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スリランカ:脅迫や暴力にさらされるジャーナリストたち

大統領選後、弾圧が強まる恐れ

(ニューヨーク)-大統領選挙が終わったばかりのスリランカ。政府は、メディアへの脅迫や嫌がらせを止め、ジャーナリストの身の安全を保障すべきである、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

2010年1月26日の大統領選後、スリランカ政府当局は幾人ものジャーナリストを拘禁のうえ尋問し、報道サイトを遮断し、外国人ジャーナリストを国外追放している。これまでに、少なくとも1名のジャーナリストが暴行され、数名が脅迫されている。マヒンダ・ラジャパクサ(Mahinda Rajapaksa)大統領は、大接戦の末、先の選挙で再選を果たしている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長ブラッド・アダムズは「大統領としての再選を果たしたいま、政府は、現政権を批判したジャーナリストに対して腹いせをしているのだろう」という。「選挙後わずか数日で、すでに、政府高官の一部が、権力を濫用している。」

1月28日に政府の犯罪捜査局は、「イリディア・ランカ(Iridia Lanka)」紙の編集者、チャンダナ・シリマルワッテ(Chandana Sirimalwatte)氏を逮捕。報道によると、同氏は、選挙当日発行の同紙に掲載されたある政府高官に関する記事を理由に、2時間尋問され、その後も、更なる尋問のためとして拘束された。

スリランカ政府当局は、選挙前日から、同国内の少なくとも5つの報道サイトを遮断。1月28日には、武装した男たちが遮断されたサイトの1つ「ランカEニュース」(Lanka e news)のオフィスを包囲。ジャーナリストたちは、翌日出勤をしたところで、オフィスが封鎖されていることを知ることとなった。同サイトに定期的に寄稿していたパラギース・エクナロゴダ(Prageeth Eknalogoda)氏は、選挙の2日前にオフィスを出て以来、行方不明になっている。

1月28日に、政府系テレビ放送局「スリランカ・ルパワヒニ・コーポレーション」(Sri Lanka Rupavahini Corporation)の職員、ラビ・アベイウィクラマ(Ravi Abeywickrama)氏が襲撃された。今回のラジャパクサ大統領側の選挙運動が政府系メディアを乱用したことについて、アベイウィクラマ氏は、これを非難した共同声明を、他の60名の政府系メディア関係者と共に出していた。これまで同声明書に署名した少なくとも7名のメディア関係者が、停職または解雇処分を受けている。

スリランカ選挙管理委員会の委員長のダヤナンダ・ディッサナヤケ(Dayananda Dissanayake)氏は、選挙中、政府系メディアの偏向を批判してきた。委員長は、政府系メディアに対し具体的なガイドラインを発したものの完全に無視された、と開票結果発表の際に述べた。また、委員長は、政府系メディアによるガイドライン遵守を監督するために、同氏が指名した担当者も、完全に無視されたと指摘した。

スリランカ政府当局はまた、スイス放送局(Swiss Broadcasting Corporation :SBC)のカリン・ウェンガー(Karin Wenger)記者のビザ発給を取り消し、48時間以内の国外退去を言い渡した。スイス放送局によると、選挙中の不正について尋ねたウェンガー記者について、ある大臣が公然と非難していた、という。

スリランカでは、メディアへの嫌がらせやジャーナリスト攻撃が頻発するようになってすでに久しい。たとえば、2009年1月8日に正体不明の男たちが、「サンデー・リーダー」紙の著名な編集者ラサンタ・ウィクレマトゥンガ(Lasantha Wickremetunga)氏を殺害した事件が挙げられる。彼の殺人事件の捜査は、未だ何の進展もない。2009年8月31日には、政府の軍事作戦の実態を批判したジャーナリストJ・S・ティッサイナヤガム(J.S.Tissainayagam)氏に対し、懲役(重労働)20年の判決が言い渡された。オバマ米大統領をはじめとする多くの世界のリーダーたちが、ティッサイナヤガム氏の訴追を強く批判していた。ティッサイナヤガム氏は、判決前を含め22カ月収監された後、2010年1月11日に保釈されたが、今もその行動範囲は制限されている。

メディア関係者を取り巻くスリランカの環境は危険で、時に死の危険とも隣り合わせである。そのため、現在でも何十人ものジャーナリストが海外に逃れざるをえない状況となっている。

議会議員選挙は、2010年4月22日までに行われることとなっている。

「ヒューマン・ライツ・ウォッチは、一連の動きが議会議員選挙の前に、政権を批判する声を排除しようとする作戦の始まりに過ぎないのではないか、と懸念している」と、アダムズは述べた。「(日本を含む)スリランカの友好国は、同政府に、市民社会に対する弾圧は、将来の二国間の友好関係に悪影響を及ぼすことになる、と伝えるべきだ。」

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