(ワシントンDC)-ヒューマン・ライツ・ウォッチは本日発表の報告書で、米国議会とオバマ政権は、移民制度の改革案に、かならず、日常生活及び司法の場における移民の保護を含むべきである、と述べた。本報告書には移民法改正に関する、ヒューマン・ライツ・ウォッチの一連の提言が列挙されている。たとえば、移民が職場で搾取される事例が多い(性的虐待や不公平な労働条件も含む)という問題を解決するための提案など、様々な提言が行なわれている。
報告書「"厳格で公平で現実的"な人権枠組みを:米国における移民法改正にむけて」(全22ページ)は、米国の移民法を改善するための枠組みを提案。移民が犯罪の被害者となった場合の法の捌きを求める機会を保障することや、移民労働者の保護、長期在留者のプライバシーや家庭生活の尊重、司法における公正な取扱いなどを保証することを掲げている。
ヒューマン・ライツ・ウォッチのアメリカ局長アリソン・パーカーは、「雇用主による移民の搾取により、すべてのアメリカ人が損害を蒙っているといえる。そして搾取による被害に対する法律的保護が確立されていないために、移民労働者やその子どもたちの苦しみが増している」と述べた。「移民問題に関して、何らかの改革が必要だということで、世論の考えは一致している。本報告書は、それに応えて実用的で常識的な解決法を提案するものである。」
本報告書による主な解決策の中で、特に米国議会とオバマ政権に対して以下を提言している。
- 不法滞在者に対する、合法化の道を示すこと。これにより、特に弱い立場にある個人に政府は実質的な保護を与えることができる上、犯罪が起きた際に移民が進んで通報する基盤を作ることができる。
- 職場での法律違反を内部告発することで、解雇されて、結果国外退去されるかもしれないと恐れて、法律違反を報告しない移民労働者も多い。そこで、こうした内部告発により解雇された場合には、次の仕事が見つかるまでの一定期間、国外退去を猶予する「グレースピリオド」を保証すること。
- 移民判事に、判断の裁量を認め、もって、強制送還を決定する前に、個々の移民の米国とのつながり(家族関係や兵役など)などの諸事情を判事が考慮できるようにすること。
本報告書は、現存の連邦移民法における非効率性についても改善するよう求めている。たとえば、社会に対する危険性もなく、逃亡の恐れもない何千人もの合法移民を収監していることはまったく無意味な上、税金の無駄遣いにすぎない。こうした政策は、政府の正当な利益にかなう場合のみ移民の拘束を許している国際人権基準に矛盾するものだ。
米国はまた、自国の移民政策において移民の家族を保護するという国際法上の義務を負っていると、ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。しかしながら、たとえ合法的な永住者であっても、ひとたび有罪判決が下された場合は国外退去に処すよう、現国内法が定めていることを本報告書で指摘。たとえそれが、非暴力的な軽犯罪だったとしても、判事が当該移民家族を米国内に一緒にとどまらせる手立てはない。米国市民の妻子をもつ陸軍の退役軍人が、兵役中薬物中毒になったために有罪判決を受けた事件が、本報告書にも掲載されている。
「家族を一つにまとめ、退役軍人を支援することは米国の価値の要であるのに、毎年何千もの合法的な永住者がこれらの要素を考慮されることなしに、即座に国外退去させられている」と前出のパーカーは述べる。「これに関して移民判事もまた同様に、しばしばなす術がないと実感させられている。」
この最新の報告書「 "厳格で公平で現実的"な人権枠組みを」には、米国移民制度の欠陥についてヒューマン・ライツ・ウォッチが2年にわたって調査した結果がまとめられている。