Relatives of the slain French aid group Action Contre La Faim's local staff mourn during their funeral procession near Trincomalee, Sri Lanka.

© Reuters 2006

(ニューヨーク) スリランカ北西の街ムートル(Mutur)で、3年前に17人の援助要員が処刑された格好で暗殺された事件に関し、スリランカ政府はこれまで国内での調査を怠ってきた。よって、この事件について国際調査委員会を立ち上げる必要がある、とヒューマン・ライツ・ウォッチは本日述べた。この事件に関し、政府は誰にも有罪判決を下していないばかりか、逮捕すらしておらず、2009年7月中旬以降、既に問題だらけだった調査がさらに深刻化している、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

2006年8月4日、パリに拠点を置く国際人道組織のアクション・コントル・ラ・ファム(ACF)の17人のスリランカ人援助要員は、トリンコマリー (Trincomalee)地方のムートルにあるオフィスで処刑された。この処刑は、政府治安部隊とタミル・イーラム解放のトラ(LTTE)が、街の主導権を巡って衝突したあとの事件であった。暗殺された援助要因たちは、16人のタミル人と1人のイスラム教徒からなり、2004年のインド洋で起きた津波の被災者を援助するプログラムに参加していた。

「ACFの虐殺から3年、ラジャパクサ(Rajapaksa)政権は、入念な根回しで国際社会を欺き、法による正義は実現されたと信じ込ませた」、とヒューマン・ライツ・ウォッチの法務・政策ディレクター、ジェームス・ロスは述べた。「国連と関係諸外国政府は、今こそ偽りの捜査ではなく、真剣な国際調査を求めるべきである。」

この事件を調査する政府委員会は、7月中旬、十分な理由もなくスリランカ軍の事件への介入を否定した。また、政府は委員会に参加している地元の人権保護団体を不当に非難した。更に政府当局は、殺害された援助要員の遺族に不当に圧力をかけ、フランス政府を通しACFから多額の賠償金を受け取るよう要求した。

16の主要な人権侵害事件を調査するために作られたスリランカ大統領の調査諮問委員会(2006年11月に設立)は、今年7月14日、ACFの事件の調査結果を公表。軍関係者は事件現場付近にいなかった、との限られた証言を根拠に、委員会はスリランカ陸軍と海軍を無実とした。代わりにLTTEもしくは地方義勇隊(home guards)に責任があるとしているが、ラジャパクサ大統領への報告書全文は非公開のままである。

大学教授らからなる人権保護NGO「University Teachers for Human Rights」(Jaffna)は、事件の目撃情報、武器の分析、そして同団体の分析によりこの殺害に責任があると結論付けられた政府治安維持部隊の情報を、2008年4月に発表した。調査諮問委員会はこの報告書の内容を認めなかったが、委員長はメディアに対し、証人を保護するプログラムがなかったために調査活動が妨げられ、身の危険を伴う国外からのビデオ証言も政府により制限された、と述べた。スリランカ防衛省のウェブサイトに載せられた委員会の最終報告抜粋のなかでは、ACF調査における地元グループの役割が鋭く批判されている。これらのグループは、事件の目撃者に法的支援を提供したり、書面提出なども行った。委員会は報告書の中で、7つの非政府組織を名指しにし、これらの7組織の主な役割は、「この国の全ての機関や組織の信頼性を損なわせ、陰険な犯罪の責任を一つの組織に取らせようとすることだ。。。彼らは真実を突き止めるのではなく、スリランカの治安部隊の揚げ足を取ることに焦点をあてていたようだ。」と述べた。委員会によると、これらのNGOは、「怪しいほど狭い見方」を持ち、「あらかじめ計画された陰謀により、国際社会において委員会の信用を損ねようとしていた」という。

「非国民的」と烙印を押されるなど、政府に批判的とみなされた市民団体や報道機関に対する脅迫や身体攻撃が続いている現状において、このような言いがかりは、個人やグループに深刻な危険を及ぼす、とヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

スリランカ情報筋とメディアの報道によると、スリランカ当局は、ACFの被害者遺族にも不当な圧力をかけてきた。7月19日に遺族はトリンコマリー(Trincomalee)の役所に呼び出され、7月25日までに署名して返送するよう書簡を3通渡された。3通の内容は、すべて、ACFに重大な過失があったとする委員会の調査結果を前提として、フランス政府に対し、遺族のために、ACFからさらなる賠償金を請求すべき、と要求するものだった。

3通の書簡は、フランス大使館、スリランカの司法長官、ラジャパクサ大統領に宛てられていた。ラジャパクサ大統領宛ての書簡では、署名者は調査諮問委員会の設置、そして「法の正義が確保されたこと」に対し、大統領に敬意を示す、とされていた。一部の遺族は、政府からの報復に不安をしめしつつも、書簡への署名を拒否した模様である。

「この恐ろしい犯罪に正義をもたらすとの公言とは裏腹に、スリランカ政府は他人に罪をなすり付けることにより、ACFの被害者の遺族をさらに傷つけている。」とロスは述べた。

スリランカ内戦の両当事者による人権侵害(ACF暗殺事件を含む)を調査する国際調査委員会を設立し、戦争責任を負う者たちの訴追を勧告するよう、ヒューマン・ライツ・ウォッチは国連事務総長及びその他の国連機関に対し要求した。ラジャパクサ大統領と潘基文(Ban Ki-moon)国連事務総長が5月23日にスリランカで出した共同声明の中で、スリランカ政府は、国際人権法及び国際人道法の違反に対する法的責任を明らかにし、有責者の責任を追及するプロセスの必要性を解決するための「措置を講ずる」と述べた。

25年間にわたる政府とLTTEの間の内戦は、今年5月、LTTEの敗北により終結した。この内戦では、数多くの人権侵害が犯された。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、スリランカ政府が公平な調査を怠るとともに、戦争責任を負うものたちの訴追を怠ってきた状況を長い間報告してきた。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは、以前から、大統領調査諮問委員会が現在も続いている人権侵害への適切な対応とはいえないことを批判してきた。また、大統領が同委員会の勧告を受け入れれる義務もなく、調査結果を公表する義務もなく、しかも、検事総長が委員会に不当に介入してきたことについても、ヒューマン・ライツ・ウォッチは批判を続けてきた。2008年4月、国際独立有識者グループ(IIGEP)は「委員会の進展は透明性に欠け、基本的な国際基準を満たしていない」との理由により、委員会の監視役を辞任してしまった。

「17人の援助要員が殺害されてから3年が経つが、スリランカ政府は未だに真実を明らかにせず、戦争責任を負う人びとの訴追も行っていない。」とロスは述べた。「代わりに、政府は、残虐行為に手を染め、国内の人権団体を脅し、被害者遺族を脅迫し、フランス政府へのあてつけ的行動により政治的点数を稼ごうとしている。」