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スリランカ:米国政府の戦争犯罪報告書が広範な人権侵害を明らかに

レポートで、国際調査団の必要性がますます明らかに

(ニューヨーク)-2009年10月22日、米国政府は、スリランカでの戦争犯罪についてのレポートを公表。このレポートは、2009年1月からの4ヶ月間に、政府軍と分離独立派武装組織タミル・イーラム・解放のトラ(LTTE)の双方が犯した戦争法違反を詳述している。こうした戦争犯罪疑惑について、中立で国際的な調査を行う必要性がますます明らかになった、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。

「今回の米国国務省のレポートは、紛争の最終段階数ヶ月間に、重大な人権侵害が行われたことをはっきりさせたといえる」とヒューマン・ライツ・ウォッチのアジア局長ブラッド・アダムズは述べた。スリランカ政府が戦争犯罪の疑惑を全く調査していない現状では、法の正義にむけた唯一の希望は中立な国際調査である。

スリランカ政府とLTTEの内戦は26年にわたった。内戦は今年5月、LTTEの敗北で終結。米国国務省の戦争犯罪問題室は、内戦終結直前の数ヶ月間に広範な戦争犯罪が行われたという疑惑について調査レポートを作成。同レポートは、LTTEによる子ども(児童)の徴兵、政府・LTTE両軍による民間人及び民間目標への攻撃、政府軍による捕虜や戦闘員の殺害、政府軍による拉致・強制失踪、政府を後ろ盾とする武装組織による拉致・強制失踪、戦闘地域に閉じ込められた民間人たちに対する食料・医薬品・飲料水などの極端な不足などの疑惑を詳細に取りまとめた。

同レポートは10月21日に米国議会下院に提出され、本日国務省のウェブサイトに公表された。

本レポートの作成は、2009年補正予算法で決まったもの。同法は、国務省に対し、「近時のスリランカ内戦でおきた、国際人道法違反や人道に反する罪を構成する可能性のある事件の詳細を明らかにすること。可能な範囲で戦争責任者を特定すること」として、議会への報告書の提出を求めている。

2009年補正予算法は、スリランカ政府に対し、国内避難民の権利を尊重し、内戦中に拘束されて所在不明となっている人の氏名と居場所を明らかにし、人道支援団体やメディアが紛争被害地に入って被災者にアクセスすることを認めるとともに、和解と法の正義を促進する政策を実行することを求めている。同法は、これらの条件が満たされるまで、米国政府のスリランカ政府に対する経済支援は、人道支援(BHN)のみとすると定めている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチが独自に行った調査によれば、戦闘中、LTTEもスリランカ国軍も、繰り返し国際戦争法規に違反。LTTEは民間人を人間の盾として利用し、安全な所に脱出しようとする民間人に武力を行使するとともに、兵士たちを民間人密集地域に配置した。政府軍は、人口密集地域を無差別に砲撃。病院も何度も砲撃された。LTTEと政府軍も、民間人の生命を軽視。その結果、何千人もの民間人の犠牲者を出すにいたった。メディアや人道援助団体などの中立なオブザーバーたちは戦闘地域への立ち入りを禁止されていた。そのため、紛争両当事者が行った戦争法違反についての情報は極めて限られている。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、国連安保理と国連人権理事会のメンバー国及び国連に対し、繰り返し、戦争法違反疑惑に対する中立で国際的な調査団を設立するよう求めてきた。スリランカ政府は、国内調査を行ってアカウンタビリティ(真相究明と法的責任追及)を果たすと約束した。例えば、マヒンダ・ラージャパクサ大統領と潘基文国連事務総長が5月に出した共同声明は、国際法違反に対処するためにアカウンタビリティを果たすことが重要であると強調し、「政府は、問題に対処するための措置をとる」と明言。しかし、内戦終結から5ヶ月が経過したものの、何らの調査も行われていない。

「関係諸国政府は、米国国務省のレポートを、国際的な事実調査を求める明確な呼び掛けとして利用するべきだ」とアダムズは語った。「行動を起こさない言い訳は、もはや存在しない。」

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