009年9月にモメニーは最高指導者アーヤトッラー・サイエド・アリー・ハーメネイーに公開書簡を送り、エヴィーン刑務所での虐待と拷問を詳述した。氏は1999年7月の学生運動の指導者の1人だった。

教育権擁護委員会共同創設者のズィヤー・ナバヴィーは、アフヴァーズのカールーン刑務所で10年の刑に服している。氏は情報省職員により2009年6月15日に逮捕され、「モジャーヘディーネ・ハルグとの関連や協力」など一連の国家安全保障関係の容疑で検察から起訴されていた。学生活動家で委員会メンバーのマフディー・ゴルルーは2009年11月3日から投獄されている。2009年4月に革命裁判所は氏に国家安全保障関連の犯罪容疑について有罪を認定し、2年6カ月の刑とした。委員会共同創設者の一人マジード・ダリーも学生活動を理由に6年の刑を宣告されて服役中だ。

イラン人権国際キャンペーンの最近の報告書によれば、2005年から現在までにアフマディーネジャード政権は政治的・宗教的理由により200人以上の大学生を退学処分にしている。

ナバヴィーとゴルルー、ダリーは2008年に教育権擁護委員会を結成したが、いずれもその前に当局から退学処分を受けている。同委員会は政治的・宗教的理由から学生を退学にする政府のやり方を公表・批判した複数の学生団体の1つだ。この他には「教育差別と闘う住民」という団体がある。バハーイー教徒の大学入学を拒否し、また「バハーイー教徒であることが発覚した時点で」当該学生を退学にする政策の廃止を主に目指している。2009年に当局はアゴリーザーデとバルゼギャル(共に最近逮捕された団結強化事務所メンバー)に退学処分を下している。

「アザール月16日(学生の日)を迎えるにあたり、イラン政府は学生たちに敬意を表し祝福するのではなく、学問の自由への締め付けを相変わらず強化している」と前出のストークは指摘。「この機会に当局がすべきことは、根拠のない容疑で獄中にある数十人の学生を釈放し、政治的・宗教的理由で教育の機会を奪われている数百人の学生に復学を許可することだ。」