This file image from a frame grab shows Burma's opposition leader Aung San Suu Kyi walking to the third day of her trial at Rangoon's Insein Prison, after the junta allowed diplomats and media to observe the trial on May 20, 2009.

© 2009 Reuters

(ニューヨーク)-ビルマの民主化運動の指導者でノーベル賞受賞者のアウンサンスーチー氏が自宅軟禁から解放された。これに続いて、ビルマ軍事政権は、2,100名以上にのぼるその他の政治犯も解放しなくてはならない、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。ビルマの法律で本日2010年11月13日に軟禁期限を迎えていた。

「アウンサンスーチー氏はそもそも投獄されるべきでなかった。今彼女を釈放するのは、正当性のない選挙から国際社会の関心を逸らす、軍事政権の策略に他ならない」とヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長代理エレーン・ピアソンは語る。

ビルマでは、11月7日、現在の軍事政権による支配を表むき民政化し、もって軍支配の制度化を目論む選挙が行なわれた。アウンサンスーチー氏の釈放はその直後のこと。ビルマの軍事政権の指導者らは、同国の独立の指導者アウンサン将軍の娘であるスーチー氏をこれまでも繰り返し投獄してきた。彼女がビルマにおける民主主義と人権のカリスマ的存在であるとともに、野党・国民民主連盟(National League for Democracy: NLD)の指導者であったためである。同党は1990年に選挙で圧倒的勝利を収めたが、軍事政権は選挙結果を無視していた。

スーチー氏は過去21年のうち15年を自宅軟禁下で過ごした。まず、ビルマの軍事政権が初めて彼女を拘束したのは、1989年。以後1995年まで自宅軟禁した。更に2000年から2002年まで、軍事政権=国家平和発展評議会 (State Peace and Development Council: SPDC) は再度彼女を自宅軟禁。さらに、2003年に、スーチー氏が国内を遊説旅行していた際、彼女の車列が襲われるという事件が発生。その事件後から、SPDCはスーチー氏を3度目となる自宅軟禁下に置いた。2008年5月にその期限が1年延長され、2009年5月にも期限を違法延長した。

軍事政権は、2009年5月に起きたスーチー氏の自宅近くにある湖を米国人男性が泳いで渡ったという奇怪な事件を、彼女を裁判にかける口実に利用。こうしたことは、スーチー氏の複数の拘束期間中で初めてのこと。その裁判で彼女は更に18ヵ月の自宅軟禁を言い渡された。ビルマでの政治関連事件の裁判は、独立性のない判事によって行われ、公正な裁判に関する国際基準は満たさない。

「スーチー氏は拘束から自由への回転ドアの中に20年以上も置かれたままだ。だから、今回、彼女がいかなる条件下でどれだけの期間自由でいられるのか、監視が必要だ」とピアソンは語る。「軍事政権が選挙の後、政治的な自由を少しでも拡大する気なら、次には、全ての政治犯を即時無条件に解放するはずだ。」

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、今月行なわれた選挙は信頼できないと述べる。選挙を監視するためのビルマ入国が禁止された事に併せて、特に少数民族地域で軍政派政党に対する支持強化のための「期日前投票」など、重大な不正報告が多数なされているためである。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのキャンペーン、「2010年中に2100名 (2100 in 2010):ビルマの全政治囚の解放を」は、2010年中にビルマの全政治囚釈放に向けて、国際的な関心と働きかけを強めることを目的としている。以下に、市民運動の指導者、ジャーナリスト、僧侶、芸術家、学生その他ビルマ軍事政権を批判する人びとの拘束に関する主だった事実を掲げておく。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、今後は、関心の目を、ビルマの不潔な牢獄に今なお拘束されている人権活動家や政治囚のリーダーたちに転ずるべきであると述べた。例えば、以下にあげる人権活動家や政治囚たちである。

ザーガナー (Zargana)。ビルマで最も有名なコメディアンで、サイクロン・ナルギスに対する軍事政権の対応が不十分だったと批判したため、35年の刑に服している。

スースーヌウェ(Su SU Nway)。女性労働者の権利の活動家で、ビルマに訪問中だった国連特使が宿泊するホテルで、ビルマ政府を批判する横断幕を掲げたため、8年の刑を受け、現在服役中である。

ウ・ガンビラ (U Gambira)。2007年8月から9月にかけて起きた「サフラン革命」とも呼ばれる非暴力の抗議運動の指導者のひとり。30歳の仏僧で、63年の刑を受け、現在服役中である。

ミンコーナイン(Min Ko Naing)。元学生指導者で65年の刑を受け、現在服役中である。

ネーポンラッ(Nay Phone Latt)。2007年の民衆抗議運動に関するニュースを自身のブログを通じて広めた30歳のブロガー。12年の刑となった。

アウンサンスーチー氏の釈放を受け、ヒューマン・ライツ・ウォッチは、世界の指導者たちに対し、ビルマで今なお獄中にある2千名を越える政治囚の解放にむけ、働きかけを強めるよう求めている。