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イラン:人権活動家の釈放と公正な裁判を

重罪に問われるシーヴァー・ナザル・アーハリー

(ニューヨーク) - 「イラン司法権は人権活動家シーヴァー・ナザル・アーハリーの公正な裁判を保障すべきだ。」ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日こう述べた。これには弁護士への完全なアクセス、彼女が防御を準備する十分な時間、そして氏に不利な証拠に反論できることなどが含まれる。このほか、国際法とイラン国内法に反する措置である、氏の公判前の勾留を解くべきだ、ともヒューマン・ライツ・ウォッチは指摘した。裁判は2010年9月4日に始まる予定。

治安部隊は2009年12月20日に、アーハリーと、人権報告者委員会(CHRR)で共に活動するクーヒャール・グーダルジー、サイード・ハエリの2人を逮捕した。3人は著名な反体制派聖職者の大アーヤトッラー・ホセイン・アリー・モンタゼリーの葬儀に参列するためにコム行きのバスに乗るところだった。検察官はアーハリーを「犯罪目的での結集と共謀」(イスラーム刑法第610条)、「反体制プロパガンダ」(同500条)と、文字通りには「神への敵意」(モハーレベ)を表す定義の曖昧な罪「武力による体制破壊」(同183、186及び190~191条)で起訴した。この罪は死刑を下すこともでき、反体制武装組織に属しているとして起訴された人びとにしばしば用いられている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのジョー・ストーク中東局長代理は「シーヴァー・アーハリーら多数の活動家が標的になっていることは、イランの人権状況が悪化している証拠だ」と述べる。「氏には非常に重い罪で起訴されているが、政府が氏に良心的で公正な裁判を保障することはまずありえない。」

アーハリーとアフルーズ・マグズィの代理人を務めるモハマッド・シャリーフ弁護士はヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、依頼人であるアーハリーの起訴状の閲覧を初めて許可されたのは、氏の最初の公判が行われた5月23日の約2週間前だった(その後公判は開かれていない)。シャリーフ弁護士は、アーハリーが「武力による体制破壊」(モハーレベ)罪で起訴されているのは、氏が反体制組織モジャーヘディーネ・ハルク(MEK)に関わっているとの嫌疑が理由だとする。検察側はしばしば、人権報告者委員会メンバーなど人権活動家や反体制活動家に対し、MEKと関わりがあるとの嫌疑をかける。これが「武力による体制破壊」容疑での起訴につながることが多いが、検察側がMEKとの関係が存在していることを立証することはまずない。

アーハリーはMEKとの関係を否定している。シャリーフ弁護士はヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、起訴状には、依頼人であるアーハリーがこの団体と関係があることを示す証拠も、国家に対して武装蜂起を行ったことを示す証拠も一切なかったと述べた。同弁護士はまた、その他の治安関係の容疑は、おおむね、人権報告者委員会でアーハリーが行っていた人権活動に関わるものだとした。

人権報告者委員会のメンバーのひとりは、ヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、第一回の公判で革命裁判所第26支部ピル・アッバシ判事は起訴状を検察庁に戻し、アーハリーがモジャーヘディーネ・ハルクと関係があるという検察側の主張の中身を説明することなどを求め、次回期日を9月4日とした。今年初めに人権報告者委員会のメンバーがヒューマン・ライツ・ウォッチに語ったところによれば、捜査側はアーハリーらに対し、MEKとの関係を自白するよう圧力を掛けており、アーハリーの逮捕以降、国営メディアは彼らが反体制組織MEKの関係者だとの中傷キャンペーンを一貫して行っている。

当局はアーハリーをエヴィーン(エヴィン)刑務所の一般女性区画に収容している。刑務所当局はこの数カ月間、家族の面会を短時間許可しただけだ。彼女の家族に近い人権活動家はヒューマン・ライツ・ウォッチに対し「女性区画の衛生状況は最悪」で「温水は出ず、シラミがいるので、洗濯用洗剤で洗髪するほかない」と話した。

5月23日の公判以後、当局はシャリーフ弁護士にアーハリーとの面会を許可していない。

「一般的な面会ならば弁護士はただ拘禁施設に出向き、依頼人からの弁護士選任届を出せば面会ができる。だが政治囚の場合は司法当局の許可書が必要になる」と同弁護士は述べる。「しかし残念ながら、[司法権は]私が担当する今回のケースでは許可書を発行していない。」

同弁護士はまたヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、イラン国内法に基づき、依頼人の「一時的な勾留」は2カ月毎に審査・更新される必要があること、また司法権は勾留延長に関するいかなる決定にも異議を申し立てる権利を認めているほか延長が必要な根拠を示す必要があることを説明した。

アーハリーと共に拘束されたクーヒャール・グーダルジーは、2010年6月に革命裁判所第26支部から「反体制プロパガンダ」とその他の治安関係の容疑で有罪とされ、1年の刑を宣告されている。氏ら計17人の囚人は、刑務所当局からの虐待に抗議するハンガーストライキを行ったことで、7月には独房拘禁状態におかれた。サイード・ハエリもアーハリーと共に逮捕されたが、2010年3月に釈放された。

イランは市民的及び政治的権利に関する国際規約(B規約)の締約国である。同条約の第9条は「刑事上の罪に問われて逮捕され又は拘禁された者は、裁判官又は司法権を行使することが法律によって認められている他の官憲の面前に速やかに連れて行かれるものとし、相当期間内に裁判を受ける権利又は釈放される権利を有する」と定める。また、釈放の前提として裁判への出頭が保証されることを認めつつも、「裁判に付される者を拘禁することが原則であってはならい」とも定める。被拘束者は「裁判所に対し、当該拘禁が合法か否かを遅滞なく判断することを求める権利を有するとともに、その拘禁が違法である場合には、その釈放を命ずるよう裁判所で手続をとる権利を有する。」

第14条は、当局に対し、被拘禁者が「防御の準備のために十分な時間及び便益を与えられ並びに自ら選任する弁護人と連絡すること」(第14条3項b)を許可し「不当な遅延なく裁判を受けること」(第14条3項c)を義務づける。

「イラン政府は、氏を劣悪環境下で長期間公判前に拘束し、曖昧な表現の重罪で氏を起訴し、弁護士へのアクセスを妨害している。イラン政府はアーハリーが持つ、公正な裁判に対する基本的権利を侵害している」と前述のストークは述べる。「唯一の筋の通った行動とは、氏を釈放し、弁護士との面会を許可することだ。そうすれば氏は自分を弁護する時間が取れる。」

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