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国連:米国がゴールドストン報告書を妨害 それでも、遅延なき法の正義の実現を

イスラエルとハマスに戦争犯罪の捜査を求めよ

(ジュネーブ)-国連人権理事会は、米国その他の政府の妨害により、ゴールドストン報告書についての投票を2010年3月まで延期。この決定により、米国やその他ゴールドストン報告を妨害した各国政府は、イスラエル政府とハマスに信頼性のある捜査を開始するよう求める義務を負ったことになる、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。国連事実調査団(ゴールドストン団長)は、昨年12月から3週間にわたり続いたガザ地区攻撃の際に、戦争法(国際人道法)違反行為が行われた証拠を多数入手。この国連事実調査団の調査結果をきっかけに、イスラエル及びハマス双方に対する信頼性の高い調査が行なわれるべきである。

米国は、投票延期を強要し、リチャード・ゴールドストン判事が率いた同調査団への批判を展開した。これまでの米国の主張に基づけば、信頼性が高く、公平で、かつ国際基準を満たした捜査をイスラエルが行なうよう、米国は特別の責任を負っているというべきである。(詳細は、ヒューマン・ライツ・ウオッチ作成のファクトシート「ガザではなぜ法の正義がないか?」参照)

「米国の妨害の結果、イスラエルは、ゴールドストン報告書についての猶予期間を得た形だ。とすれば、今度は、イスラエルが人権侵害容疑についてしっかりとした調査を行なうように米国は求めるべきだ」とヒューマン・ライツ・ウォッチの中東・北アフリカ局長サラ・リー・ウィットソンは述べた。「もし、しっかりした調査が3月までに行われなければ、米国は、責任を国際的に追及するゴールドストン報告書が提言するようなメカニズムを承認するべきである。」

米国政府は、ゴールドストン報告書の指摘を真剣に受け止めるとしつつも、報告書に「大きな欠陥がある」と主張。国連人権理事会での9月29日の演説で、マイケル・ポスナー(Michael Posner)米国国務次官補は、「イスラエルは、法の支配のしっかりした民主主義国家なので、このような疑惑に対するしっかりとした調査を行なう制度も能力も有していると、米国は信じる」と語った。

しかしながら、イスラエル軍の行なった行為に対する政府の調査は、これまで惨憺たるものだった。イスラエルの人権団体B'Tselemは、昨年12月から今年1月まで3週間にわたったガザ地区攻撃の間に、戦闘に関与していない民間人をイスラエル軍が殺害した773件の事件を調査して取りまとめた。それにもかかわらず、イスラエル政府は、今日までに、クレジットカードを盗んだという容疑で一人の兵士に有罪判決を言い渡しただけ、と明らかにしている。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、ハマスなどのパレスチナ武装勢力が戦争法違反容疑についてしっかりした調査を行なっていないことについても繰り返し批判をしてきている。

ゴールドストン報告書を完全に承認する内容の決議への支持を表明しなかったEU加盟諸国も、イスラエルが真剣に調査を行うよう要求するべきだ、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

「米国と欧州諸国がゴールドストン報告書を承認しなかったという事実は、戦争法に対する重大な違反行為でもそれが友好国によって行なわれれば容認されるという、実に恐ろしいメッセージを送っている」とウィットソンは述べた。

ガザ地区の攻撃に関する国連事実調査団は、575ページにわたる事実調査報告書を作成。同報告書は、イスラエル及びハマスの双方が、国際人権法や国際人道法への重大な違反行為を行なったと認定し(戦争犯罪はもちろん場合によっては人道に対する罪にも該当するとした)、イスラエル政府とハマス当局に対し、中立で公平な捜査を6ヶ月以内に行うよう提言した。両陣営が中立で公平な捜査を行わなかったと国連安全保障理事会が認めた場合、ガザの事態を国際刑事裁判所(ICC)に付託するようにとゴールドストン報告書は強く求めていた。

イスラエルのネタニヤフ首相は、ゴールドストン報告書を承認すれば「和平プロセスに致命的な打撃」を与えるだろう、と表明していた。

ウィットソンは、「ネタニヤフ首相は、和平交渉がだめになるといってゴールドストン報告書を拒否した。しかし、平和を実現するために法の正義の実現は欠かせない。ネタニヤフ首相の拒絶は、法の正義に対する情けない攻撃に過ぎない。」と指摘し、「あまりにも長く続く不処罰のほうこそが、平和への脅威である」とした。

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